不良の方から絡んできたのに「頼むから帰れ」? 近所の小さな神社で危機を迎えた話
不良に絡まれ危機を迎えた話
ある日、近所の小さな神社を通りかかると同じ学年のヤンキー一人と、先輩ヤンキー二人がたむろっていた。
何故か呼ばれたので近くへ行くと、その先輩の一人に煙草を勧められた。
しかし、私は吸いたくないので丁重にお断りせねばならない。
私は教科書に載っていた喫煙により黒く染まった肺を思い出し、ニコチンはすぐ黒くなって怖いので遠慮しますと伝えた。
しかし、発音が「ニコチン」ではなく、明らかにあだ名の「ニコちん」であった為、暇さえあれば日焼けサロンへ足を運ぶガングロのニコちんという謎の人物が彼らの中に生まれた。
私がニコちんを連呼していると、察しの良い同学年のヤンキーが
「ニコチンな……」
と、震える声で訂正を入れ、後ろの先輩ヤンキーが激しく咳き込んだ。
「ヒロシ!? 大丈夫か?」
と、タバコを勧めた先輩ヤンキーが、盛大に咳き込むヒロシとやらの心配をした。
ニコチンにより肺が染まるのが怖いのは勿論の事、我が家の家訓で未成年の喫煙は許されない事を伝えようとしたが
「我が家の言い伝えで、ニコちんだけは許されないんです」
と、一族総出でニコちんに強い怨みを抱く盛大な歴史背景を仄(ほの)めかしてしまった。
ニコちんに一族を滅ぼされかけたのだろうか。
「そのお前ん家の伝説、何なの……?」
と、同学年ヤンキーが言葉を漏らした為、ヒロシに更なるダメージが加わった。
痺れを切らしたヒロシでない方の先輩は
「で、先輩の俺が勧めてるのに、結局お前は吸うの? 吸わないの?」
と、言葉で詰め寄ってきた。
この言い方から察するに、断ってしまったら彼の顔が立たないのだろう。
しかし、私の肺にニコちんをご招待する訳にはいかない。
互いが幸せになれる道を探した結果、「法に違反しないものなら吸えるのですが……」と、妥協案を提案した。
今この場で法に反さず吸えるものといえば酸素くらいなものであるが、今やヒロシはその酸素でさえも満足に吸えなくなっている。

「もういいよ、帰れ。ヒロシが危ない」
と、先輩ヤンキーは下を向いたまま私を追い払った。
呼ばれたから来たというのに、何故今となっては追い払われているのだろうか。
一声かけ、その場を去ろうとしたが、五歩くらい歩くと明日の小テストの範囲を自分が忘れている事に気がついた。
ついでに同学年ヤンキーに訊けば良いと思い立ち
「明日の小テスト範囲何ページだっけ?」
と、引き返し再び近づこうとすると
「頼むから帰れ!」
と、先輩ヤンキーは顔を下に向けながら強く追い払った。
ヒロシは瀕死となった。
テスト範囲は23〜34ページだった。

【著者プロフィール】
日常に転がるちょっとしたトラブルを、ドライブ感あふれる筆致でユーモアたっぷりに書き、SNS等で配信中。抱腹絶倒の展開と劇的なオチの真偽は定かでなく、謎多き存在だが、その世界観に魅了されるファンが増え続けている。
※本記事はやーこ(著)、栖 周(イラスト)の書籍『猫の診察で思いがけないすれ違いの末、みんな小刻みに震えました』から一部抜粋・編集しました
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