成功者はみな努力せず楽しんでいる！ ゆるっと哲学（2）
アリストテレス
「努力する者」は「楽しむ者」に敵わない
「自分の人生に楽しみを見出せない」
「仕事にやりがいを持てない」
こんな悩みを抱えることがあると思います。このような悩みに立ち向かうには、どうすればいいのでしょうか。
それには、古代ギリシャを代表する哲学者アリストテレスの「キネーシス（運動）」と「エネルゲイア（活動）」という考え方が、参考になります。
まず、「キネーシス」とは、目的やゴールが未来にあり、そこに直線的に向かうような行為のことを指します。逆に言えば、目的やゴールにたどり着いてしまえば、そこで終わりとなるような行為です。
たとえば、「家を建築する」という行為は、家を建てるというゴールに向かって、建設作業をします。そして、家が建てば、作業は終わります。
一方、「エネルゲイア」とは、行為の中に目的があり、それ自体特に決まったゴールがないような行為のことを指します。言い換えれば、「〇〇している」という「いま、ここ」で進行しているプロセス（行為）自体が、目的（結果）となっているようなものです。
たとえば、あてどなく散歩をする場合はどうでしょう。この散歩は特定の目的もなく、適当にブラブラ歩くものだと思います。これは、急いで目的地に向かうときとは違うものです。強いて言えば、この散歩は、散歩をすること自体を楽しむのが目的でしょう。
このように、何かを行う時、そのプロセスと目的が重なるものを「エネルゲイア」と言います。
仕事の「キネーシス化」は楽しくない
では、この「キネーシス」と「エネルゲイア」を日々の生活にあてはめてみたらどうでしょうか？
たとえば、「生活するために働く」場合を考えてみましょう。これは、辛抱強く我慢してでも、未来の目的に向かってまっすぐ進むという点で「キネーシス」にあてはまります。
確かに、「キネーシス」は生きていく上で、必要不可欠です。しかし、目標に向かって直進するだけでは、そこに至るまでのプロセスを無視することになり、人生は楽しくなりません。
これに対して、「エネルゲイア」はどうでしょうか？ アリストテレスはこう言います。
快楽は本来『活動（エネルゲイア）』にほかならず、それ自身目的（テロス）なのである。
『ニコマコス倫理学（下）』
また別のところでは、こうも言います。
活動なくして快楽は生じないし、他面また、あらゆる活動を究極的に完璧たらしめるものは快楽なのである。
要するに、生活を楽しくするためにはエネルゲイア、つまり、何かをする（活動する）、その瞬間自体を楽しむことが大事なのです。ゴールに至るまでのプロセスを無視すると、その活動は不完全なものとなります。
最後に、アリストテレスのこの言葉を紹介しましょう。
快楽はかく活動を促進するのであるが、活動を増進するのはその活動に固有の快楽でなくてはならぬ。
人は何かのために、働いたり、生きたりしているのではありません。
大切なことは、仕事をしている、生きていることをその瞬間、その都度楽しむこと。その上で、その仕事、その人生ならではの楽しみを見つけ出す。
そして、そこで見出された楽しみが、仕事や人生をより充実させていくのです。
アリストテレス（Aristotelēs）前384ー前322
古代ギリシアの哲学者。プラトンの弟子であり、ソクラテス、プラトンとともに西洋最大の哲学者の一人とされており、「万学の祖」とも呼ばれる。マケドニア王アレクサンドロス３世の家庭教師であったことでも知られている。
著＝ただっち、監修＝小川仁志／「不安を力に変える ゆるっと哲学」（ぱる出版）
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書籍情報
『不安を力に変える ゆるっと哲学』
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