子どもに「こうなってほしい」はNG! 小学生に大切なのは「自分で考える力」 ぬまっち流自分で伸びる小学生の育て方(1)

#育児・子育て   

ここ数年、教育の分野で注目を集める「アクティブ・ラーニング(参加型学習)」をご存じですか? この世界標準の教育法をいち早く日本で実践してきたのが、テレビも珍百景として紹介された「ダンシング掃除」や、やる気スイッチをONにする「内閣制度」などユニークな参加型学習を生み出した東京学芸大学附属世田谷小学校教諭ぬまっち先生こと、沼田晶弘さんです。自分で楽しみながら考えることで、自然とコミュニケーションスキルが磨かれ、自ずと「伸びる」小学生の育て方を7回連載で紹介してくれます。今回は第1回目です。

得意なものを伸ばして「成長サイクル」を身につける「世界標準のアクティブ・ラーニングでわかった ぬまっち流 自分で伸びる小学生の育て方」


自分で考えるくせをつけて「知識」を「知力」に変える


ボクが小学生だったころに比べて、世の中は大きく変わりました。ボクたちが日々使っている日用品、駅前を中心とした街の様子、仕事の内容や種類の多様化。30年前は今のように娯楽がそこら中にあるなんてことはなかったのに、今は誰もがスマートフォンを持ってそれ1台だけで何もかも完結できる時代。本当に、社会は大きく変わったと実感しています。

日々変わる社会の中で、「子どもを育てる」という教育の面でも今、変化の兆しが見え始めています。

例えば、「知識詰め込み型教育」と「アクティブ・ラーニング」。今話題となっている「アクティブ・ラーニング」は「知識詰め込み型教育」と対照的な教育法として語られることも多いのですが、昔から長年の間行われてきた「知識詰め込み型教育」は、今の時代には本当に必要ないのでしょうか?

かつて、高度経済成長下の日本において、教育に求められていたのは「短期間」で「均一的な知識」を習得することでした。しかも、全国どこでも同じような教育を受けることができ、義務教育を修了するころには、全員が等しく基礎的な知識を得ている。それを可能にしたのが、あらかじめ用意された「答え」を暗記する「知識詰め込み型教育」だったのです。

そして、その教育を受けた子どもたちが社会に出て高度経済成長を支え、やがては日本を世界第2位の経済大国にまで押し上げます。つまり、今の日本の礎を築いた背景の一つには、「知識詰め込み型教育」の成功があったと言えるのではないかと僕は考えています。

その半面、「知識詰め込み型教育」による歪みも同時にありました。よく言われている「試験が終わればすぐに忘れてしまう」とか、「暗記ばかりで自分で考える力が身につかない」といった問題が代表的な例でしょう。

【画像を見る】 どうすれば子どもは自分から学ぶのか。著者が10年以上考え続けてきた答えとは…


ボクは、時代が変わっても、決して「知識詰め込み型教育」のすべてが否定されるべきではないと思っています。

実際、世界と比べてみても、日本の学力水準は非常に高いと言えます。電車で荷物を網棚に置いたまま眠っていられる治安のよさも、その根底には、国民のほとんどが子どものころに学校に通い、常識や道徳、基礎的な知識を学んだことが影響しているはずです。

学力水準の高さを示す例として、文字の読み書きができる人の割合を表す識字率が挙げられます。日本の識字率は世界トップレベルを誇り、実は江戸時代から群を抜いて高かったと言われていました。武士のほぼ100%が読み書きでき、庶民の子どもたちも寺子屋などへ通って勉強に励み、高い学力を有していました。確かな数字はわかりませんが、当時、産業革命を終えたころのイギリスの識字率が20%程度だったのに対し、江戸時代の日本では70%を超えていたという話もあります。

最近になってよく、「日本は『知識詰め込み型教育』をやめて、もっと『アクティブ・ラーニング』を取り入れるべきだ」という声を聞くようになりました。そういう意見に対して、半分は同意しますし、半分は同意できません。経済成長の時代に必要だった教育を不況の時代が続く今にそのまま実践しても、うまくはいかないのは当然です。ただ、よくよくその人の意見を聞くと、どうもそう発言する人に限って、「知識詰め込み型教育」の重要性を理解していないように思うことがあるのです。

「アクティブ・ラーニング」のよい点は、あらかじめ用意された「答え」を教えてもらうのではなく、「参加型学習」の言葉通り、自ら進んで考え、自分なりの答えを導き出すこと。それが、これまでの方法論が立ちゆかず、より不透明な未来を生きなければいけない子どもたちにとって、非常に重要になってくるでしょう。けれど、その考える力もまた、基本的な知識がなければ決してうまく育たないとボクは思っています。

世界標準のアクティブ・ラーニングでわかった ぬまっち流 自分で伸びる小学生の育て方


例えば、学校の勉強だけでなく、普段の生活でも算数の九九は大事ですよね。この九九を、何も知らない子どもたちに向かって急に「自分で考えてみよう!」と言っても、それは無理な話です。やはり、九九を教えるには子どもたちに”覚えさせる”しかない。それって「知識詰め込み型教育」ではありませんか? いきなり「知識詰め込み型教育」をやめて、すべて「アクティブ・ラーニング」にするということは、ない袖を振らせるようなもの。十分に基礎的な知識があって初めて、その発展・応用である「アクティブ・ラーニング」を行う意味が出てくるのです。

ただ、「知識を詰め込まれる」だけの教育に関しては、ボクは否定的です。何も考えず言われたままに知識を覚えるのでは、自分の身につきませんし、「考える力」もまた育ちません。

今、世界に目を向ければ、子どもを参加させる授業がメジャーであり、教師が話して生徒は受け身なだけの日本のような授業はマイナーです。事実、ボクも、みんなに参加させながら授業を行うのが基本のスタイルになっています。生徒が前で話し、ボクはほかの生徒と一緒に席に座って聞くときもあります。

だから、日本の教育に「アクティブ・ラーニング」が必要という意見に対してボクは賛成です。今の教育に「自分で考える力」を養う部分は確かに足りていないと思いますし、だからこそ、その部分を補足してくれる「アクティブ・ラーニング」が求められていると言えます。

けれど、忘れてはいけないのは、日本の子どもたちには、すでに詰め込まれた知識があるから、次の段階に進めるということ。その知識をないがしろにしては絶対にいけないと思うのです。

考えるのに必要な知識を「知識詰め込み型教育」で得て、「アクティブ・ラーニング」でその知識を使って自ら考える。それが、学びの理想的な姿だとボクは思っています。

著=沼田晶弘/「世界標準のアクティブ・ラーニングでわかった ぬまっち流 自分で伸びる小学生の育て方」(KADOKAWA)

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