日本で出会った本場のマリトッツォ!イタリア人のマッシさんが祖国の味を見つけたのは、あのコンビニでした(3)

noteで驚異の95万PVを記録した「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」が話題の日伊通訳者、マッシミリアーノ・スガイさん。
日本の伝統料理からB級グルメ、チェーン店、コンビニスイーツ、冷凍食品まで。イタリアのピエモンテからやってきたマッシさんが、日本で出会った美味しい食べ物について綴った書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』は、食の感動体験をまとめた愛情たっぷりのエッセイ集です。
この書籍から、今回は『日本で出会った本場のマリトッツォ』をご紹介します。マッシさんの感動と驚きに満ちたエッセイを読むと、私たちがいつも当たり前のように食べているあの料理が、何倍もおいしく感動的に感じられるはず!
※本作品はマッシミリアーノ・スガイ著の書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』から一部抜粋・編集しました。
日本で出会った本場のマリトッツォ

今や日本で「マリトッツォ」という名前を聞いたことがない人は、かなり少ないと言えるだろう。食べたことがある人も多いと思う。人気なだけあってパン屋さん、スーパー、コンビニ、和菓子屋さんなどさまざまな場所でマリトッツォが販売されている。
マリトッツォがイタリアのスイーツであることは間違いない。しかし、実はイタリアではあまり知られてないということをご存じだろうか。マリトッツォはローマ発祥でローマの名物だ。イタリア人全員が当たり前のように知っているわけではなく、ピエモンテで生まれ育った僕は、故郷では見たことも食べたこともなかった。僕がマリトッツォを初めて食べたのはローマでだった。
ある日、母親に「最近はマリトッツォを日本でも食べられる」と言ったら、「マリトッツォって何? 日本のお菓子?」と言われた。母親が知らなかったように、ローマ名物=イタリア全土で食べられるわけではない。マリトッツォがイタリア発祥ということを知らない日本在住の外国人(=イタリア人も含めて)は、「日本人が考えて作ったスイーツ」という感覚になるに違いない。
日本で初めてマリトッツォに出会った場所はコンビニだった。ローマでよく見る形と仕組みで、味は確かにすばらしくおいしかったが、本場ローマで食べた味とは違うように感じた。ローマ発祥のマリトッツォというより、完全に日本生まれのスイーツのような感覚だった。
あの出会いから味やトッピングだけではなく「〇〇トッツォ」など名前を変えて、さまざまな種類が出てきた。日本人がすばらしいと思うのは、このような新たな組み合わせを生む発想力だ。新しいマリトッツォを食べるたびに「おいしい! 日本はやっぱりすごい!」と思うと同時に、食感は意外と本場のものに近いけど、見た目や味はやっぱり日本人向けになっていると感じていた。イタリアではマリトッツォを食べられる地域は限られているのに、日本ではどこでも食べられるというギャップが面白くて、好きな形と味を選んで食べたいときに好きなだけ食べていた。「そろそろ本場のものを久しぶりに食べたい」という気持ちがあったけど、日本ではなかなか難しくて諦めていた。
ちょうどそんなときに、「ローソン」で涙が出るくらい感動的な出会いがあった。ある日、僕はローソンの広告をたまたま見た。出ていたのは「おやつコッペ リッチミルク」だった。まずその見た目にひかれた。厚みのあるコッペパンにフワッフワのクリームが挟まっていて、もう見た目だけで「絶対イケる!」という確信があった。頭の中に広がっていたのは、あの日、ローマで食べた絶品のマリトッツォ。
広告を見たその日に、気が付いたら足はローソンに向かっていた。入ってすぐデザートコーナーに向かった僕は、なかなか見つからないおやつコッペ リッチミルクを探しながら、ちょっと泣きそうになっていた。あんなにおいしそうなスイーツが、なぜこんなに探しているのに見つからないのか。
金沢市内のローソンを回って3軒目、少し諦めかけていた僕はお腹が減っていたのでいったんサンドイッチコーナーに向かった。とりあえず何か食べようと見ていたら、急に視界に探し求めていたかわいらしいフォルムのコッペパンが入ってきた! とうとう発見したのだ! 喜びのあまり膝の力が抜けそうだったのを必死に耐えて、ヨロヨロとレジへ向かった。
お店を出てすぐ横のベンチに座り感動を嚙み締めた。この瞬間がやってきた。ドキドキして泣きながらパクパク食べたおやつコッペ リッチミルクは、ひと言で言うと、完全に本場のマリトッツォ。甘みがなく少し塩気があるコッペパンと、濃厚なのに甘さ控えめで、どこかさっぱりしたフワッフワのクリームが口の中いっぱいに広がる。
見た目も味もワクワク感も、本場で食べたマリトッツォにそっくりだ! 今までマリトッツォの名が付いていたものは、実はマリトッツォに近くはなく、コッペパンという名の全く別物が完全なるマリトッツォだったのだ。
「日本とイタリアの共通点はマリトッツォにもあるのか?」と感心しながら食べ進める。パンにただホイップクリームを挟んだらマリトッツォになるわけではない。パンの切り方とクリームの量、そして食べるときの持ち方という大事なポイントを考えないと完全に別のスイーツになってしまう。
そのすべてのポイントを押さえたおやつコッペ リッチミルクは、食べても食べても飽きなくて、逆にもっと食べたくなる。こうして僕の感動的なマリトッツォとの出会いは幕を閉じたのだった。
今回食べたコッペパンはもしかしたら、マリトッツォ風の日本発祥スイーツかも? と思ったこともある。イタリアと日本は歴史も文化も全く違うのに、スイーツになると同じ国に見えるときがあって非常に面白い。ぜひ日本のすばらしいスイーツコッペパンをイタリア人にも食べてもらいたい。イタリア人も好きそうな味で人気になるはずだ。甘いものに目がないイタリア人(僕も含めて)にとって、炭水化物であるパンにクリームを挟んで出されたら我慢できるわけがない。「人を笑顔にするスイーツは“ゼロカロリー”だから問題ない」と自分に言い聞かせて、週に何回も食べた僕だった。
筆者プロフィール
マッシミリアーノ・スガイ
1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。 日本食が大好きな日伊通訳者&起業家。トリノ大学大学院文学部日本語学科修士課程修了。2007年に日本へ渡り、日本在住15年。現在は石川県金沢市に暮らす。食と日本への愛を語り倒すTwitterとnoteが話題を呼び、メディアにも多数取り上げられるなど注目を集める。noteの「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」は95万回以上読まれた。
著=マッシミリアーノ・スガイ、挿絵=東麻マユカ/『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)
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