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義父母はすでに、地域の「見守り対象」だった。地域包括の面談で知らされた事実/子育てとばして介護かよ(8)

「じつは半年ぐらい前から訪問させていただいておりました」
地域包括での面談が始まったとき、まず最初にそう告げられた。義父母はすでに、地域の〝見守り対象〞だったという。
きっかけは、盗難騒ぎだった。義父が怠慢だと憤慨していた警察官は、すみやかに地域包括に連絡を入れていた。それ以降、地域包括の看護師、保健師といった専門職の方々が定期訪問もしてくれていた。
義母が「女ドロボウが薬や洋服を盗んでいく」と訴えていることも地域包括はしっかり把握していた。
これまで訪問するなかで、それとなく介護保険の利用を義父母に勧めてくれていたともいう。
しかし、義父母は頑として首を縦に振らなかったらしい。
「わたくしたちはまだ困っておりませんので、もっと困っているお年寄りを助けてあげてください」
「子どもたちは皆、仕事があり忙しいので迷惑をかけたくない。絶対電話をしないでください」
そんなふうに繰り返し断られたという。
「ご本人たちがそうおっしゃるので、わたしたちとしてもそれ以上の介入が難しくて……。ご家族さまからご連絡をいただけて本当に良かったです。本当にありがとうございます」
家族が見過ごしていた義父母の異変を地域の公的機関は把握していたのだ。そのことにお礼を言い、お互いの知っている情報をすり合わせ、次の対応策を相談する。
訪問介護(ホームヘルプ)などの介護保険によるサービスを利用するには、まず要介護認定を受ける必要がある。その申請のためには、主治医を決めなくてはいけない。できれば、認知症だという診断が確定しているのが望ましい。
……ってどうやって、それ実現するの? 「自分たちはまだまだ大丈夫!」と信じて疑っていない親に、どう話を持っていけばいいのか。
途方に暮れるわたしの横で、義姉は「やっぱりヘルパーを入れたほうがいいですよね!」と熱く主張していた。
看護師さんたちは「そうですねえ……」と、やさしくあいづちを打ちながら、具体的な手続きの話に戻そうとしていた。介護の窓口になる「キーパーソン」を決める必要があるという。でも、義姉のマシンガントークは止まらない。
「そういえば、民生委員の方に訪問してもらったりできないんですか? あのあたりは町内会がしっかりしていると思うんですけど。町内会長は替わっていなければ、通りの向こうにある大きな家の……そうそう、今日って父の誕生日なんですよね。実家には寄りませんけど」
どんどん話がズレていき、収拾がつかない。どうしよう……。
面談中には結局、キーパーソンを決めることができなかった。
「なんかいろいろ大変なことになりそうだね。これからどうしたらいいのかしら」
地域包括から最寄り駅に向かう道すがら、義姉はしきりに不安がっていた。わたしは心底疲れ果てていた。そして、つい言ってしまったのだ。
「手続きとか引き受けましょうか。平日動けますから」
「本当に? それは助かるわ。仕事をそうそう休むわけにもいかないから」
口にしてから気づいた。夫に相談もしないまま、「キーパーソンになる!」と宣言してしまったのだ。
著=島影真奈美、マンガ・イラスト=川/『子育てとばして介護かよ』(KADOKAWA)
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