「そんなんじゃタグ付けしてもらえないよ?」とせせら笑うママインフルエンサー。平凡な主婦が目の当たりにした「闇」【著者に聞く】



主人公・雨宮文月は子育て中の平凡な母親。夫が外に仕事に出るのを嫌がるため、家事育児の合間にできる職業としてインフルエンサーを目指しています。フォロワーを増やしたくてママインフルエンサーたちの集まりに無理して参加しているものの、フォロワー数の少ない文月は雑用係のように扱われています。

ボスママの紗理奈が開いた持ち寄りパーティーでは、SNS映えする料理がテーブルにずらり。文月がそうと知らずに持参した素朴な手料理は、「さすがに映えないから、それ」「写真に映らないところに置いて」「そんなんじゃタグ付けしてもらえないよ」とバカにされてしまいます。居心地の悪い文月でしたが、初参加の初心者ママ・美沙緒だけは「これ美味しい」と褒めてくれたのでした…。
脚本・寺田御子さんインタビュー
――主人公・文月はインフルエンサーとしては駆け出しで、ママ会のヒエラルキーの中では雑用係として扱われています。文月をどんなキャラクターとして描きましたか?
寺田さん:文月は、華やかなママインフルエンサーたちの中では、いちばん“普通”の人だと思います。セレブでもなければ、要領よく立ち回れるタイプでもない。ヒエラルキーの下層に置かれ、家庭では夫からモラハラを受けながら、インフルエンサーとして成功すれば、自分の価値や居場所を手にできるかもしれないと信じています。
でも、彼女は弱いだけの女性ではありません。娘のことを誰よりもよく見ていて、不器用なりに必死で試行錯誤している。その根底には、「夫に認められたい」「社会とつながりたい」という切実な願いがあります。



――そんな文月の前に現れた初参加の美沙緒。彼女がママ友サークルを崩壊させる物語のキーになっていきますが、彼女についても、人柄など教えていただけますでしょうか。
寺田さん:美沙緒は、表向きは“若くておしゃれなシングルマザー”ですが、大きな秘密を抱えた人物です。彼女はママ友サークルに入り込み、その関係性を意図的にクラッシュさせていく。ただ壊すだけの存在ではなく、破壊を通じて、登場人物たちに現実を直視させる触媒でもあります。私は「たとえ間違っていても、そういうふうにしか生きられなかった」という感じの不器用な人に強く惹かれるのですが、美沙緒はそんな私自身の思想が投影されたキャラクターです。

――本作は、ママインフルエンサーの世界を描きつつ、家族の在り方についても考えさせられる内容でした。文月、美沙緒それぞれの家族の関係や考え方についてお伺いしたいです。
寺田さん:問題のある家庭でも守ろうとする文月と、“理想の家族”に強い執着を抱き、むしろクラッシュさせようとする美沙緒。その対比が、“幸せな家族の在り方”を読者に問いかける、この作品の核になっていると思います。
* * *
本作は、SNSの華やかな世界の裏側で、それぞれの家庭が隠し持つ秘密や闇を暴き出していきます。単なるママ友同士の見栄の張り合いやドロドロしたマウンティングにとどまらず、読者に「幸せな家族の形とは何か」を問いかける本作。ママ友コミュニティが崩壊していく先に、彼女たちが見出すものとは――? 予測不能なジェットコースター展開で描かれる、女性たちの人間ドラマをお楽しみください。
取材=ナツメヤシ子/文=レタスユキ
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