大人の価値観が子どものチャンスを奪う? 本当の野球はもっと気軽で楽しい!

チャンネル登録者数67万人を超える日本最大の野球YouTubeチャンネル「トクサンTV」。そのメイン出演者が、トクサンさん&ライパチさんのコンビです。
近年はYouTubeだけでなく、テレビやラジオほかの出演も増え、野球教室での指導も多いふたり。そんな彼らがジュニア向け野球本を執筆! そしてその制作過程では、あらためて今、野球が置かれている状況に気づいたということです。
何かと話題になりがちな野球のことをふたりに聞いてみました!
「遊び」が野球を上手にしてくれる?
編集部:今回は野球をはじめる時期にあたるジュニア向けの本でしたね。ただし、野球を取り巻く環境も変わりました。
トクサン:まあ、僕たちは遊びで野球やってましたからねえ。
ライパチ:野球部に入るより前に、投げたり捕ったりして遊んでましたから。
トクサン:駆けまわって遊んだもんねえ。かくれんぼだけじゃなく、色鬼とか高鬼とか鬼ごっこにもバリエーションあった。あれ、なんだっけ? 缶蹴って、その間に逃げる……。
ライパチ:それを缶蹴りというんですよ(笑)
トクサン:そうそう、缶蹴り! そういうことがなくなって、遊びの中で身につける部分が少なくなっている。公園行っても子ども少ないもんね。
ライパチ:そこで野球部入って、いきなり「ノック捕れ」って言われてもね。できるわけない。
トクサン:だから、小学生のころなんかは、野球よりも遊びが大事だとあらためて思いましたね。そんな理由でドッジボールやバドミントンをしようと、この本の中にも入れたんです。

ライパチ:野球は捕って、投げて、打って、走るという複合的な動きをしますから、そういう遊びの中で、野球が上手になる土台が身についていくんですよ。
トクサン:だから、野球部の中でも、野球ばっかりやってないでバドミントンやればいいんだよ。プロもやってる練習方法なんだから、野球選手全般にいいトレーニングになる。
ライパチ:でも、そういう遊びが失われている。
トクサン:公園で球技ができないとか、そういう環境の問題もある。でも、それだけじゃない気がするなあ。SNSなんかでつながっているように見えて、回覧板さえめんどくさがる社会だもん。コミュニティを持たない文化ができてしまった。子どもが外に出る機会も減るよ。
ライパチ:スポーツ庁の調査でも、小学生の運動能力は下がる傾向が続いてますもんね。
トクサン:そういう運動が苦手な子が多い、という前提の中で、野球のスタートも考えるべきなんだよ。
ライパチ:ティー台の上にボールを置いて、それを打って野球のようにプレーする「ティーボール」なんかもありますからね。かんたんなところから野球の楽しさを知ってほしい。

大人の価値観が子どもの機会を奪う
編集部:でも、野球は厳しいとか、しんどいとか、そんな印象が強いのも現状です。
トクサン:野球は以前ほどでないけど、やっぱり国民的スポーツなんですよ。注目度が高い。そこで悪い部分が指摘されると、SNSなどで拡散し炎上してしまう。坊主とか、体罰とか、悪い部分が目についてしまうんです。
ライパチ:大谷翔平選手や佐々木朗希選手があれだけ話題になる。一度は野球をしたいと思う子も多いはずなんですけどね。
トクサン:でも、「野球やったら坊主だよ」とか「体罰怖いよ」などと言われる。変な意味でハードルが高く、それが子どものチャンスを奪ってしまう。
ライパチ:本来は子どもたちが遊びでやっていたもの。ハードルは低いはずなんです。
トクサン:結局、いつの時代も大人の価値観が決めちゃうんですよ。厳しい印象が残るのも、昔は厳しくすれば立派になるという価値観があったからです。
ライパチ:でも、別に立派にならなかったですよね(笑)。逆に、ゆるくすれば成長するわけでもないですし。
トクサン:現実的に野球で傷つく人はいる。そういう部分は変えていかなきゃならない。でも、実際はそれよりも圧倒的に多くの人が野球を楽しんでるんです。野球は老若男女で楽しめるもの。本来、しんどいスポーツじゃない。
ライパチ:社会の価値観も変わったんだし、もっと気軽に野球ができるようにしたいですよね。
トクサン:やりたいのにできない、というのは撲滅したいね。僕らは野球が好きで、本当の楽しさを知っているんだから、小さな声でもそれは伝えていきたいね。
ライパチ:僕たち、かなりまれな存在ですからね。NPB(日本野球機構)に顔出したかと思ったら、少年野球にも呼ばれる。草野球のプレーヤーで、先日は社会人野球の選手らと試合もしたし。
トクサン:少年野球で気づいたことをNPBの方に伝えたりね。そういうことはしていかないと。


