日々のごはん作りに疲れている人、今日もごはん何にしよう?と悩む人たちへ

#食   

家庭料理はもっと気軽でおおらかでいい、とのメッセージを込めた新刊『実は、一菜でいい。おいしいおかずが一品あれば、それで充分という提案』(KADOKAWA)が話題となっている、「賛否両論」笠原将弘さん。お店やメディアの仕事で常に料理を作り続ける笠原さんに、多くの皆さんが疲れている日々のごはん作りについて、どのように乗り切るのがいいのか、聞きました。


「自分のできないことはしなくていいし、無理はしなくていい」


―おうちで食事をすることが増えて、皆さん、ごはん作りに疲れている声をよく聞きます。まず、笠原さんが疲れているときにおうちで食べているものをお聞きしたいです。

笠原さん―帰ってきてうちでビールを飲みたいな、というときに作るのは、お店で残って持ち帰った刺し身の切れ端に、納豆をぶっかけて食べるだけ、くらいのもの。
あとはゆで卵。これはゆで卵が好きだからで、ゆでる時間は計らない。だからその日によって半熟だったり固ゆでだったりするわけなんだけど、それもいいわけ。
大根おろしも好きだから、大根が野菜室にあれば、すりおろしておかかしょうゆとかポン酢をかけるとか、そんなレベルですよ。
使う道具はせいぜい鍋1つ。ゆで卵を作るから、いんげんもついでにゆでてマヨで食べる、みたいなね。

―日々のごはん作りに疲れている人へ、何かよいアドバイスはありますでしょうか?

笠原さん―やらされている感が疲れを生むと思うのね。一度、自分の好きな、食べたいものばかりを作ってみるといい。それでまずはストレスがなくなる。
1食で栄養バランスをとるのなんて無理な話であって、1週間くらいで考えればいいと思っている。今週は肉ばっかり食べていたな、だから今日は野菜だけにするか、みたいなレベルで考えるといいんじゃないですかね。
みんな、絵に描いた一汁三菜みたいな理想の食卓を考えてしまうのだろうけど、そんなのできないでしょう。できないことは無理しなくていいと思う。

―と言っても、自分が子どもの頃の食卓は何品もあったな、とその呪縛にとらわれている人もいます。

笠原さん―それは、お母さんが料理好きだったからいっぱい作っていただけかもしれないし、よくよく思い返せば前日の煮物も1品入っていたりして品数が多かっただけなのかもしれない。
僕の祖母が作ってくれるごはんも、品数がいっぱい並んでいたけど、昼の餃子がまた出ていたり、佃煮が何種か入った器をそのまま出していたり、ということが多かったな。
だから、実は自分の子どもの頃は品数が多かったと思い込んでしまっているだけで、それにとらわれることはないと思う。
自分のできないことはしなくていいし、無理はしなくていい。
料理がちゃんとできなくてダメだなんて思わないでほしい。仕事や育児、そのほかの家事を頑張っているならそれでいいじゃないですか。やることがたくさんあるのだから、できないことがあっても全然いいと思う。

「何品も作らなくちゃとか考えなくていい」


―毎日の献立に悩む方の声も多く聞きます。

笠原さん―献立って先にどうしても決めておかなきゃというのが辛いのかもと思う。スーパーに行って、特売品だから買おう、この野菜がおいしそうだから買おう、みたいに買いながら決めてみるのもいいじゃないですか。
日本の食材はおいしいから余計なことをしなくていい。
トマトやきゅうりをたまにはまるかじりしたっていいじゃない。かじるからこそ切ったときと違う味わいがあるし。
この魚がおいしそうだと思ったら焼くだけでいいし、お肉屋さんのおいしいコロッケを買ってキャベツだけは自分でせん切りにすればいいか、くらいの気持ちでいいと思う。
何品も作らなくちゃとか考えなくていい。とりあえずご飯を炊いて、汁ものとか一品を作ればいかようにもなると思うよ。


―笠原さんは、これからの家庭料理はどうあってほしいと思いますか?

笠原さん―料理はシンプルで簡単でいいのだけど、食事の小一時間くらいは、家族みんなで食卓を囲んで、いま家族に起こっていることを話して共有する場であってほしいですね。食卓って、いろんなことを学んでいく場だと思うから。
その料理を作るのがたいへんと思うのなら、作る人が好きなものばかりを作ってみる。それに飽きた家族は「これ作ってよ」とリクエストしてくるかもしれないし、作らせてもいい。子どものいいお手伝いにもなるしね。
片付けだって、じゃんけんで洗う人を決めるとかにすればゲーム感覚で盛り上がるし、とにかく楽しんでほしい。

―先の見通せない日々ですが、料理を通じて今後、笠原さんは何を伝えていきたいですか?

笠原さん―日本にはいい食材がいっぱいあって恵まれているんだなというのは伝えたいですね。四季があって北から南までいろんな魚や野菜がとれるし、スーパーに行けばきれいにカットされている肉も買えて、すばらしい国じゃないですか。
生産者さんや流通者さんが頑張ってくれているから、自分たちも毎日おいしい食事を食べられるわけだし。そう考えたら、たいへんなのは自分だけ、と思わなくなってくるかもしれません。

―笠原さんのお話を聞いて、家庭料理は難しいものとそもそも思ってしまっていることに気づかされました。
家庭料理にルールはないし、無理しなくていいということ。
おかず一品でも楽しい食事はできるはずだとの笠原さんの言葉に、とても救われた気分になりました。

【レタスクラブ編集部】

笠原将弘さん
東京・恵比寿にある日本料理店「賛否両論」店主。実家は焼き鳥店「とり将」。「正月屋吉兆」(※「吉」は土に口)で9年間修業。2004年、オーナーシェフとして「賛否両論」オープン。瞬く間に予約の取れない人気店に。メディアでもひっぱりだこの和食料理人。近著に『実は、一菜でいい。おいしいおかずが一品あれば、それで充分という提案』(KADOKAWA)がある。

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