「10歳で整形した」という動画を羨む中学生。メイク感覚で手術を受ける子どもたちと“終わらない整形ループ”の罠【著者に聞く】

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『娘に整形したいと言われたら』より

「整形したい」と娘から打ち明けられたとき、親はどう向き合えばいいのか。14歳で整形した自身の過去を原点に、数々の作品を世に送り出してきたうみの韻花さんの最新作『娘に整形したいと言われたら』が注目を集めています。本作で描かれるのは、ごく普通の女の子が美醜に囚われていくリアルな恐怖と、その母親の心の軌跡。今回は、手軽になった美容医療の裏に潜む「終わりのない負のループ」と、現代を生きる子どもたちの心の隙間について、お話を伺いました。

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『娘に整形したいと言われたら』あらすじ


登場人物

『娘に整形したいと言われたら』より

『娘に整形したいと言われたら』より

中学生の娘・ひかりに「二重整形をしたい」と懇願され、悩んだ末に「まずは話だけでも」とカウンセリングを決意した母の彩。娘と一緒に電車に乗り込んで、ふと見上げた車内広告には、10代や学生をターゲットにした美容整形の文字が溢れていました。ひかりのスマートフォンの画面には、「10歳で整形しました」という動画も。「いいなぁ……」とポツリと呟き、羨ましそうに表情を曇らせる娘の姿に、彩の胸はざわつきます。

『娘に整形したいと言われたら』より

到着した美容クリニックでいよいよカウンセリングが始まると、説明を聞いたひかりは「すごく良い……!」と早くもやる気満々です。彩は母親として、もっとも心配だった「まだ成長期の身体に影響は出ないのか」という疑問を医師にぶつけてみました。返ってきたのは、二重の埋没法はメスを使わないので身体への負担はほとんどないこと、万が一の時は糸を取れば元に戻せるという安心の言葉。


『娘に整形したいと言われたら』より

ホッと胸をなでおろす彩でしたが、医師が最後に付け足した「1ヶ所整形すると他の部位も気になり始めることが多いのでそこだけは気をつけてくださいね」という一言が胸に引っかかります。

『娘に整形したいと言われたら』より

『娘に整形したいと言われたら』より

それでも、丁寧な対応にひとまず安心した彩は、クリニックからの帰り道、ひかりに優しく語りかけました。「どんな決断でもお母さんは応援するよ」。嬉しそうにはにかむ娘を見て、これで良かったんだと自分に言い聞かせる彩。この時までは、全てがうまくいくように思えていたのでした。


整形が身近になりすぎた時代。当事者だからこそ見える「逃げ場のない息苦しさ」


『娘に整形したいと言われたら』より

――電車に乗れば美容整形の広告が目に入り、SNSを開けばコンプレックスを煽るような情報が溢れている……。そんなルッキズムが加速する現代社会を、うみのさんはどのように感じていますか?

うみの韻花さん:非常に息苦しく、同時に逃げ場のない社会になっていると感じます。そして整形が特別ではなく、身近なものになり過ぎている、という感覚はあります。

私自身、自分の意思で全身の整形に900万円ほどかけてきましたが、それは「自分が納得する自分」になるための投資でした。しかし今は、SNSを開けば加工された完璧な顔が溢れ、常に他人と自分を比較させられるシステムが出来上がっています。「美しくなければ価値がない」という強迫観念をビジネスとして煽っている側面もあり、そこに取り込まれてしまう若者を見ると、強い危機感を覚えます。


もはやメイクやダイエットと同列に!? 「可愛くなるための努力」の延長にあるプチ整形


『娘に整形したいと言われたら』より

――親の世代からは見えにくい部分もありますが、今の中高生にとって美容整形は非常に身近な選択肢になりつつあると感じます。こうした「低年齢化」の背景には、子どもたちの間でどのような空気感やトレンドがあるのでしょうか?

うみの韻花さん:リサーチを通して感じたのは、今は「可愛くなるための努力」の延長線上に、メイクやダイエットと同列で「プチ整形」が存在しているということです。インフルエンサーがダウンタイム中の様子を発信したり、SNSのフィルターを通した顔が自分のデフォルトだと錯覚してしまったり。

二重埋没なら、糸なので戻そうと思えば簡単に戻せるし、小学生でもやっている子がいる。身近にそんな子がいたら、手軽に手を出してよいものと錯覚してしまうのではないかと思います。


「ここさえ直せば幸せになれる」の罠。整形ループにハマってしまう心の隙間


『娘に整形したいと言われたら』より

――カウンセリングした医師の「1ヶ所整形すると他の部位も気になり始める」という言葉は、美容医療の危うさを突いているセリフでした。この「終わりのないループ」ですが、うみのさんの目から見て、どのような心の隙間からハマっていってしまうものなのでしょうか? 

うみの韻花さん:私自身も何度も手術を経験しているのでよくわかりますが、一つのパーツを「完璧」にすると、今度は隣のパーツのアラが悪目立ちして見えてくるんです。それは顔のバランスの問題でもありますが、本質的には「自己肯定感の欠如」という心の隙間から来ています。

「ここさえ直せば幸せになれる、自信が持てる」と信じて手術台に上がるけれど、根本的な自信のなさが解決していないと、また別のコンプレックスを探し出してしまう…、そうして負のループに陥るのだと思います。

* * *

身近になりすぎた美容整形と、そのハードルの低さが生む「終わりのない負のループ」。うみのさんが自身の経験をもとに語ってくれた言葉は、現代のSNS社会を生きる子どもたちが、いかに過酷な戦いを強いられているかを教えてくれます。


取材・文=宇都宮薫

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