「苦手を克服した」美談にはしたくない。生ピーマンに挑戦した子どもと笑い合った時間/大人になってもできないことだらけです(5)

うまくいかなくても、一緒に笑えたら、それだけで意味があるよね。
学童の支援員(放課後児童支援員)である保育士・きしもとたかひろさんが、日々多くの子どもたちと関わる中で感じた「できる」「できない」の先にある大切なこと。
「できないこと」に目がいきやすい、子どもたちとの生活。口うるさく注意するたびに、できなくて落ち込む子どもの姿。本当はお互い笑顔で過ごしていたいのに…。ふと思い返せば、自分自身が「できない自分」を「ダメな自分」と思い込み、それを子どもにも当てはめてしまっていた。
日々葛藤を続けながら「どうしたらうまくできるか?」ではなく「うまくいかなくてもええんちゃう?」「子どもも大人もしんどくない今を考える」というきしもとさんの視点が、SNSを中心に多くの共感を集めています。
子育てにまつわる身近な悩みや、子どもとの関わりで体験した温かいエピソードの数々。いまあなたが抱えている「しんどさ」をゆっくり手放すためのきっかけが見つかるかもしれません。
※本記事はきしもと たかひろ著の書籍『大人になってもできないことだらけです』から一部抜粋・編集しました。
すこしずつ変わっていくだけ
こないだ、ピーマンを生で食べた。
7歳になった友人と食事をしているときに、学校の給食でピーマンが出るとテンションが下がるという話になった。
面白半分で「そういえば、こないだピーマンを生で食べてんけど、意外とこれが美味しくて」と話をすると「食べてみたい!」と言い出した。間違いなく好奇心だけで言っている。
その好奇心を取りこぼさないように冷蔵庫からピーマンを取り出し、手渡して種をとる方法を教えてあげた。流水で洗って塩をかけると、嫌いだと言っていたのに好奇心のほうが勝ったのか、勢いよくかぶりついた。
パリッと"美味しそうな"音が鳴る。もぐもぐとピーマンを味わいながら笑顔になったので「美味しい?」と尋ねると、顔を歪めてお皿に吐き出した。美味しいのは音だけだったらしい。
苦い後味を紛らわすために白米を口いっぱいに含む。「出しちゃったけどさ、学校のみんなには食べたって言おう」と笑っていた。
「味はどうでしたか?」という質問には「まずかったです!」と元気に答えたのに、しばらくしてから「もう1回食べてみる」と言い出した。クセになるのだろうか。
せっかくなので次はマヨネーズをかけてみることにした。すると、さっきより苦味が少ないのか、一口食べて「これはイケる」とばかりに"追い"マヨネーズ。二口、三口と食べ進め、「食べてみて? 美味しいわ」と嬉しそうに勧めてきた。
それから面白くなって、ケチャップやソースでも試してみた。「ケチャップが美味しいって思ったけど、やっぱりマヨネーズが一番やわ。そのままで食べるのは苦いので0点です!」と、ゲラゲラと笑いながら、結局一人でまるまる1個食べてしまった。
僕はピーマンを見るたびにそのときのことを思い出しては、パリパリッという心地よい音とゲラゲラと笑う声が蘇ってつい口元がゆるむ。
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