借りたお部屋、どこまで修理をするべき?◆あなたを守る法律
民法 第621条 賃借人の原状回復義務
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
【解説】原状回復義務を負うもの、負わないもの
マンションなどを借りて住む場合、それは自分の所有物ではないので、いずれ所有者や貸主に返す必要があります。そのため、借主はその物件を返す際、傷ついた部分などを元通りにする義務を負います(原状回復義務)。しかし、どんなに気をつけて使用していても、時間の経過とともに劣化しますし、借りたときと完全に同じ状態に戻すことは不可能です。
ところが、原状回復義務を負う範囲が明確でなく、賃貸借契約が終了する際にトラブルになることがあるため、国土交通省が取りまとめた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」が、一定の判断基準となっていました。
それが、2020年の民法改正により、「通常の使用・収益によって生じた損耗」「経年劣化」については、原状回復義務を負わないことが法律に明記されました。
通常損耗・経年劣化にあたるもの
●家具の設置による床やカーペットの凹み
●テレビや冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ
●地震で破損した窓ガラス
通常損耗・経年劣化にあたらないもの
●引っ越し作業で生じた傷
●タバコのヤニや臭い
●ペットが柱などにつけたひっかき傷
事例
【CASE】10年住んだマンションを退去。その際、高額なリフォーム費用を請求された。
【ANSWER】
原状回復義務には、自然に傷んだ部分を直す費用や、リフォームして前より良くする費用を負担することまでは含みません。
特に自然に傷んだ部分については、毎月支払う家賃にその分が含まれているという考え方になるため、退去時にその分の補修費用を負担する必要はありません。
著者:上谷さくら
弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。
※本記事は上谷さくら著の書籍『新おとめ六法』から一部抜粋・編集しました。
著=上谷さくら イラスト=Caho/『新おとめ六法』