「今日を生きただけで充実!」という気持ちになれる場所。イラストレーター・益田ミリさんが語る「日常の中の別世界」

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『スーパーマーケット宇宙』より

スーパーマーケットの中を「まるで巨大宇宙のよう」と綴るイラストレーター・益田ミリさん。その独自の視点で日常の風景を切り取った作品が、このたび単行本になりました。雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載していたこの作品『スーパーマーケット宇宙』は、わたしたちが毎日何気なく通っているスーパーマーケットにも、ワクワクするような楽しさや意外な発見がたくさん詰まっていることに気づかせてくれる作品です。

今日は著者の益田ミリさんに、この作品を描いたきっかけや作品にこめた思いについてお話を伺っていきます。

【マンガ】『スーパーマーケット宇宙』を最初から読む

アイデアとタイトルの由来


『スーパーマーケット宇宙』より

『スーパーマーケット宇宙』より

――本作の連載が始まったきっかけや、最初の着想についてお聞かせください。また、『スーパーマーケット宇宙』という、日常と壮大さが同居するタイトルには、どのような思いを込められたのでしょうか。数ある日常的な場所の中から、「スーパーマーケット」を題材として深掘りしようと思われた理由についてもお聞かせください。

益田ミリさん:自宅が職場なので、夕方、気分転換も兼ねてスーパーマーケットに行くのが日課です。スーパーマーケットに向かっているときは、まだ少し仕事モードを引きずっているのですが、スーパーマーケットの自動ドアが開いた瞬間、気持ちが切り替わって別世界に入っていくような気分に。そこから「スーパーマーケット宇宙」という言葉が浮かびました。スーパーマーケット内でいつも考えていることを気負わずに漫画にできればいいなと思っていました。

スーパーマーケットにはさまざまな商品が並んでいるわけですが、自分は買わないけど誰かが買うであろう商品に安堵するんです。街を歩く人が全員知り合いだとしたら息苦しいみたいに、買わない商品があることでホッとするのかもしれません。毎日行くのに飽きないってすごい場所だなと思います。
たくさんの自転車がとめられているスーパーマーケットが見えてくると、わたしもこの世界の営みに参加していて、何もしなかったような気分の日でも、「今日を生きただけで充実!」という気持ちになります。


7年間の連載と社会の変化


――スーパーマーケットという場所の存在意義に対する新たな気づきや変化、また、社会状況の変化を受けてスーパーマーケットを舞台にした作品を描くうえで意識されたことは? ご自身の“生活者”としての視点の変化や、日常的にスーパーマーケットを観察し続けたことで生まれた新たな発見や独自の着眼点についてもお聞かせください。

益田ミリさん:連載中にコロナ禍になり、マスクが棚から消えた時期がありました。ソーシャルディスタンスでレジに並ぶ列も間隔がすごく広くなって。マスクやトイレットペーパーや水がたっぷり並び、レジの列に「足型」のシールがない今を当たり前に思ってはいけないなと思うようになりました。ありがたさが増しました。


『スーパーマーケット宇宙』より

『スーパーマーケット宇宙』より

単行本化における構成のこだわり


――単行本化にあたり、加筆修正や掲載順の大幅な再構成が行われていますが、一冊の本としてまとめる際に、どのような点を意識されたのでしょうか。雑誌連載時とは異なる、単行本ならではの読みどころや、構成し直したことで生まれた発見があればお聞かせください。

益田ミリさん:実際にスーパーマーケットの中を歩いているみたいに読んでいただきたいなと漫画の順番を組み替えました。スーパーマーケットと同じように、野菜、果物、生花のエピソードから始まり、鮮魚、たまご、納豆とつづき、最後はパン売り場です。わたしは朝食用に食パンをよく買うのですが、食パンが並んでいるのを見ると本棚を思い出すんです。「明日もまた食パンみたいな真っ白な新品の一ページが始まることを願い」という言葉をこの本のラストにしました。


取材=Iguchi

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Information

【著者プロフィール】

益田ミリ
1969年大阪生まれ。イラストレーター。主な著書に漫画「すーちゃん」シリーズ、『今日の人生』『僕の姉ちゃん』『沢村さん家のこんな毎日』『週末、森で』などがある。また、14歳の少女の日々を瑞々しく描いた青春小説『アンナの土星』、川柳集『わたし恋をしている。』や、エッセイに『美しいものを見に行くツアーひとり参加』『そう書いてあった』『言えないコトバ』『大阪人の胸のうち』など、ジャンルを超えて活躍する。2024年、『ツユクサナツコの一生』で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。




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