「気持ちに寄り添う」とは?泣き止まない子どもを見かけた友人の言葉に学ぶ/大人になってもできないことだらけです(6)
なにもせず、ただ、話を聞く
あるとき、小学校からの帰り道に急に「学童に行きたくない」と言い出した子がいた。
無理に連れて行くわけにはいかないため、休めるかどうかを確認するために保護者に連絡してみたが都合がつかず、渋々学童に向かうことになった。
話を聞くと学校で嫌なことがあったらしい。施設に着くまでに気分を切り替えられるように、愚痴を聞いたりくだらない話をしたりして笑いながら到着できた。けれど、いざ室内に入ろうというところでその子は足を止めてしまった。
説得しても動こうとはせず、ほかの子が室内で活動しているのを放っておくわけにはいかないため、別の支援員にその子を見守るようお願いして、僕は一度室内に入り用事を済ませることにした。
室内から様子を見ていると、支援員はずっとその子の愚痴を聞いているようだった。埒(らち)があかないのでタイミングを見て再度室内に入るように声をかけようかと思っていると、しばらくして何事もなかったかのように部屋に入ってきた。
相変わらず不貞腐れてはいるけれど、少しスッキリしたようにも見える。
相手をしてくれていた支援員にありがとうございますと声をかけると、「いえ、どうしていいかわからなくて、ただ話を聞いていただけでなにもしていないです」と返ってきた。
「なにもしてない」という言葉で、自分が見落としていたものに気づく。
玄関先で過ごされるのも困るため、僕はその子を室内に入れることしか考えていなかった。楽しくなるようにと話したことも、その子が学童を嫌がらないようにと思ってやっていた。けれど、それは僕の思いをただ押しつけているだけだったんじゃないかと。
なにもせずただ話を聞く。それはすなわちその子の話に耳を傾けるということだ。なにもしていないように見えるけれど、そのなにもしないということが、その子に寄り添っているということなんだ。
そうやってうまくいったから、子どもに言うことを聞いてほしいときにはまずその子の言葉を聞こう、という話ではなく、知らぬ間に「自分」ばかりになってしまっているかもしれないから気をつけていたいという話。
「こちらの思い通りに動いてもらう」ためにその子の言葉に耳を傾けるのではないもんね。
こちらがしてほしいと思っていることは、その子がしんどくならないための数ある方法のうちの一つだ。
僕にできるのは、僕が思うその"いい方法"を押しつけることではなく、その子のしんどさに目を向け耳を傾け、そのしんどさを解消できるいろんな方法を一緒に見つけていくことだよね。
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