33歳の若さで乳房をすべて切除。乳がん治療をフルコースで経験した漫画家が全摘を決意した理由【インタビュー】

娘を母乳で育てているさなかに乳がんが発覚した、イラストレーターのななぽよさん（@nanapoyodiary）。まだ33歳の若さで乳房をすべて切除する手術を受けることを決意した理由はなんだったのでしょうか。

闘病コミックエッセイ『33歳ママ、乳がんステージ3でおっぱいにサヨナラします 寛解までのポジティブ闘病記』で、がんの発覚から寛解までの経緯を、ななぽよさんは丁寧に綴っています。家族に支えられながら、抗がん剤治療・乳房切除術・放射線治療と、がんの3大療法（標準治療）を乗り越えています。今回は手術を決めたときの心境や、毎日の生活で心がけていることなどをお伺いしました。

『33歳ママ、乳がんステージ3でおっぱいにサヨナラします』あらすじ

娘の授乳中に胸のしこりに気づいたななぽよさん。最初は乳腺炎のなごりかと思いがんを疑いもしませんでしたが、軽い気持ちで受けた検査でそれががんであることがわかります。

放射線治療では吐き気や倦怠感、下痢や口内炎などさまざまな副作用もあり、髪の毛もごっそり抜けてしまいました。がんは放射線治療で消えたものの、遺伝子検査の結果ななぽよさんの乳がんは遺伝性のものだったことがわかります。

ななぽよさんは全乳房を切除する手術、いわゆる「全摘」を決意します。ななぽよさんは夫に一週間の休みを取ってもらい、娘の世話を任せて入院しました。全身麻酔から目覚めた時に手術は無事に成功していました。しかし、その夜、ななぽよさんは手術で失った胸のことを想って泣いたそうです。

病理検査の結果、がん細胞は完全に消え、再発予防のための放射線治療を25日間受けてようやく１年間にわたる長い治療が終わりました。放射線治療の副作用や手術のあとの傷口がケロイドになるなどのトラブルはあったものの、２年後の現在までがんの再発はなく、今は家族と元気に過ごしています。

著者・ななぽよさんインタビュー

――乳房をすべて切除する手術を受けられていますね。「乳房の温存」と「全摘」のどちらを選ぶか悩む方も多いそうですが、全摘にした決め手について教えて下さい。

ななぽよさん：
できれば温存したかったのですが、検査で遺伝性のがんということが判明し、胸を残すとまた新しくがんができる可能性があると言われました。万が一娘に遺伝していた時に、ママは元気になったよと励ませるように、完治する可能性がより高い全摘手術を決断しました。

――手術後、胸の手術跡を見た時の心境について教えて下さい。

ななぽよさん：
先に手術跡を見た夫が青ざめて絶句したのでしばらく怖くて見られなくて…。その後、やっと自分で傷口を見た時も、生々しい縫い目にびっくりして「フランケンシュタインじゃないですか！！」と叫んでしまいました。ただ、どうなっているんだろう…と怖がっていた時よりも、傷口を見た後のほうが吹っ切れて楽になりました。

――手術のあとの放射線治療は平日25日間毎日通院されたとのことですが、この時期に大変だったことや印象に残っていることはありますか？

ななぽよさん：
年末年始を挟んだので、慌ただしい年明けになりました。片道1時間以上かかるので、通院が大変でこの時期は仕事も休みました。身体的には放射線を当てたところがひどい日焼けのようになったので毎日保湿クリームを塗っていました。今はすっかり元通りになりましたが、当てたところは汗をかく機能が無くなったので保湿は継続中です！

――抗がん剤治療、手術、放射線治療とフルコースで治療を受けられましたが、一番心身がつらかったのはどの時期でしたか？ またどんなところが大変だったかを教えて下さい。

ななぽよさん：
治療も大変だったのですが、生検から告知まで、治療を始めるまでの待機期間が辛かったです。今にもがんが大きくなって身体中に転移するんじゃないかと怖くて、おかしくなりそうになりました。治療が始まってからは「とりあえず今死ぬことはない」「頑張って絶対に治す」と前向きになれました。手術も「明日胸が無くなる」という前日の夜が一番悲しくて、病室で一人胸の写真を撮って泣きました。

――現在は再発もなく経過観察中で健やかに過ごされていらっしゃるとのことですが、毎日の生活において気をつけていること、心がけていることがあれば教えて下さい。

ななぽよさん：
がんになる前は娘が第一優先で、娘のためなら自分の睡眠や食事を削ったりしてたのですが、今は自分ファーストで無理をしない、ストレスを溜めないがモットーです。意外にもその方が娘のためにもなっていると思います。しんどい時は夫や両親や義両親に頼っていますが、前よりも周りとの仲が深まり毎日が楽しくなりました。
免疫力向上のために特に睡眠はちゃんと取りたいですね！

――治療費は高額療養費制度でなんとかなったとのことですが、がん保険に入っていなかったことを反省されていましたね。先日この高額療養費制度の見直しが話題になっていましたが、このニュースについてがん治療経験者として思うところがあれば教えて下さい。

ななぽよさん：
がんは、健康な人でもある日突然なる病気です。治療費が高額になれば、生きたいのにお金の問題で治療を諦める人が出るかもしれません。高額療養費制度には本当に感謝していますし、これからも皆のセーフティネットであってほしいです。

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33歳の若さで乳房をすべて切除するという経験をしながらも、「もし元気になれたら私がみんなの希望の星になりたい」と闘病記を綴ることを決意したななぽよさん。その経験を丁寧に綴ったコミックエッセイは私たちに多くのことを教えてくれます。もし同じような状況で不安な気持ちになったときは、この作品を思い出して心のお守りにしてみてはいかがでしょうか。

※こちらの記事で紹介した治療方針は著者の場合のものです。ご自身が検査や治療を受ける場合は、必ず診察を受けた上でご担当の医師にご相談ください。

取材・文＝レタスユキ