もっと気軽に楽しんでいい
編集部:ただ、野球部に入ったら必死にならなきゃいけないような重苦しさがあります。ゆるいテニスサークルのような、ある種の軽薄さがあってもいい気がします。
トクサン:全員が甲子園をめざす、というのはいらないですよね。ただ、これは野球に限らず、高校スポーツ全体が持つ問題かもしれない。
ライパチ:テニスのサークルみたいに、楽しいから集まって、楽しそうにやっていいんですよ。野球サークルなのにサッカーやってもいい(笑)
トクサン:ほかのスポーツをやるのを許さない文化があるね。野球やりながら、陸上やバスケやってもいいんだよ。でも、「その子がいないと負ける」という考え方をしてしまう。だから、別の競技をやることを許さない。
ライパチ:チームスポーツのよくない面ですね。
トクサン:野球とバスケ掛け持ちして、「バスケのおかげでアジリティ(敏捷性)上がって、急速アップしました!」みたいな子が出てくればいいね。で、メジャーリーグとか行ってほしい。もう、誰も文句言えない(笑)
ライパチ:部とクラブの兼務禁止とか、部の掛け持ちイカンとか、そんな時代じゃないですよね。
ルールは変わっていい。
トクサン:指導の面でもそう。「失敗するのがダメ」という考えは100%間違ってる。それを大人が理解しないと。
ライパチ:プレーで給料もらっているプロはシビアですが、アマチュアは特にそうですよ。
トクサン:僕らだってミスばかりです。でも、そこで「どうしてミスった?」ということを考え、「次どうする?」に至ることが大事なんですよ。ミスしなきゃ、その過程に習熟できない。
ライパチ:特に子どもはていねいにやるべきですよね。
トクサン:「あの子はできるのに」とか比較するのもね、もうダメ。あの子はあの子、この子はこの子。それが個性。しかも、子どもはミスして怒られてんのに、監督は誰も怒らないもんな。あれ理不尽だよな。
ライパチ:「未習熟の子にサイン出したのアンタだろ!」と怒りたいですよ(笑)
トクサン:ライパチなんか、ヒットエンドランのサインに怒るもんな。「できないですよ!」って(笑)
ライパチ:それを補い合うのがチームなんですよ! 本のマンガでも、その大切さを描いているでしょ(怒)

【プロフィール】
トクサン:1985年3月18日、東京都出身。本名は徳田正憲。SWBC JAPAN軟式日本代表。帝京高校で甲子園出場、創価大学では主将として全国ベスト4、リーグ首位打者、盗塁王に輝く。日本プロ野球2球団にリストアップされた実績も持つ。2016年8月にYouTubeにて「トクサンTV」をスタートさせ、チャンネル登録数66万人、再生回数6億4000万回突破、日本一の野球チャンネルとなっている。50m5秒台の俊足、ホームランを連発するパンチ力も持ち、守備も未だプロ級の野球ユーチューバー。
ライパチ:新潟県出身。右投右打。高槻北高校、朝霞高校で高校球児。「トクサンTV」の元となる「ライパチボーイTV」のメイン出演者。「トクサンTV」となった後も、トクサンの相方的存在として動画を盛り上げる。普通の高校球児のまま野球を引退したが、草野球チームでトクサンと出会う。現在、野球選手としても、急成長中。
取材・文=新宮 聡(企画室ノーチラス)
写真=高橋賢勇
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