子どもも大人もしんどくないように。なんでもない毎日にはなまるを/大人になってもできないことだらけです(1)

「とめはね」よりも大切にしたいこと


本来「よりよくするために」と決められたものが、逆に足かせとなってパフォーマンスが落ちるということはよくある。

鉛筆の持ち方とあわせて、「とめはね」についても厳しく注意された。漢字の書き取りの際に正確に「はらい」や「はね」ができていないと丸をもらえなかった。厳しく指導された結果育ったのは、正確な字を書く力ではなく、正確に書けていない人に指摘する力のほうだった。

学童に来ている子どもの宿題を覗き込んで、親切心で「とめはね」を指摘しては正しいことをした気分になっていた。

そんなある日、そのなんの役にも立たない肥大化した正義感が、いともあっさりと打ち砕かれる情報を仕入れる。

文化庁『常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)』によれば、漢字の字体・字形については、その文字特有の骨組みが読み取れるのであれば、誤りとはしない、という方針だそうだ。しかも、僕が生まれる前から。いや、昭和24年からだから両親が生まれる前からだ。衝撃の事実だ。

あれだけ「ゆるぎない正義ですよ」と厳格な顔をして僕の中に存在していたものが、実は「細かいことは気にしなさんな、読めたらええねんで」というゆるいスタンスだったのだ。よくもまあ偉そうにしていたものだ。

今まで僕が信じてきたものはなんだったんだ……。という気持ちがなくもないが、僕はそれを知って少し気持ちが軽くなったのを覚えている。きれいに書けないときには気負わずに「読めたらええねん」と思って書けばいいのだと。

逆に、余裕があるときには「読みやすいように」と丁寧に書くことを意識できるようになった。苦手な文章を書くときも、誤字があっても文脈で理解してもらえるかも、と思えるようにもなった。気持ちが軽くなって結果的にパフォーマンスは上がる。

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