米袋専門メーカーに聞いた【お米のリアル】国産米が“当たり前”じゃなくなる未来…今私たちにできることはある?

毎日の食卓に欠かせない「お米」

毎日の食卓に欠かせない「お米」。今年は「令和の米騒動」とも言われ、店頭からお米がなくなったり、価格が高騰したり…。ないと困るものなのに、あまりに高額になっていてスーパーで二の足を踏んでしまいますよね。そして備蓄米の放出がはじまり…とニュースで見ない日はないほど、お米事情が話題を集めています。

今回は、「米袋」の専門メーカー、株式会社アサヒパックの広報担当小林大介さんに、お米に関して気になるあれこれをお聞きしました。

アサヒパックは、1957年設立のお米に特化した包装資材メーカー。米袋のほか、販売促進用パネル、のぼりといった販促商品の企画・製造・販売を一貫して行っています。
環境に配慮した資材開発や食育の推進、ごはん食推進活動など、持続可能な社会への貢献にも積極的に取り組んでおり、お米の最前線にいる会社といっても過言ではありません。

※取材は随意契約による備蓄米放出前(5月)に行いました。

【写真】古いお米はこうやって食べるのがおすすめ

お米の販売方法が大きく変わってしまい、「先が読めない」状況

——アサヒパックさんは、長年お米の袋を作り続けてきた専門メーカーとして、最近のお米の供給不足や価格高騰の現状をどのように見ていらっしゃいますか? 現場の肌感覚として、何か変化を感じていますか?

小林さん:米袋メーカーとしては、ご注文いただく包装資材(袋)の需要が「非常に不安定になった」と感じています。

弊社製品は量販店(スーパー)へ精米商品を納品する「米卸業」の皆さまに多くご使用いただいています。これまではその精米商品の店頭価格や、実施される特売等に合わせて、袋の需要もある程度は予測することができていました。ところが「令和の米騒動」の影響によりお米の販売方法が大きく変わってしまい、「先が読めない」状況となっています。

また現場の肌感覚としては、「『お米』が本当の意味で主食になった」という表現がしっくりくるかと思います。報道で取り上げられない日はない、とも言える状況で、良くも悪くも「お米」に対する関心が社会全体で今まで以上に高まっていることを感じています。

お米に対する関心が社会全体で高まっている


——お米の価格が高騰しています。米袋の素材や形状でいうと、少量パックの需要が増えていたりしますか?

お米の消費量や市場の動向の変化は?


小林さん:ご指摘のとおり、少量サイズの「4kg」や「2kg」の袋のご注文が以前より増えています。比較的購入がしやすい消費者側の心理から、このような傾向になっていると考えています。

特に米価高騰が始まった当初は「いつものお米の価格が落ち着くまでの繋ぎ」のようなイメージで、少量サイズを購入された方が多かったようです。ちなみに「もち米」用の袋のご注文も通常より多く頂いています。恐らくですが、炊飯時に精米に混ぜてご使用される方が増えたためでは、と推測しています。

農家の高齢化と後継者不足は深刻

——お米がお店で品切れになっていることもありますが、今後、私たちがお米を買えなくなるような心配はあるのでしょうか?

小林さん:令和7年秋までの本年度分に関しては、各業者がある程度の販売調整をされているようですので「無くなる」という事態にはならないかと思いますが、将来的に国産米が買えなくなるということは「あり得る」と考えています。

大きな理由のひとつが「農家の高齢化と後継者不足」です。

農家の高齢化と後継者不足

農林水産省の調査では、2020年の時点で農家の約70%が65歳以上(※1)、加えて、後継者を確保していると回答した農家は全体の約25%でした(※2)。そして実際に2015年と比較すると、既に農家の数は22%減少していました(※1)。

また帝国データバンクの調査では、2024年の米農家の倒産、廃業は過去最多を更新したとのことです(※3)。このままの状況が続けば「国産米を気軽に購入できない」ことが常態化してしまう恐れは十分にあります。

弊社では、その他「お米が直面する課題」について分かりやすくまとめたWebページを公開し、継続した情報発信を行っています。まずはぜひ、皆さまに現状について知っていただければと思っています。

※1 出典:農林水産省「変化する我が国の農業構造」
※2 出典:農林水産政策研究所 2022年度 研究ピックアップ「全国各地で農業経営継承の危機が深刻化―7割の経営体が後継者なし―」
※3 出典帝国データバンク「「米作農業」の倒産・休廃業解散動向(2024年)」


輸入米と国産米の違いはどこにある?

——輸入のお米も増えていますが、国産のお米と比べて、どういった違いがあるのでしょうか? 

小林さん:「味」についてですが、外国産米といっても「長粒種」「短粒種」などの分かりやすい違いから、各種特徴も様々なお米があります。また、精米を現地で行っている場合も多く、品質の違いを感じることはあるかもしれません。馴染み深い味、という軸で考えればもちろん「国産米」になりますが、とはいえ、各お米に合わせた食べ方や調理法次第で、外国産米でも違和感なく召し上がっていただけると思います。

外食、中食産業では外国産米が使用されていることも多いです。お店や業態によって100%だったり、国産米とのブレンドだったりするのですが、私も含めて気付かずに食べているケースが多いと思います。

輸入のお米は国産のお米と比べて、味や安全性で何か違いがある?

