牛ステーキ
焦げる直前まで焼く
私は輸入牛の赤身のリブロースのステーキを好んで食べます。理由は脂肪が少なく、しかも安価なので頻繁に食べられるからです。
ステーキを上手に焼けない方が多いようですが、その原因はフライパンにあります。フッ素樹脂加工のフライパンはもともと焦げないように開発されているので、焼き色をつけるのが難しいのです。さらに、大きいフライパンだと熱が分散されるので、小さ目のものがおすすめ。私は卵焼き器を使って焼いています。
おいしく焼くためのポイントは4つ。
〈その1〉牛肉は焼く30~60分前に室温に戻しておくこと。
〈その2〉フライパンを弱火から中火にと徐々に火を強めて、フライパンの中心部を十分に温めてから焼くこと。
〈その3〉油とバターを両方使うこと。
〈その4〉片面だけをこんがりと焼くこと。
では、焼き方を再現してみましょう。温めたフライパンに油を入れて回しているうちに少し煙が出ます。そこにバターを加え、泡が出たら牛肉を入れます。バターと牛肉のたんぱく質同士がぶつかっておいしい色に焼けます。裏返して同様に焼こうとすると、肉が薄いと焼きすぎてしまうので、もう片面はさっと焼いて完成です。
リブロースステーキ
材料(2人分)
牛ステーキ用肉 (リブロース、1.5cm厚さのもの)…2枚(320g)
塩…小さじ1/2弱
こしょう…適量
油…大さじ1
バター(食塩不使用)…10g
ディジョンマスタード…適量
部位について
輸入牛はどんな肉でも焼き方はほぼ同じ。脂が少なく、価格も手頃で使いやすい。リブロースは、肩ロースとサーロインの間の部位で、適度に脂がある。サーロイン(写真上)は、腰の上部のやわらかい肉で、脂の上質な旨味のある高級部位。ヒレ(写真下)は、サーロインの内側にある最もやわらかい部位。
作り方
下準備
1 牛肉は焼く30~60分前に冷蔵庫から出し、室温に戻す。両面に塩、こしょう少々をそれぞれふる。
焼く
2 1枚ずつ焼く。卵焼き器か小さめのフライパンに油大さじ1/2を入れ、最初は弱火にかけ、徐々に中火に温める。十分に温まったらバター5gを加え、泡立ってきたら(図a)、牛肉1枚を入れる (図b)。菜箸で牛肉を動かしながらこんがりとした焼き色がつくまで1分前後焼く(図c)。
▶▶バターのたんぱく質が焦げることで、 おいしい焼き色がつきます。ガスココンロの場合、フライパンは中心より縁のほうの温度が高いので熱が均一に通るように動かしながら焼きます。
3 焼き色を確認して裏返し(図d)、レアは20秒、ミディアムは40秒焼き、 取り出す。残りも同様に焼く。
▶▶肉を返すのは1回のみ。裏面は好みの焼き加減に合わせて、焼き時間を調節します。
盛りつけ
4 器に盛り、ディジョンマスタードを添える。
この記事のルール
・小さじ1は5ml、大さじ1は15ml、1カップは200ml、1合 は180ml、ひとつまみは親指、人差し指、中指の3本の指でつまんだ量(1gが基準)です。
・塩は精製していない天然のものを、特に指定のないこしょうは粗びき黒こしょうを使用しています。
・材料やレシピ中の「油」は、米油や菜種油など、クセのない油を指しています。好みの油を使ってください。
・加熱時間と火加減は、ガスコンロ使用を基準にしています。IH調理器具などの場合には、調理器具の表示を参考にしてください。
松尾幸造
1948年生まれ。1960年代に国内の有名ホテル、レストランに勤務後、スイスのホテル学校に留学。ヨーロッパの有名ホテル、レストランで経験を積み、帰国。
1980年東京・渋谷区 松濤に一軒家レストラン「シェ松尾」を開店し、オーナーシェフとして活躍。
2000年日本文化振興会社会文化功労賞受賞。
2007年NPO日本抗加齢食普及協会理事長に就任。
2019年 「シェ松尾」の会長を引退。
2021年よりYouTubeで 「Grand Chef MATSUO 松尾幸造」をはじめ、登録者48万人 (2023年11月現在)の人気チャンネルに。
主な著書に 『シェ松尾元オーナーシェフのお料理教室 普通の食材をお店の味に変えるレシピをまとめて』 (小社刊)がある。
https://www.youtube.com/c/grandchefmatsuo
撮影/邑口京一郎 スタイリング/本郷由紀子 本文/内田加寿子
著=松尾幸造/『料理をほめられたことがない人に捧げる 松尾シェフのレシピ帖』