子どもも大人もしんどくないように。なんでもない毎日にはなまるを/大人になってもできないことだらけです(1)

なんでもない毎日にはなまるを

子どもの思いを尊重。のびのびとした保育をするはずだったのに/怒りたくて怒ってるわけちゃうのになぁ
『大人になってもできないことだらけです』1話【全6話】


うまくいかなくても、一緒に笑えたら、それだけで意味があるよね。
学童の支援員(放課後児童支援員)である保育士・きしもとたかひろさんが、日々多くの子どもたちと関わる中で感じた「できる」「できない」の先にある大切なこと。

「できないこと」に目がいきやすい、子どもたちとの生活。口うるさく注意するたびに、できなくて落ち込む子どもの姿。本当はお互い笑顔で過ごしていたいのに…。ふと思い返せば、自分自身が「できない自分」を「ダメな自分」と思い込み、それを子どもにも当てはめてしまっていた。
日々葛藤を続けながら「どうしたらうまくできるか?」ではなく「うまくいかなくてもええんちゃう?」「子どもも大人もしんどくない今を考える」というきしもとさんの視点が、SNSを中心に多くの共感を集めています。

子育てにまつわる身近な悩みや、子どもとの関わりで体験した温かいエピソードの数々。いまあなたが抱えている「しんどさ」をゆっくり手放すためのきっかけが見つかるかもしれません。

※本記事はきしもと たかひろ著の書籍『大人になってもできないことだらけです』から一部抜粋・編集しました。


「なんでもない毎日にはなまるを」


「ペンの持ち方、私と同じやー」

一緒に絵を描いていた小学生から声をかけられた。その子の手元を見ると、親指がペンには沿わずにクロスしている。なるほど、不格好なその持ち方は僕と同じだった。

子どもの頃によく「鉛筆の持ち方」を指摘されたのだが矯正されず、大人になってからは人前で字を書くときだけ「正確な持ち方」をするようにしている。

正確な持ち方は疲れにくいらしいけれど、僕にとっては不自然で、気を抜くと思いもしない方向にペンが動くため神経を使って書く分、疲れた。プルプル震える手では思ったような絵は描けないので、誰にも見られていないときは自然と自分の持ち方を続けていた。

声をかけてくれたその子も同じような経験をしているのか、「一緒やなあ」と返すと「うん、学校では先生に怒られんねん~」と腹立たしげに話してくれた。「わかるわ、僕も子どもの頃よく怒られたけど直らんかった」と共感すると「大人のくせに~」と笑っていた。

その屈託のなさが深刻さを感じさせず、それが逆に、このまま疑いなく矯正されて気づかぬうちに好きな絵が描けなくなるんじゃないか、と不安にさせた。僕は「肯定してあげればよかった」と後悔した。

学校の先生や保護者の方からは嫌がられるかもしれないけれど、"大人のくせに"同じ持ち方をしている僕だけでも「君がその持ち方で描いたその絵が、君の絵やで」と伝えればよかったな、と。

ペンの持ち方、私と同じや


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