なお、お米の産地については「米トレーサビリティ法」で開示が義務付けられていますので、店頭やホームページ等で調べてみるときちんと掲載されていると思います(※4)。

※4 参考:農林水産省「米トレーサビリティ法の概要」


お米の保管方法&保存方法は?


——お米をまとめて購入する場合、どのくらいの量が適正でしょうか?

小林さん:災害も見据えた家庭内備蓄として考えますと、「一カ月に消費する量」をローリングストックされると安心かと思います。

ご存じない方も多いのですが、大半の米袋には小さな“穴”が開けられています。

米袋には小さな穴が開けられている

購入された袋のまま長期間常温で保管をされますと、湿気によるカビの発生やニオイ移り、また暖かい季節には虫が湧いてしまう心配もあります。ですので、保管する場合は保管環境には十分ご注意いただければと思います。

例えばですが弊社でも取り扱っている「鮮米キーパー」という保存用の製品などもありますので、お米の保管に心配な方にはおすすめです。袋のまま中に入れていただき、掃除機で空気を抜くことでカビや虫などの対策になります。

アサヒパックの「鮮米キーパー」


また、清潔な容器に移しての「冷蔵庫保存」をぜひ取り入れていただければと思います。
お米は「生鮮食品」ですのでジッパー付きの小袋に分けて野菜室に入れていただくのがお手軽でおすすめです。

米袋には小さな穴が開けられている


——古くなったお米を美味しく食べる方法があれば教えてください。

小林さん:以下参考になればうれしいのですが…
【炊飯前の浸水時間を長めに取る】:お米は精米してからどんどん乾燥が進みます。
通常より長めに浸水させることで、炊きあがりをふっくらさせることができます。ちなみに、炊飯時にみりんや日本酒を大さじ一杯程度加えるのもおすすめです。

【炊き込みご飯など、味付きの調理をする】:乾燥させてしまったお米は水分をよく吸います。具材や調味料を合わせる炊き込みご飯なら、味をよく馴染ませることができますので、おすすめです。

古く乾燥したお米は水分をよく吸うので、具材や調味料を合わせる炊き込みご飯がおすすめとのこと。


【チャーハンやピラフなどに使用する】:パラッと感が逆に利点になる方法です。やや硬めに仕上がるのも、お好みではありますが良いポイントだと思います。


——お米の未来を守るために私たちができることは何かありますか?

小林さん:農林水産省によると「国民全員が一口多くご飯(お米)を食べると食料自給率が1%上げられるという試算もあります」と紹介されています(※6)。

価格が高騰していますので難しいお願いなのは承知しておりますが、お米の生産量を維持するためにも、ぜひ一口多くお米を食べて欲しい、そして「自分事」として関心を持っていただけると非常にありがたい、と思っています。

※5 出典:農林水産省「お米と食料安全保障」


——米袋の専門メーカーとして、今後、日本の米文化を守っていくために、どのような活動をされていく予定ですか?

小林さん:現在、お米に関心を持つ米穀業界“以外”の企業、団体と連携した活動を模索しています。目下の食料安全保障や、田んぼの耕作放棄による水害の激甚化など、お米にまつわる課題は日々切迫しています。このような状況の中で、今より裾野を広げ、手を挙げてくださった方々をクロスオーバーさせる活動を行うことで、消費者の皆さまの「お米」に対する興味をもっと引き出したいと思っています。


——小林さんの個人的におすすめのお米の食べ方があれば教えてください!

小林さん:現在、どのお米も高いため、なかなかおすすめしづらいのですが、個人的には、いつもと違う産地銘柄の国産米をあえて選び、

・炊き立てでそのまま一口
・冷めてから軽く「塩むすび」にしてお冷で一口

いつもと違う産地銘柄の国産米を、炊き立てでそのまま一口と、冷めてから軽く「塩むすび」にしてお冷で一口食べてみて!

ぜひ意識して“味わって”いただく食べ方を推したいです。

日本のお米はとても平均点が高く、余程品質の悪いお米でない限り、全国どの品種でも基本的に美味しく召し上がっていただけますし、ある種それが当たり前になっています。意識して食べていただくことで、その価値を再発見してもらえると思っています。

また、その土台の上に各産地と品種、もっと細かく言えば生産者や田んぼごとの異なる特徴が出てきますので、ぜひ『どんなお米が好みかな?』と、考えてみていただきたいです。
あるお取引先様は、お米選びをワインのテロワール(土壌など、ぶどうに関する自然環境要因)になぞらえていました。そういう視点から見てみると、いつもの食事も楽しくなるのでは、と思っています。
日本の美味しいお米を未来に繋げていくため、ぜひ皆さまにも今以上に「お米」に関心を持っていただけると嬉しいです。

日本の美味しいお米を未来に繋げていくために…



私たちの毎日の食生活に欠かせないお米。お米の未来を私たちもきちんと考えていかなければいけませんね。小林さん、ありがとうございました!

【レタスクラブ編集部MMY】

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