クラスの裏ボスに目をつけられた娘。本人は「大丈夫」と言うけど心配です【小川先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   
AK / PIXTA(ピクスタ)

「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第114 回のお悩みはこちら。

【お悩み】

小3の娘についての相談です。2年生までは学校の話を楽しそうにしてくれていたのですが、3年になってからあまり話さなくなりました。おかしいなと思い、周りの友達や登下校を見守る保護者の方に聞いてみたところ、一人の女の子がうちの娘を嫌っていて、仲間に入れてくれないらしいとのこと。娘に確認するとやはりそのようで、長い休み時間などは、他のクラスの友達のところに行って遊んでいることがわかりました。

そんな様子を心配していた矢先に、先日ある事件が発覚。学校帰りに娘がちょっと遠い子の家まで連絡帳を届けに行っていたので、どうしたのか聞くと、先生に頼まれたのは娘を嫌っている子だけど、その子に「あんた持ってって」と押し付けられたようでした。これは良くない状況だと感じ、担任の先生に相談したところ、彼女はちょっと裏ボス的な存在の子ということで、2年生のときの担任から引き継いでいたとのこと。そして、「見た目には全くわからないけど、休み時間などは友達を牛耳ってるような子と聞いていたので、注意して見てはいるんですけどね」と言われただけでした。もちろんそれで状況は変わらず、先生に対しても不信感が湧いてきています。

娘に聞いても「私は大丈夫だから」の一点張り。Aちゃんに何かされても、それに対して愚痴を言ったり、文句を言ったりもしません。だから余計に心配になってしまうのですが、あまりその話を突き止めて聞くと、「もう話したくない!」って表情でシャットアウトされてしまいます。今後、娘にどう声かけしていけばいいのか、アドバイスお願いします。(Sさん・46歳)

【小川先生の回答】

相手の子の家庭環境をリサーチし、状況を把握しておく


お母さんとしてはものすごく心配ですよね。相手の子も関わっていることなので難しい問題ですが、できることはあります。こういった問題の場合は、娘さんに対してだけではなく、先生に対して、そして相手の子に対しての3方向からのケアが必要になります。

まず相手の子についてですが、彼女はかなりの確率で、自分の親から強い圧をかけられていると推測されます。子どもは、家庭内の歪みが外での歪んだ行動につながるもの。周囲の友達に対して負荷をかけるのも、自分が家庭で負荷をかけられている可能性が高いです。先生が「見た目には全くわからない」と言っているように、おそらく家でもすごくおりこうさんにしているのでしょう。このタイプの子の家庭は、夫婦関係が表面的に取り繕われていることも多く、子どもは居場所や安心感を得られません。親の指示通りに行動することで、評価はされるかもしれませんが、「何をしていてもあなたのことが大好き」という本当の意味で欲しい愛情を十分にもらえていない可能性があります。その満たされない思いが強い承認欲求となり、周りの子を支配し従わせることで、自分の存在を確かめようとしがちです。ですから、まず相手の家庭がどういう家庭で、親がどの程度常識的な人づきあいができるか、社会性があるかどうかというリサーチはしておいたほうがいいと思います。相手の親を理解しておかないと、さらに地雷を踏んで根深くなることもあるので、相手の状況を把握しておくことは大切です。

そうしたなかで、例えばその家庭が他の親御さんと友人関係ということがわかれば、その人の働きかけで改善する可能性もあります。わが子が家の中だけ「いい子ちゃん」なのを見て安心している教育熱心な親は、わが子の家庭外でのふるまいについてあまり気づいていないケースも多いもの。気づくとハッと空気を変えることができる場合もあるから、相手の親子の周辺はリサーチしておきましょう。

子どもの言葉にならない気持ちに寄り添う


娘さんに対しては、「どうしよう」と具体的な対策を練るよりも、まず子どもの気持ちに寄り添うことが第一です。「話したくない」とシャットアウトしてしまうのは、やはりなかなか親には言いにくい話だからです。どう言えばいいかわからなくて、説明の仕方を考えているうちに、嫌な気分を何回も繰り返して疲れてしまうのかもしれませんよね。だから考えたくなくて、なかったことにしたい気持ちから「もういい」となってしまっている気がします。

ですから、こちらから「こういうことかな」という言葉を準備してあげて、本人ががんばって説明しなくて済むようにしてあげるのも、大人の寄り添い方の力です。「自分が相手に反発することで、クラスのお友達関係が変な空気になるのが怖いのかな?」「みんなが仲良くしていられればいいから、私だけ我慢すればいいと思ってたりする?」など、子どもなりにがんばっている様子について、ママ・パパなりにわかろうとしている姿を伝えてあげましょう。そうすると、「そういうことじゃなくて、こうかな」など、本人なりの想いを教えてくれると思います。

我慢は誰にとってもプラスにならない


そのうえで、娘さんに2つのお願い事をしておいたほうがいいでしょう。一つは、「あなたに相談なしに勝手なことはしないけど、現状把握はしておきたいので、言ってもいいと思う範囲で教えて欲しい」ということ。「我が子は大事だから守りたい」という親の想いは伝えておきましょう。

もう一つは、「我慢し続けることは実は誰にとってもプラスを生み出さない」ということを、知識として知っておいてもらうことです。されるがままに我慢していると、我慢させている方は嫌な思いをさせていることすら気づかないこともあるもの。「連絡帳を届けたそうだから、届けさせてあげた」と本気で思うことすらあるのです。嫌な時は嫌だと教えてあげないと、その子にますます間違った行動をさせてしまうことにもつながるし、それはその子にとっても可哀想なこと。今のままでは絶対に良くなくて、どこかで彼女を止めてあげる必要があること。それは知識として知っておいてもらいましょう。

先生は敵ではなく、子どもに関わる共同体


そして先生に対してですが、不信感を持っていては、状況は打開できません。先生と情報共有できる信頼関係を築かないと、子どもの学校での情報も手に入らなくなってしまいます。ですから、まずはこちらに敵意がないことを示すことが必要。「相手の子の振る舞いを良しとは思っていないけど、かといって、その子に働きかけて簡単に解決するとも思っていません。すぐに状況をどうこうしろというのではなく、せめて先生と連絡しあえる関係を保ちたい」ということを伝えましょう。

今の学校現場の先生は、とにかくマイナス査定されることが怖いという仕組みの中にいるため、先生も自分の身を守るために当たり障りのない対応で終わらせがちです。そんな状況下だからこそ、「我々は味方同士のはず。私も先生も、子どもたちに関わる大人としての共同体ですよね」と、親の方からきちんと申し入れることが大切。そうすることで、先生も動きやすくなります。この先生は、相手の子のことを「裏ボス的」とわざわざ自己開示してくれているわけだから、比較的家庭の方につながろうという意志が感じられます。だから、親の方から「先生、一緒にがんばろう」という気持ちを伝えてあげれば、同じ歩調をとっていけると思います。そうやって見守ってくれる人の目を増やしていくことが大事です。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『子どもの気持ちに寄り添うベースを持っているのは大きな強み』
娘さんの表情から「もう話したくない」という気持ちの揺れを、お母さん自身がちゃんと感じ取れています。子どもの気持ちに寄り添うベースが既にあるので、それは大きな強み。さらに今回、先生との関わり方という視点を得られたことで、できることが見つかったのも大きな進歩です。簡単ではないと思いますが、打開の糸口は必ずあると思うのでがんばってください。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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