「高額」「即金」闇バイト◆あなたを守る法律
民法 第96条 詐欺または脅迫
1 詐欺または強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、または知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取り消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
事例
【CASE】一人暮らしの大学生です。SNSで「荷物を受け取って〇〇まで持っていくだけで10万円! その場で支払います」というアルバイトの募集を見つけました。今月は試験でアルバイトができなかったので、来月分の家賃が払えません。10万円あれば切り抜けられるのですが、荷物を運ぶだけなら安全ですよね?
【ANSWER】
やめてください。荷物を運ぶだけで10万円、その場でもらえるような都合のいい合法のアルバイトは世の中に存在しないと考えるのが無難です。それで10万円もらえるということは、それだけ払ってもより大きな利益を手に入れる人がいるということです。一時の欲で人生を棒に振ることになりかねません。関わらないようにしましょう。
【解説】犯罪行為をさせられ、使い捨てされる
「闇バイト」とは、高額な報酬と引き換えに、犯罪行為に加担させる行為です。SNSで募集されることが多いです。応募するのは若者が多く、まさに「アルバイト感覚」ですが、強盗や詐欺などの重大犯罪の実行行為に加担させられ、被害者が死亡したり大ケガをすることも多く、逮捕されれば相当長期にわたって刑務所に行くことになります。しかも、首謀者は巧みに姿を隠しているため、不法な利益を得て、逮捕されることもなく犯罪行為を繰り返しているのです。
警視庁は、アルバイトを探すときは「高額」「即日現金」「高額即金」「副業」「ハンドキャリー」「書類を受け取るだけ」「行動確認・現地調査」などの言葉に注意するよう呼びかけています。申し込み時に匿名性の高いメッセージアプリのインストールを求められる場合は、闇バイトの可能性があります。
【ポイント】一度手を出すと逃げられない
闇バイトに応募すると、身分証等の提示を求められ、個人情報を把握されます。そのため、怪しいと思っても、個人情報をばらすなどと脅され、やめられずに犯行に加担し、刑務所行きになることも少なくありません。少しでもおかしいと感じたら、ためわらずに警察に相談してください。
著者:上谷さくら
弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。
※本記事は上谷さくら著の書籍『新おとめ六法』から一部抜粋・編集しました。
著=上谷さくら イラスト=Caho/『新おとめ六法』