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窓から女性が入ってきて、2階に棲みついている?霊能力に目覚めた義母?!/子育てとばして介護かよ(4)

話を聞けば聞くほど、様子がおかしいのは義母なのだが、さすがにそんなツッコミを入れる勇気はない。
「それは……困っちゃいますね。……ところで、おとうさんに電話代わってもらってもいいですか」
冷静に考えると、けっこう失礼なことを言っているのだが、義母は気にする様子もなく、「おとうさまともお話ししたいわよね。ウフフ」と義父に代わってくれた。
「女ドロボウね。僕もずいぶん困っていますよ。盗まれたものはまず家内のカーディガン、医者にもらった薬、あと通帳や現金もなくなっています」
「なるほど……」
「ああいう輩は、いったいどういう教育をされているのか、嘆かわしいことです。どうも家内のものばかり狙うのがまた、にくらしいですな」
「あの……おとうさんは、その女の人を見たことがありますか?」
最初に「2階の女性」の話を聞いてから、ずっと疑問に感じていたことを思い切って聞いてみた。すると、義父の答えは「一度もありません」だった。やっぱり!
「ズル賢いタチのようで、人の気配がするとサッと隠れる……と、家内は言ってます。姿を現してくれれば、こちらとしても対応のしようがあるんだが、僕の前には出てこない。そこがどうにも厄介なんですな。だいたい盗難届を出したときに警察が真剣に対応してくれれば、こんなことで悩まずにすんだものを……」
義父は、義母の訴えをそのまま事実として受け止めているらしい様子だった。そして、ひたすら「空き巣騒ぎの際に駆けつけた警察官の対応」への怒りを募らせていた。
「どうも我々を認知症だと決めつけていたフシがある。まったくもってけしからんことです!」
義父の思い出し怒りは止まらず、「2階の女性」についてくわしく質問できる雰囲気ではない。「なるほど」「そうですか」「大変でしたね」を繰り返すうちに気づいた。これってもしかしてチャンスなのでは?
「おとうさん! もの忘れ外来、受診してみませんか」
「……それは認知症の検査をするということですか」
電話の向こうからムッとした空気が伝わってくる。でも、ここまでは予想通りだ。
「一度きちんと検査しておけば、この間の警察官みたいな失礼な人に出くわしたときの自衛策になると思うんです。医師からの『認知症ではない』というお墨付きがあれば、さすがに相手もいい加減な対応はできないんじゃないかなって」
「ほう。それは一理ありますな」
義父が関心を示した。電話の向こうの張りつめた空気もゆるんでいく。
「受診するとしたら、どこかおすすめの病院はありますか?」
「なるべく行きやすいところがいいですよね。探してみましょうか」
「認知症ではないという証明書をもらえたりするんでしょうかね」
「それも一緒に調べてみますね」
インターネットで検索すると、実家からあまり離れていない場所にある総合病院に、もの忘れ外来が併設されていた。
著=島影真奈美、マンガ・イラスト=川/『子育てとばして介護かよ』(KADOKAWA)
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