「ようやく離婚できるはずだったのに」夫と縁を切りたい妻、親権を持ちたい夫。共同親権に揺らぐ夫婦の決断【著者に聞く】

年長の娘・ゆりかを育てる薫は、離婚を決意。物語は、夫婦が離婚届に記入すると決めた日から始まります。彼女は、正論を振りかざす夫・孝太との生活が息苦しく、限界を感じていました。



ところが、共同親権の施行を伝えるニュースを見た孝太は、その夜に「僕も一緒にゆりかの親権を持ちたい」と薫に告げます。


「ようやく離婚できるはずだったのに…」。
途方に暮れる薫をよそに、孝太は週3のリモートワークに切り替えるなど、共同親権に同意してもらうため、父親としてゆりかと関わり続けるための生活を整えようと動き始めます。


新しい制度を前に、家族の中では何が起きるのか…。ニュースだけでは見えにくい離婚の現実を、その中で葛藤する人々の感情を通して描いた本作について、著者のとーやあきこさんに聞きました。
この制度を、もっとたくさんの人に知ってほしい

―― 「共同親権」をテーマに新作を描こうと思われたきっかけはなんですか?
とーやあきこさん:担当編集者さんとの「最近、ネット記事に共同親権という話題がでてきて…」という雑談がスタートでした。法改正前の法案について描き切れるか不安だったのですが、勉強するほど「もっと深く学びたい、この制度をたくさんの人に知っていただきたい」という思いが芽生えました。それと同時に、法改正のタイミングで作品を残せる機会は滅多にないので、描くことを決めました。


―― 本作を描く際、意識したことや工夫した点はどこですか。
とーやあきこさん:読者に登場人物の感情や物語に入り込んでもらうためには、共同親権の説明もしなければいけません。だけど、説明しすぎると物語に入り込めない…という点で、バランスをとるのが難しかったです。結果的に、核となる部分は最初の段階で最小限説明し、補足や重要な部分は登場人物の会話の中で自然とお伝えできるようにしました。
“先の見えないもの”を描く不安を乗り越えて…
―― デリケートな社会問題を漫画として世に出すにあたり、執筆中に不安や葛藤を感じることもあったのではないでしょうか。
とーやあきこさん:「自分の理解や認識が間違っていたらどうしよう」と、不安に感じることは何度もありました。作品を描いているときは施行前で、世に出すときは施行後になるので、もし自分の想像とまったく違う方向に社会が進んでしまったら、この物語は読者に届くのだろうかと。デリケートで“先が見えないもの”を描くことが初めてだったので、これまでに感じたことのない不安を抱えていました。


―― 本作を描く上で取材などもされたと思います。その中で、特に印象に残っていることがあれば教えてください。
とーやあきこさん:経験者の話を聞くことができない分、とにかく知識をつけようと担当編集者さんと勉強を続けました。印象に残っているのは、監修をしてくださった弁護士の柳原由以先生が、「子どものため」という言葉を何度もおっしゃっていたことです。いろいろな立場や考え方で描くという意識はもっていたものの、大人視点に偏っていて、「子どものため」という意識が少し薄かったのではと気がつかされ、締め切り直前まで粘って台詞を調整しました。
* * *
共同親権をもっと多くの人に知ってほしいという思いから生まれた本作。制度を一方的に説明するのではなく、夫婦や親子の物語を通して、身近な問題として考えるきっかけになる作品です。
取材・文=松田支信
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