「発泡スチロールで遊びたいけど…やめとく」子どもの探究心を削いでしまう大人のひと言/大人になってもできないことだらけです(2)

うまくいかなくても、一緒に笑えたら、それだけで意味があるよね。
学童の支援員(放課後児童支援員)である保育士・きしもとたかひろさんが、日々多くの子どもたちと関わる中で感じた「できる」「できない」の先にある大切なこと。
「できないこと」に目がいきやすい、子どもたちとの生活。口うるさく注意するたびに、できなくて落ち込む子どもの姿。本当はお互い笑顔で過ごしていたいのに…。ふと思い返せば、自分自身が「できない自分」を「ダメな自分」と思い込み、それを子どもにも当てはめてしまっていた。
日々葛藤を続けながら「どうしたらうまくできるか?」ではなく「うまくいかなくてもええんちゃう?」「子どもも大人もしんどくない今を考える」というきしもとさんの視点が、SNSを中心に多くの共感を集めています。
子育てにまつわる身近な悩みや、子どもとの関わりで体験した温かいエピソードの数々。いまあなたが抱えている「しんどさ」をゆっくり手放すためのきっかけが見つかるかもしれません。
※本記事はきしもと たかひろ著の書籍『大人になってもできないことだらけです』から一部抜粋・編集しました。

積み重ねて 塗り重ねて
僕は、大人なのにできないことがたくさんある。毎日のように忘れ物はするし、片付けも得意ではない。
週末に部屋を掃除するんだけれど、掃除し終わったときの清々しい気持ちで「この状態を保つぞ!」と決意しても、次の日には机の上がごちゃごちゃになっているし、気づいたらエアコンのリモコンがどこかにいっている。
次の週末には魔法でもかけたのかというくらい見事に掃除する前の状態に戻っている。せっかくなら片付くほうの魔法をかけてほしい。
どうせ散らかるのなら片付けなくてもいいやと思ってしまいそうになるけれど、片付けなければその状態のままかといえばそうではなく、もっと散らかるんだから、やはり掃除しないわけにはいかない。
掃除した直後には「全部終わった!」と思っても、それは終わりではなく始まり。生活ってそういったことで溢れているなあと感じる。
どれだけ文明が発達しようとも、僕たちはいっぺんに3日分食べてその後なにも口にしないで3日過ごすなんてことはできないし、1ヶ月分寝だめして1ヶ月起きっぱなしで活動することもできない。
「これだけできたらクリア! あとはもう眠らず食べずでも生きていけます!」とはならず、死ぬまで毎日、食べて排泄して寝て起きてまた食べてを繰り返す。
誰もが知っている当たり前のことを僕が発見したかのように偉そうに言ってみたんだけれど、最近ふと思うのだ。なんて面倒くさいんだろうって。
なぜだか僕たちはどこかにゴールがあると思っていて、そのありもしないゴールを目指しているような気がしてるけれど、ほんとはただ日々の繰り返しなんじゃないかって。
あるとき、子どもが発泡スチロールを工作に使いたいと言ってきた。細かく砕いて雪みたいにするのだと。僕は何の気なしに「あとでちゃんと片付けるんやで」と言った。すると「ならいいや」と遊びをやめてしまった。
「しまった!」と思った。
その子は発泡スチロールが雪のようになることに興味を持ち、遊びを深めようとした。にもかかわらず、僕はその姿よりもその先にある「片付け」を指摘した。そのせいでその子は「片付けをしたくないから遊ばない」という選択をしたのだ。
一見すると見通しを持っているように見えるけど、それを合理的とは言わない。排便をしたくないから食べない、みたいなおかしな話だ。僕は、その子の活動をひとつ奪ってしまったのだ。
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