病気が見つかるのが怖い? 病院を断固拒否する高齢者の心の内/まいにちが、あっけらかん。(6)

#くらし   
病院に行こうと言っても「大丈夫」と言い張ります

病院に行きたがらない高齢者には、さまざまな理由が考えられます。

子どもの頃から、風邪をひいた程度ならねぎを首に巻く、すりおろしたりんごを食べるなどといった薬に頼らない民間療法で対処してきた世代ですので、病院はそう簡単に行くところではなく、「医者にかかるなんて大げさ」「風邪くらい放っておけば治る」と自分の症状を軽く見てしまい、病院に行く必要性を感じていない高齢者も少なくありません。また、「検査で痛い思いをした」「担当した医者が嫌い」など、過去の経験から病院や医者に対して悪い印象を持ってしまい、行きたがらない可能性もあります。

そのほか、「重大な病気の発見が怖い」「自分が病気だと認めたくない」「家族に迷惑をかけたくない」といった理由も考えられます。高齢になると、何かしらの病気が見つかる可能性は高くなるので、これまで健康に過ごしてきた人ほど病気に対しての恐怖心があります。その結果、頑なに病院に行くのを拒んでしまうのです。

病院に対する印象が悪く、病気の発覚も恐れています

「病院で診察してもらったほうが安心なのに」とまわりには不思議に思える態度かもしれませんが、人生の残り時間が少ないと考えている高齢者ほど自分にとって有意義な時間を過ごすことを大切にする傾向が強くなります。そのため、診断によって通院や入院が必要ということになれば、好きな散歩や趣味の集まりに参加できなくなるかもしれないと考えます。自分の行動を制限され、満足できる今の暮らしができなくなると考えてしまうと、健康問題を解決するよりも、現状維持を望むようになってしまうのです。

以上のような理由から、お姑さんは病院に行くのを拒否していると考えられます。お姑さんの気持ちも尊重してあげたいところですが、病気は早期発見、早期治療が大切です。何よりも家族が心配していること、専門医に診断してもらえれば家族みんなが安心できることを説明し、納得して病院に行ってもらうようにしましょう。

監修/佐藤眞一
大阪大学大学院人間科学研究科臨床死生学・老年行動学研究分野教授、放送大学客員教授。博士(医学)。主な著書に『ご老人は謎だらけ 老年行動学が解き明かす』(光文社新書)、『マンガで笑ってほっこり 老いた親のきもちがわかる本』(朝日新聞出版)など。

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