浮気を繰り返す夫との全面対決。『マタしてもクロでした』の著者・うえみあゆみさんインタビュー

試行錯誤した等身大の姿を見せたいという思いから描き始めた“マタクロ”
――『カマをかけたらクロでした』の続編となる『マタしてもクロでした』を描こうと思ったきっかけを教えてください。
「隠しようのない事実を息子が知ってしまったというのが大きいですね。離婚するにしろ、しないにしろ、結果がどうなったか、子どもたちのために母はこんなふうに悩んで、考えて、葛藤して、結果としてこうなったよ、というのを残しておきたいな、と思いました。大人になったとき、親のことを理解する足掛かりになるんじゃないかな、と」
――前作の『カマをかけたらクロでした』のときは「子どもがいなければ本にしようとは思わなかった。少なくとも子どもたちに将来『なるほど、ママ、頑張ったじゃん』と言ってもらえる程度のことは残したい」とおしゃっていました。
「そのときと全く同じです。私は、親の神格化というか、親ってこうだよね、と決めてしまうことがすごく嫌で。親だって人間ですから、たくさん考えたりします。きれいごとばかりではなく、いろいろ悩んで失敗もして試行錯誤した親の姿を見せられるといいなと思いました」


――前作は、今すぐ離婚するという結論を出さないことを決めたところで終わっています。その後、本作までの間の生活、ご夫婦の関係はいかがでしたか?
「夫は週に2、3回帰って来て、その時はご飯も作って出して…という生活で、洗濯も夫の分まで普通にしていました。本人はバレていないと思っていることにも気づいていましたが、そこはもう自分の頭の中では考えないように決めていて、疑う案件にもしないというか。夫が『仕事が忙しい』と言っていたのは本当なのか、うちに帰ってこないときは誰といるのか、疑いようはいくらでもありましたが、本当のところは聞いていないのでわかりません。私が勘ぐったり詮索したりしなければ、私や子どもたちは平和に暮らせるという結論に至って、夫の浮気は不問にし続けていました」


それはそれは嫌いだった夫と今も生活。「愛」なのかどうかはもうわからない
――そんな夫婦生活は、なかなか周囲から理解されなかったりも?
「家事に関してはもう考えない。何にも考えず、すごく機械的にやっている感じです。感情が入ると、何にもしたくなくなっちゃいますから。
嫌でしたよ、もちろん。『うちでご飯食べるなよ』とか『トイレはコンビニで借りればいいじゃん』と思っていました」
――すごく壮大な愛のようにも見えるんですよね。
「よくそう言われるんですけど、それが愛なのかどうかも、もうよくわからないですね。それはもう、見る人が見て、それぞれ思っていただければいいんじゃないかな。自分は当事者すぎて、もうわからないんです」
――「もう顔も見たくない」「生理的にムリ!」とはなりませんか?
「いや、なってましたよ(笑)。今はそんなに思わないですけど、それはそれは夫が嫌いでした。人のことをこんなに憎むことができるんだと思うくらい、自分の人生の中でMAX嫌いなやつでした。
でも、そういうのは一時的な感情だってわかっているんだと思います。そこに負けたら、『こんな奴と一緒にいるくらいなら、離婚して苦労したほうがまだマシ!』と、おそらくなっていたでしょうね。でも、その自分の感情に判断を委ねてしまうと、結果失敗するな、と思っていました。今までなんとかやってきたのに、『結局、一時の感情か!』となると、それまでの自分に言い訳が立たないと思って我慢していましたね」
真実を知ってしまった子どものため、8年ぶりに夫と戦うことを決意!
――そうやって娘さんと息子さんと実質家族3人で平和に暮らす中、息子さんに「パパ、浮気しているよ。僕、見たんだ」と言われてしまいましたね。
「夫の行動パターンで、私の中では確実に彼女がいるってわかっていたんですけど、疑わないでいたんですよね。話し合いをしても、謝罪させても『どうせ変わんないよな』と思っていたので。
でも、まだ小学生の子どもが知ってしまったときの精神的ダメージの大きさを徐々に感じ始めたんです。最初は割と本人も『あいつさー、彼女いるみたいだよ』『懲りないねー』とか、娘と3人で笑い話というかネタみたいにしていたんですけど、学校で吐いてしまったり、ちょっと様子がおかしいなと気付いて。これは笑いごとじゃないな、これは深刻に考えなくてはいけないな、と思い始めました。息子が初めて父親の真実にふれてしまったことの精神的ダメージを考えると、怖かったです」


――そうして、8年ぶりにご主人の浮気と戦う、つまり、離婚の話を進めることに。
「『戦う』というより、戦わざるを得なかったという感じです。子どもが知ってしまった以上、ごまかすことはしたくなかった。小学生なのでぎりぎりごまかせる年齢ではありましたが、今回はそれをしないほうがいいな、と思って。離婚するにしないにしろ、嘘はなしでやっていこうと思ったんです。

『私と彼女、どっちが好きなのよ!?』といった愛憎劇みたいものはほぼゼロで、相手を正したりというのではなく、人間と人間が顔突き合わせて、嫌なところも見ながら戦う覚悟がないとダメだな、と思いました」
――ご主人の反応はいかがでしたか?
「具体的に離婚の話をしたいと言ったら、夫は『今までどおり普通に家族でいたい』と言ったんですよね。でも、私は夫の様子を見ながら、離婚後どれだけの要求に応えられるか、その責任を感じているのか見極めていました。結局、朝まで話し合いは続いたんですが、折り合いはつかないままでした」

「リベンジ系のスッキリ漫画ではありません」と書籍のまえがきにも書いたうえみあゆみさん。
真っ向から夫婦の問題に向き合いながらも、「復縁か、離婚か」というわかりやすい結末には至らない一家の描写はリアルで、「夫婦とは何だろう?」「家族とは何だろう?」ということを改めて考えさせてくれます。
取材・文/岡田知子(BLOOM)
Information
東京生まれ。多摩美術大学グラフィック専攻卒業後、CMプランナーとして活躍。出産を機にイラストレーター、フリーのCMプランナーに転向。現在、ムスメとムスコのおかあさん兼イラストレーター&漫画家。
▶『マタしてもクロでした』 まとめ読みはこちら
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