「こんな時間にどこに行くの?」弟が最期に家を出ていく瞬間に姉が抱いた違和感

高校生の時に、16歳の弟を事故で亡くしたきむらかずよさん。その経験をありのままに描き、肉親を突然失ったある家族が再び歩き出せるようになるまでの物語をつづったのが『16歳で帰らなくなった弟』です。
お酒を飲むと財布のヒモがゆるくなる父、よその子でも平気でしかり飛ばす母、素直になれない姉、そしてヤンチャだけど誰からも好かれた弟。
そんな家族の日常を変えたのは、深夜にかかってきた警察からの電話。弟が事故に遭ったという報を受け病院へ向かうと、すでに弟は息を引き取っていて…。
今回は、本編では描かれなかったきむらさんのエピソードをご紹介します。




『16歳で帰らなくなった弟』の著者のきむらかずよさんに、弟さんについて、そして当時の心境についてお話をうかがいました。
——16歳で旅立った弟さんは誰からも好かれる性格だったようですね。姉から見てどのような弟さんでしたか?
きむらさん:「目立ちたがり屋でやんちゃ、そして誰とでもすぐ友達になる子でした。友達のことを悪く言われるのを何より嫌い、私が弟の友達を悪く言うと、すごく怒りました。繊細な部分もあって正直な性格だったので、年齢問わずたくさんの人に可愛がってもらっていましたね」
——弟さんの死はもちろんですが、同乗していた身元不明の女の子を描くのも相当辛かったことと思います。描くと決めた時はどのような心境だったのか、教えていただけますか。
きむらさん:「弟のことを描くのは、本人との約束でもあったので迷いはありませんでした。でも女の子については相当悩みました。
彼女は嫌ではないだろうか、自分だったらどう思うだろうと、何度も自問自答しました。描かないでおく方が楽でしたが、悩みに悩んだ末に描くことを決めました。
『忘れられること』『なかったことにされること』が亡くなった人にとって一番悲しいことではないか…と思ったからです。
単なる被害者ではない、弟が女の子を乗せてしまった、という十字架を背負い、大切に大切に描きました」
——改めて、弟さんはきむらさんにとってどんな存在でしたか?
きむらさん:「負けず嫌いなところは似ていたかもしれませんが、性格は私が陰なら弟が陽。すべてにおいて真逆でした。自分にないものを全部持っているような弟を、心のどこかでいつも羨ましく思っていました」
きむらさんの辛い経験から考えさせられるのは、今ある日常は実は「当たり前」ではない、ということ。平穏無事に暮らせる日々のありがたさに、改めて気付かされます。
著=きむらかずよ/『16歳で帰らなくなった弟 外伝』
【著者プロフィール】
きむらかずよ
イラストレーター。小学1年生の時にプレゼントされた漫画『うわさの姫子』に衝撃を受け、漫画やイラストを描くように。現在は3人の子育てをしながら、新米保育士としても奮闘中。交通事故で亡くなった弟のことを綴った「16歳で帰らなくなった弟」にてデビュー。
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