関わりたくない「毒親」の介護をすることになってしまったら。『余命300日の毒親』著者インタビュー

がんになり余命はあと1年弱と宣告された父親。主人公のヒトミは幼い頃から父親の暴力や怒鳴り声に苦しめられて生きていたので、「長生きなんかしなくていい」と心の中でつぶやきます。

父親は糖尿病で視力も低下し足腰も弱くなっているため、日常生活もままならない様子でした。しかし、介護サービスを受けることを「バカにするな」「俺は一人でやっていける」と拒否します。そのくせちょっとした買い物のたびにヒトミを電話で呼び出して、買ってきたものが気に入らないと「買い物もできないのかよ」と文句を言ったりバカにしたりする始末。


夫の協力も得てどうにか介護申請にこぎつけたものの、父はケアマネージャーやヘルパーに対しても怒鳴りつけたり追い返したり。その度に謝罪など対応に追われるヒトミは、仕事も思うようにできなくなっていきます。

時間を削って父親の通院に付き添っても罵られ、トイレに間に合わない父親に紙パンツを提案しても「みっともない」「お前の話なんて聞く価値もない」と否定されます。ヒトミの中の父親への憎しみは次第に募っていくのでした。

そんなある日、ふとしたきっかけで父親に突き飛ばされたヒトミは、手首を負傷してしまいました。ケガのせいで仕事ができなくなってしまい、落ち込むヒトミ。しかし、電話をかけてきた父親は、反省や謝罪の態度もなく、「米を炊きに来い」「親よりも仕事が大事か」と言い放ちます。ストレスでヒトミはついに心のバランスを崩してしまい…

著者・枇杷かな子さんインタビュー
――「毒親×介護」をテーマに作品を描こうと思ったきっかけを教えてください。
枇杷さん:まず担当編集さんと毒親をテーマに別のプロットを考えていたのですが、なかなか上手くいかず…。そんな中ストーリー案を再び担当さんと考え直していたとき、当時介護で父の要望や言動に振り回されることが多かったこともあり、今の自分なら別のものを描けるかもしれないと感じました。
――当時の実体験が反映されているのですね。では、体験そのものを描いたエッセイではなく、セミフィクションの手法を取った理由は何でしょうか。
枇杷さん:正直私自身は父を「毒親」と言うことは今でも難しいんです。好きとは言えませんが、愛情深いところや良い面もたくさん知っていますので。だからこそエッセイとして父のマイナスな面ばかりを描くことには抵抗がありました。
それでも、実際に介護を経験したことで考えたことや、伝えたいことはたくさんありました。何より、今悩んでいる方に「自分だけではないんだ」と思ってもらえるような作品を作りたいという気持ちがありました。そこで、ヒトミという主人公に思いを託して、セミフィクションとして物語を描くことにしました。
ヒトミは私とは別の人間で、父親に対する思いやその環境も違い、また別の苦しみを持っています。だけれど決して他人事だと感じたくない、そう思いながら描きました。

――では、主人公のヒトミというキャラクターには、どこまでご自身を重ねていますか?
枇杷さん:「父親が怖い」という部分は自分を重ねています。大人になっても父の怒鳴り声が怖かったので、幼少期から積み重なった恐怖心を持っているという部分は描いていて熱が入りました。
――この作品で特に印象に残っているシーンがあれば教えてください。
枇杷さん:12話でヒトミが父親に熱いお茶をかけようと考えるシーンです。

――父親の介護に疲弊したヒトミが、熱いお茶を父親にかけて苦しめることを一瞬だけ想像する場面ですね。ヒトミがギリギリまで追い詰められていることが伝わってくる場面で、とても印象的でした。
枇杷さん:特別な人でなく明るく優しさを持つ人であっても、肉体精神的に追い詰められると虐待に至ってしまう可能性があることを描きたかったんです。

* * *
外から見れば「そんな親、見捨てればいい」と簡単に思えるかもしれません。けれど、幼い頃からモラハラと暴力で心を支配されてきたヒトミにとって、その呪縛は簡単に断ち切れるものではありませんでした。それでも彼女は少しずつ、さまざまな人々の助けを得て、自分自身を取り戻していきます。『余命300日の毒親』は、ギリギリまで追い詰められた彼女の葛藤と再生を描いた物語です。
取材=ツルムラサキ/文=レタスユキ
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