「気持ちに寄り添う」とは?泣き止まない子どもを見かけた友人の言葉に学ぶ/大人になってもできないことだらけです(6)
余談ですが
ある子が「お腹が痛い」と訴えてきたので「大丈夫?」と声をかけると「大丈夫じゃないけど大丈夫」と返ってきた。心配するほどではないけれど痛いものは痛いということだろう。
痛みが落ち着いたと思ったらまた痛みがぶり返してくるようで、そのたびに「いたた」とこぼしている。何度も「大丈夫?」と聞くのもしつこいような気がして、なんて声をかけようかと悩んだあげく、棒読みで「かわいそう」という言葉が出た。
他人ごとな感じがすごい。全然心配しているように聞こえない。なんかごめん、と思っていたら案の定「ひとごとか!」と笑いながら突っ込まれた。
「ほんまに心配してんねんで」と弁解しながら、その人の痛みはその人のもので、どうしたって他人ごとだよな、とも思ったりする。
同じように、自分のことはどこまでいっても自分ごとだ、と"傲慢な僕"を思い浮かべる。
そんな中でわずかにある、相手のことを思ったり心配したりする気持ちはどっちなんだろう、と考える。
どちらか一方だけとは限らないか。自分ごとと他人ごとが重なる部分があって、その部分を自分ごとにしすぎたら相手の領域にまで踏み込んでしまうけれど、自分ごとでなくなったなら人を心配することもなくなってしまうもの。
「突き放す」でも「寄りすぎる」でも「混ぜる」でもなく、その重なったところを重ねたまま大切にする。それが寄り添うってことなのかもしれないな。
それからは、僕が例えば「二日酔いか気圧のせいか、朝から頭が痛くて」と嘆いたりするたびに、棒読みで「かわいそう」と返ってくるようになった。
気持ちのこもった心配ではないけれど、二人にだけわかる符号のようなものだから、労ってくれていることが伝わってくる……なんてことはない。心配してもらっているようには全然感じない。
もっと心配してくれよ! と少し寂しくなる。けれど、それでいいのだと思ったりもする。
その少し素っ気なく感じるお決まりのやりとりが、お互いに踏み込まない部分があることを尊重するためのやりとりな気がして心地よかったりするのだ。

著=きしもと たかひろ/『大人になってもできないことだらけです』(KADOKAWA)
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