37歳で大腸がんと診断。『痔だと思ったら大腸がんステージ4でした』著者に聞いた「絶望が決意に変わった瞬間」

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私は迷わず

37歳で大腸がんステージ4と診断された漫画家のくぐりさん。がんが発覚したのは、2020年3月にうけた内視鏡検査がきっかけでした。

その後、くぐりさんは約2年のつらい治療をのりこえ、その過程をまとめたコミックエッセイ「痔だと思ったら大腸がんステージ4でした 標準治療を旅と漫画で乗り越えてなんとか経過観察になるまで」が今年1月に発売されました。

くぐりさんに、絶望を感じていた宣告当初からのことを振り返ってお話しを伺いました。

【あらすじ】生きるために耐え抜いた抗がん剤入院

内視鏡検査の最中にモニターに映されたくぐりさんの大腸内は、「得体の知れない何か」で埋め尽くされていました。それから数日後、検査結果を聞くことに。

大腸がんです

大腸にあった腫瘍は、やはりがんでした…。大腸がんであると宣告されてしまったのです。その後、さらに体中の検査をすることに。

2日間かけて、CTC検査(下剤を使用した後、肛門から炭酸ガスを注入し大腸を膨らませCTを撮影する検査)をはじめとして血液検査や超音波検査、MRI検査など、たくさんの検査をしたそうです。

その結果分かったのは「肺に多発転移している」という辛い事実でした。

大腸がんステージ4

え? え?

前日に家族から聞いてはいたものの、「がんステージ4」「手術不可」「化学療法のみ」といった医師の言葉にショックを受け、涙を流すくぐりさん。

コンバージョン手術

しかしその後医師から、強い抗がん剤が効いてがんが少なくなれば手術できるかもしれない、と告げられ、生きるために抗がん剤治療を受けると決意します。

緩和ケア?

さらにその後に出会った緩和ケアチームの女性にも話を聞いてもらうことでスッキリしたくぐりさんは、いよいよ抗がん剤投与のための入院をすることに。

入院

止まらない

いよいよ始まった抗がん剤治療。薬剤によっては吐き気などの副作用があり、辛い時間を過ごすこともあったといいます。

ほっとできる時間

抗がん剤入院が終わった

くぐりさんは、土日の家族との面会時間をはげみに抗がん剤入院を乗り切ったのでした。


漫画家くぐりさんインタビュー

――主治医からのがん告知の際、泣いてしまったくぐりさんに驚いた医師に対し「先生驚かせてごめんね」と内心気遣うくぐりさんが印象的でした。告知の際の心境はどのようなものでしたか?

くぐりさん
「大腸がんが発覚してショックだったのですが、まさか肺に17個も多発転移しており、手術不可のステージ4だとは思ってもいなかったので、事前に家族から知らされていたにもかかわらず涙があふれ出てしまいました。主治医は家族から事前告知されていなかったのだろうかと慌てていました。驚かせてしまって申し訳なかったなと思います」

生きるための決意


――告知前夜は眠れなかったり、告知直前は小児科の子どもの鳴き声につられて泣くほど不安定だったそうですね。その状態から、告知を受けて生きるために抗がん剤をすると決意するまでには劇的な心境の変化があったように思います。その変化の理由は何だったのでしょうか?

くぐりさん
「病の恐怖にとらわれていたので、自分と同じステージ4の人や、ステージ4からコンバージョン手術などが可能になり寛解(かんかい)に至った人のエッセイ本などを集めて、自分もそうなるようにイメージして気持ちを落ち着けようとしていました。そして標準治療がどんどん発展していっているというのを知り、自分は標準治療を信じてやっていこうと思っていました。抗がん剤が辛くても自分からは無理だとは絶対言わないでおこうと思っていました」

――告知直後から治療中を通して、何度か緩和ケアチームのお二人が登場されますね。お二人とのやりとりで、一番印象に残っていることはどんなことでしょうか?

くぐりさん
「緩和ケアのお二人には死ぬことへの恐怖や副作用の辛さを話していました。『死にたくないんです』と泣きながら正直な気持ちを言葉にしていました。黙って聞いてくれて、気持ちに寄り添ってもらい助かりました。その中でも、経過観察になった時に会いに来てくれて、『奇跡的な流れでここまでこれましたね、一つでも欠けていたら手術できませんでしたね』と祝いの言葉をかけてくれたことが印象に残っています」

過酷な抗がん剤入院


――抗がん剤投与のための入院の様子が詳細に描かれていましたね。すべてお辛かったと思いますが、なかでも、いちばん大変だったのはどんなことでしょうか?

くぐりさん
「身体的に一番辛かったタイミングは、抗がん剤投与中でした。特にレボホリナートとエルプラットを同時点滴する2時間は地獄でした。体中から汗、涙、よだれ、鼻水が噴き出し目の下の痙攣などもあり目を開けていることもできず吐き気で体を動かすこともできませんでした。なのでスマホはもちろん触れず、ベッドの上で耐えるしかありませんでした」


    *      *      *

現在は無治療経過観察の状態となり、漫画家として活躍中のくぐりさん。本作では過酷な体験だったがんという病気の経過を、時系列で分かりやすく書かれています。
がんは、だれもがなるかもしれない病気で、他人事ではありません。どんなに仕事や家事が忙しくても、体調に変化があった時は、早めに病院で診察を受けたいですね。

取材・文=山上由利子

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