ネット上の知り合いに会いたい。願いをかなえた少女の運命は『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』著者インタビュー

「なつ」は、中学2年生の女の子。
母親と二人暮らしの彼女は、明るく社交的でクラスでも目立つグループに属していました。しかしそうしたポジションにいることで、グループ内で自分だけがオンラインゲームに課金できないことに不満を持っていました。

なつの母親は、なつのゲーム課金を決して許しませんでした。その理由は、離婚の原因でもある、元夫のゲーム依存とそれによる借金。

子どものための貯金にまで手を出していた元夫から離れ、娘を守れるのは自分しかいないという自負のもと、子どもを見守ってきたつもりでした。
しかし娘も中学生になり、母親のコントロール下にとどまっているほど素直な子どもではありません。

娘のスマホ画面に「裏切者」という文字が表示されるのを見て動揺した母親がなつに学校での様子をたずねても、本心を語ってくれることはありませんでした。
なつが学校で同じグループにいる友達「まりか」は容姿もかわいく、クラスの人気者で、先生とも仲良しというまぶしい存在。

まりかはオンラインゲーム上で知り合った男性「レオ」が気になっていたのですが、ある日突然、レオはなつにオンラインゲームの課金アイテムをプレゼントしてきたのです。
それ以降、なつはレオと、まりか達には内緒でやりとりするように。

自分達だけの特別な関係に舞い上がるなつでしたが、レオとのやり取りが、まりかの知るところとなってしまいます。

その結果、まりかの怒りをかってしまい、彼女達とは決別。この日を境に学校でのなつの居場所はなくなり、気づけばなつは学校には行かずに自宅で過ごすことが多くなっていました。
そうした日々の支えになっていたのはレオの存在でした。学校には行かずとも、レオとゲームをしていれば寂しさが埋められたのです。
会ったことはないけれど、信頼できる存在・レオに「直接会いたい」と誘われたなつは、悩んだ末に「私も会いたい」と返事をしました。

こうしてなつは、ネット上だけでつながっていたレオと、リアルで会うことに決めました。
ただ、一人では不安だったため、友人の「その」にも付いてきてもらうことにします。

不安と期待を胸に抱えながら、レオとの待ち合わせ場所に向かう二人。この後に衝撃の事件が起きてしまうことを、この時の彼女たちはまだ知りませんでした…。


インタビュー
――明るくて人懐こいなつですが、スクールカーストの「一軍」にいる自分を誇っているような言動も見受けれらます。彼女がその立場を守るために感じているプレッシャーは相当なもののようですが、なつをこのような人物として描いた理由をお教えください。
きむらかずよさん:自身が中高生の時に実際にいた少女たちを参考に描いたのですが、いわゆる普通の女の子であるひかりとはちょっと逆のタイプの女の子で、でもクラスに1人はいるような女の子を、描きたかったというのもあります。

――なつの母は、SNSで日常を発信するのが趣味で、ママ友との付き合いでも、相手の職業や見た目の華やかさなどに重きをおく女性です。しかし一方で、シングルマザーとして娘を守れるのは自分しかいないと日々奮闘している側面もあります。なつの母を、こうした二面性のあるキャラクターにした理由は何でしょうか。
きむらかずよさん:思ったことは全部口に出し、派手で、見栄っぱりで、プライドが高いような面だけではなく、シングルマザーとしての葛藤や、共感できるような、弱い人間的な部分も描きたいなと思いました。

――オンラインゲームで課金したいなつと、元夫との離婚原因でもあるゲーム課金を許せないなつの母。どちらも悪いわけではないのに、結局はこれがもとでなつはゲームの課金アイテムを与えてくれる「オンライングルーミング」の加害者に近づいていってしまうことになります。なつとその母の関係性を描くうえで気を付けたことはありますか?
きむらかずよさん:なつと母の関係性は、違和感が出ないように、実際のシングルマザーの方の言葉を参考にさせていただいたり、とにかく母と子の関係性のリアルさを大切にしました。

――あるきっかけでクラスの「一軍」だった仲間から外されてしまい、学校に行けなくなってしまったなつ。しかしその惨めさを母親に訴えることもできない。彼女の感じていた孤独感・閉塞感は、読んでいるこちらが苦しくなるほどでした。きむらさんがこのような心に迫るエピソードを描ける理由はなぜですか?
きむらかずよさん:そう言っていただけて、とてもうれしいです。私は女子高出身で、本当にさまざまな女の子たちを見てきました。その経験が、いまの私の血肉になっているような気がします。
* * *
ネット上でしか知らない人に会うという「ボーダーライン」を超えようとするなつ。大人はとがめる行為ですが、なつ自身は、思春期の不安定な人間関係に葛藤しながら、幸せになる道を探してもがいているだけだったのかもしれません。
そうした子どもを非難したり叱ったりするだけでは、SNSをきっかけとした犯罪がなくなることはないと考えさせられました。
取材・文=山上由利子
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