登場人物紹介
新名彩(にいなさやか)さん
しっかりもので節約の意識も高い。高校時代に生徒会長をしていた。NISAやiDeCoも興味はあるが、慎重過ぎて踏み出せない。新卒で入った会社からの転職を検討している32歳。趣味は推し活。
井出好海(いでこのみ)さん
楽天的でマイペースだが、時折ズバッと本質をついてくる。投資が気になるものの、仕事で疲れてつい後回しにしがち。2歳下で真面目な性格の夫がいる29歳。たまに行くカフェでのんびり過ごすのが癒しの時間。
fumicoさん
CFP(R)資格を持つファイナンシャルプランナー。NISAとiDeCoをきっかけに、多くの人に「人生とお金」について考えてほしいと願っている。モットーは「知識を増やせば人生の選択肢が増える」。最近エクササイズにハマっている。
「お金を増やすこと」はゴールではない
目的・目標・手段って?
→投資においては?
例えば…
【目的】子どもの大学までの教育資金を準備する
→そのための【目標】10年以内に〇〇万円貯める<具体的に!>
→そのための【手段】NISA口座で月〇万円の積立投資をする
fumicoさん:投資は、お金を増やし、自分の理想とする人生を送るための“ツール”なんです!
新名さん:人生に役立てるために投資をするんだね!
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ここも知りたい!<しっかり意識しておこう!>
「メンタルアカウンティング」って何?
→無意識のうちにお金を色分けしてしまうこと。
投資で得たお金も、お給料として得たお金も価値は全く同じ!
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fumicoさん:新名さんと井出さんが投資をする目的って何ですか?
井出さん:えっ!? それは考えたこともなかったな……。お金はあればあるほどいいな~と思って。
fumicoさん:実は、「目的」はかなり重要なんです。お金を貯める時に限らず、本来は【目的(ゴール)→目標→手段(ツール)】の順で考えますが、「とにかく投資を始めたい」と「手段」からスタートする人も多いんです。
新名さん:目的と目標って何が違うんですか?
fumicoさん:例えば、英語の例で考えてみましょう。「英語を話せるようになりたい!」と思うとして、それが「グローバルに活躍するため」であれば、これが「目的」といえます。
そのために「毎年TOEICテストを受け、800点以上を取る」といった「目標」を立てることになりますよね。
井出さん:それ、私です!海外転勤があるかもしれないから、英字ニュースを読んだり、オンラインのレッスンを受けたりしてます。
fumicoさん:それが目標達成のための「手段」ですね。「手段」を通して「目標」達成を積み重ねることで、「目的」にたどり着けます。
新名さん:「とりあえずTOEIC受けてみよう」と思うよりは、目的がはっきりしてる分、がんばれそう。
fumicoさん:投資も同じで、自分の人生にどのように役立てるかが大事なんです。「何となく投資を始めてみようかな」よりも、「リモートワークもできる広さの住宅を購入する」「子ども2人の大学までの教育資金を貯める」など「目的」をハッキリさせて、
・5年後までに住宅資金を〇〇万円
・子どもの教育資金を10年以内に△△万円
・老後のために30年間で☆☆万円
など具体的な「目標」に落とし込む。
井出さん:夢はBigに!ということで、大きな目標の方がいいですか?
fumicoさん:大きすぎると達成までに時間が掛かりますから、まずは数年以内に達成できそうなものや、小さな目標をいくつか立てるのもいいですね。
新名さん:つい「投資をすること」がゴールだと思ってしまいそうになるけど。
fumicoさん:本来、投資というのはお金を増やし、自分の理想とする人生を送るための“ツール”。「投資をすること」がゴールになってしまうと、「始めたこと」で満足してしまいます。
井出さん:でも口座だけ開いて力尽きる人も結構多い気がする!
fumicoさん:実はNISAでも、「口座を開いたものの、1年間で1度もNISA口座での購入をしていない人」も結構多いんですよ。
新名さん:口座は開いたものの、買いたい投資信託や株式がなかったのかも?
fumicoさん:もちろんそういうケースもありますが、「口座を開いて満足してしまった」という方もおられるかもしれません。スタート地点で立ち止まってしまう人も多いので、気を付けるようにしてくださいね。
井出さん:ちょっといいですか?投資で増えたお金を、住宅資金とか、子どもの教育資金に使うのって何かちょっと違うなって……。
fumicoさん:家や教育費は、自分で働いて得たお給料で、ということですか?
新名さん:ちょっと分かる!投資をしてるって周りにも言いにくいし、前におばあちゃんから「投資でお金を増やそうなんて考えちゃだめだよ!コツコツ働いて、銀行に預けるのが一番だよ!」って言われちゃった。
fumicoさん:日本では、まだまだ投資が一般的とは言えませんから、話題にしづらい面はあるかもしれませんね。それに、長く働けばお給料が増え、銀行に預ければお金が増えた時代を生きた方は、投資に対して良い印象を持ちづらいのも事実です。
新名さん:株価が急落したニュースとかも大きく報じられるから、「怖い」っていうイメージの方が記憶に残りやすいしね。
fumicoさん:ただ、昔と今では状況が違います。それに、お給料で得たお金と投資で増えたお金を区別してしまうのは、「メンタルアカウンティング(心の会計)」という心の“くせ”。手に入れた手段によって、お金を心の中で色分けしているんですね。
井出さん:私の場合、投資で儲かったら「棚からぼたもち」って感じでパーッと使っちゃいそう!
fumicoさん:それもメンタルアカウンティング。投資で得たお金も、働いてお給料として得たお金も、同じ10万円なら価値は一緒です。コツコツ働いたお給料は大事に使うのに、投資で増えた分は散財する人もいます。気を付けましょう!
新名さん:無意識のうちに色分けしないようにしなくちゃね!
fumicoさん:でも、「メンタルアカウンティング」を逆手にとって、活用することもできるんですよ。井出さんは、お給料から先取り貯蓄をしているという話でしたよね?
井出さん:はい、毎月2万円、定期預金に積み立てています。
fumicoさん:これは、お給料のうち2万円に、「これは生活費ではなく、貯めておく分」と色を塗っているのと同じなんです。メンタルアカウンティングで、貯蓄のくせづけができているんですね。他にも、毎月の生活費を「食費」「日用品費」「交際費」など封筒に分けて入れる、といった活用方法もあります。
井出さん:交際費が足りなくなっても「食費」って書いてある封筒からお金を出すのは何だか抵抗がある……。
fumicoさん:心の中で色分けしてしまっていますよね。無意識にそうしてしまう心の“くせ”、うまく活用したいですね。
著者:FP fumico
京都大学法学部出身。生命保険会社や地方自治体での勤務を経て、2017年1月よりInstagramにファイナンシャルプランナーとしての知識を活かした投稿を開始。学ぶ機会の少ない「お金に関する知識」について、要点をまとめた手書きノート解説が評判を呼び、20~40代女性を中心に支持を受ける。
著=FP fumico/『NISA&iDeCoはじめます! ファイナンシャルプランナーが教える正しいお金との向き合い方』