「学校に行くのもつらい」ルッキズム社会で容姿に悩み、整形手術を受けたいと願う我が子との向き合い方【著者に聞く】

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『娘に整形したいと言われたら』より

整形を望む娘に戸惑い、葛藤する「親の視点」を描いて、大きな話題を呼んでいるコミックエッセイ『娘に整形したいと言われたら』。我が子のことを「世界で一番かわいい」と本気で思っている親の愛が、他者軸の評価にさらされる子どもには届かない。そんな、すれ違う親子関係の中で、心の拠り所にすべきものとは? 今回は著者のうみの韻花さんに、作品に込めた切実な想いとルッキズム社会を生き抜くためのヒントを伺いました。

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『娘に整形したいと言われたら』あらすじ


登場人物

『娘に整形したいと言われたら』より

『娘に整形したいと言われたら』より

その日は、ひかりの誕生日。単身赴任先から帰宅した父親も揃い、家族みんなで温かいお祝いの時間を過ごしていました。ケーキを囲む和やかな空気のなか、ひかりは意を決したように「私、二重埋没の施術を受けたいと思う」と父親に打ち明けます。


『娘に整形したいと言われたら』より

『娘に整形したいと言われたら』より

しかし、父親の反応は、やはり厳しいものでした。「整形には賛成できないな」「まだ中学生なのに身体に手を加えるのは心配だな」と、簡単には受け入れてくれません。ここで優しく援護射撃をしたのが、他ならぬ母の彩でした。事前に二人でカウンセリングを受け、リスクもしっかり聞き、その上でひかりがどれほどの覚悟を持っているか。

『娘に整形したいと言われたら』より

彩の説得もあり、最終的には父親も整形を認めてくれたのです。「最高の誕生日になった」と、笑顔を見せるひかり。さっそく予約を済ませ、夏休みを利用して施術を受けることになりました。

『娘に整形したいと言われたら』より


そして迎えた当日。クリニックの待合室の椅子に座り、ただ一人で娘の施術を待つ彩。ソワソワする気持ちのなか、ふとスマホを開き、ひかりの小さい頃の写真を眺めていました。

『娘に整形したいと言われたら』より

絵のコンテストで賞をもらって、誇らしげに笑う顔。おめかしをして、恥ずかしそうにはにかむ入学式。そして、生まれたばかりのあどけない寝顔……。愛おしい記憶の数々がよみがえり、彩の目から、堰を切ったように大粒の涙がポロポロと溢れだします。

『娘に整形したいと言われたら』より

「あなたはそのままでかわいい」
「世界で一番かわいいんだよ」

娘の苦しみを救いたい一心で、前向きに整形を応援すると決めたはずの彩でした。けれど、やっぱり心の奥底では、そのままの姿の娘が愛おしくてたまらなかったのです。まぶたの線がたった一本変わってしまうだけで、もうあの頃の娘には会えないような気がして、胸がちぎれそうなほどの寂しさに一人静かに震えていました。


「世界で一番かわいい」と伝えても子どもの心に届かない……親としての無力感


『娘に整形したいと言われたら』より

――彩がスマホの中の幼いひかりを見て「あなたはそのままでかわいい」と涙するシーンは、子を持つ親として深く共感しました。子どもが自分の手を離れ、親の思い通りにならない選択(整形など)をしようとするとき、親は我が子とどう向き合い、何を心の拠り所にすべきだと思われますか? あのシーンに込めた、子を持つ親御さんたちへの想いを教えてください。

うみの韻花さん:あそこは、親としての無力感と無条件の愛が交差するシーンです。「私の目にはこんなに可愛く映っているのに、どうしてこの子自身には伝わらないのだろう」という切なさですね。どれだけ親が、「世界で一番かわいい」と言っても、子どもに伝わらないことがあります。子どもの外見の自己評価が他者軸になっているので、そのような現象が起こるのだと思います。

子を持つ親御さんには、子どもが親の理解を超えた選択をしたとき、コントロールしようとするのではなく、「あなたはあなたのままで価値がある」というメッセージを根底で伝え続けたいです。そして、それでも変わろうとする子どもの手を絶対に離さないでほしい、という祈りのような想いを込めました。


他人のためではなく「自分が自分を好きでいるため」に選択するということ


『娘に整形したいと言われたら』より

――容姿への執着に心が呑まれてしまわないために、また、自分を見失わずに美容医療と健康的に付き合うためには、どんなことが必要だと思われますか?

うみの韻花さん:「誰かのために」ではなく「自分のために」選択することです。私自身、900万円ほどのお金を美容医療にかけてきました。最初は、誰かに「ブス」などと外見を貶されることが原因で始めたことですが、今は他人の評価を上げるためではなく「自分が自分を好きでいるため」になりつつあります。

他者基準でメスを入れると、他人の評価が変わるたびに自分をアップデートし続けなければならなくなります。自分の人生の主導権を、見た目や他人に明け渡さない強さを持つことが大切だと思います。


当事者だからこそ描けた整形の「光と影」


『娘に整形したいと言われたら』より

――うみのさんご自身の「整形当事者としての体験やその時の心理」は、今回のひかりというキャラクター、あるいはそれを見守る母親・彩の描写にどのように投影されているのでしょうか? ご自身の経験があったからこそ、リアルに描けた部分があれば教えてください。

うみの韻花さん:過去作『14歳で整形した私』にも描きましたが、14歳の時の整形は、私のルーツでもあり、その後の人生を大きく決定づけました。美容外科医である父から手術を受けたという特殊な状況でしたが、あの時の「顔が変わることで世界の見え方が一変する感覚」や、その一方で「顔を変えても解決しない根深い虚無感」は、ひかりのキャラクターに深く投影されています。

また、カウンセリングのリアルな空気感や、ダウンタイム中の精神的な不安定さ、当日契約すれば安くなると言われて受けた施術で鼻の整形に失敗した経験など、綺麗事ではない部分を当事者だからこそ解像度高く描けたと思っています。

* * *

ルッキズムという底なしの沼で戦う子どもを前に、親ができることは正論で縛ることではなく、「どんなあなたでも価値がある」と手を握り続けること。うみのさんの言葉には、傷つきながらも前を向いて生きてきた当事者だからこその、深く優しい強さが宿っています。


取材・文=宇都宮薫

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