「苦手を克服した」美談にはしたくない。生ピーマンに挑戦した子どもと笑い合った時間/大人になってもできないことだらけです(5)

成長したように見えるその姿は、追い込まれて苦しみながらギリギリで頑張っていることの表れなのかもしれない。
逃げ道を無くして苦手を克服することは成長ではない。ましてやその頑張りを求めて喜ぶなんて、なんだかおかしいような気がしたのだった。
毎日わがままを言っていた子が、ある日を境になにも要求をしなくなったとして、そんなときに僕は、聞き分けがよくなったとか自制が利くようになったとか、勝手に成長だと思ってしまう。
けれど、その実は「言っても無駄だと悟ったから」かもしれない。自分の思いを伝えるエネルギーがなくなったからかもしれない。
社会では、言っても無駄だからと諦めて黙ることを、「大人になる」と表現する。けれど、それは成長して大人になったのではなくて、身を守る術を身につけただけだ。
僕は子どものなにを見ているんだろう。できているように見えるその姿は、みんなから外れないように、こぼれないように、少しでも普通になるために必死にしがみついているものなのかもしれない。
僕自身がまさにそれで苦しんでいるのに、子どもの姿となると、みんなと同じようにできて、トラブルを起こさないでいられるようになったそれを、成長だと感じてしまう。
学校に行けるようになった。ピーマンが食べられるようになった。友達と仲良く過ごせるようになった。落ち着いて話が聞けるようになった。聞き分けがよくなった。
じゃあそれで、その子は生きやすくなったんだろうか。
それで一つ問題が解決したように感じるけれど、その子のしんどさは「できなかったことができるようになった」という姿に隠れただけで、ずっと深くに残ったままかもしれない。
子どもの育ちを見守る立場だからこそ、その成長した姿に喜びを感じる。
それは悪いことではないけれど、それと同時に、無理していないだろうか、しんどさを抱えさせていないだろうかと、見えない部分にも目を向けていられたらと思う。
できなかったことができるようになって生きやすくなることもあれば、しんどくなることもきっとある。
僕が本当に大切にしたいことは、できなかったことができるようになることではない、もっとほかのなにかだ。
見栄えのするものに覆われてしまってその大切にしたいことが見えなくなる前に、ちゃんとそれに気づけるようにしていたいな。
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