不足分をおぎなうか、不要なものを出すか
「補・瀉・平」のツボの押し方
ツボ押しのとき、覚えておいてほしいのが「補(ほ)」「瀉(しゃ)」「平(へい)」という3つの押し方です。本記事でも、各ツボのところにこの3つのどれかを併記しています。
東洋医学(中医学)における診断方法には「虚実」という考え方があります。ざっくりいうと、「虚」は心身に必要なものが足りていない状態で、「実」は心身に余分なものがたまっている状態をさします。
ツボ押しや鍼治療をおこなうとき、私(中神)は相談にいらしたかたの不調の原因が「虚なのか、実なのか」をみきわめ、それにあわせて押し方(さし方)を決めています。虚の場合は足りていないものを満たすために「補す」必要があり、実の場合は余分なものを流すために「瀉す」のです。
<補>
足りないものがあり、それをおぎないたいときの押し方です。不足している分をおぎない、満たすためには、痛くする必要はありません。やさしく押すことで、足りないところをじっくりと満たしてください。トントンとやさしくたたいてもよいでしょう。
<瀉>
余分なものがたまっているときの押し方です。詰まりを流し、取りのぞくイメージなので、強めにしっかりと押すのがポイントです。「痛気持ちいい」をめざしましょう。指の腹では押しにくいときは、爪やペン先などを利用してもOKです。
<平>
補と瀉の中間が「平」です。これはそのツボが本来もっている機能を回復させたいときの押し方で、おぎなうでも流すでもなく、もとにもどすのが目的。中くらいの強さでしっかりと押しますが、痛いほど強くしないようにしましょう。
ストレスが出やすい胃腸の不調 便秘
便秘が習慣になると治しにくい!精神的ストレスやホルモンの乱れが原因に
便秘は「過緊張」といって、精神的なストレスのせいで自律神経が乱れてしまい、大腸の動きが悪くなっているときになりやすいです。とくに便秘と下痢をくりかえすタイプの人は、ストレスが原因であることが多いです。
便秘が習慣になってしまうと、治すことはとてもむずかしくなります。そのため、下剤にたよってしまう人が多いのですが、使いすぎは禁物! 漢方ではセンナやダイオウを用いた便秘薬が一般的ですが、ひんぱんに使いすぎると体が慣れて反応しなくなってしまいます。そうなる前に漢方の専門家に相談しましょう。
また、女性は生理周期によってホルモンバランスが乱れ、それにより便秘になることも。さらに、女性は男性に比べて腹筋が弱いことが多いので、おなかの筋力が足りずに力が入らず、便がたまってしまうこともあります。
Let's ツボ押し
【天枢】押し方:瀉
大腸の気が集まるツボです。ここを押して痛い人は、大腸の調子が悪い可能性大!
おへその横、指3本分外側にあります。左右とも一緒に押しましょう。片手で押すときは親指と人さし指で両側のツボをぐっと押して、5分ほどかけて小きざみに揺らしましょう。
【大巨(だいこ)】押し方:瀉
胃腸を元気にするツボです。上の天枢よりも指3本分下です。こちらも左右両方一緒に押しましょう。片手で押すときは、親指と人さし指で両側のツボをぐっと押して、5分ほどかけて小きざみに揺らします。
Let's 養生
バランスボールを使って腹筋を効率よくきたえて
腸壁は「平滑筋」といって、自分の意思では動かせない筋肉でできています。そのため、腸の周りにある腹筋などの骨格筋をきたえれば、おなかに力が入れられるようになって便秘対策に。
おなかまわりをきたえるには、バランスボールがぴったり! バランスボールの上に座って両足を上げ下げするだけで、効率よくきたえられます。ラジオ体操もおすすめですよ。
足腰が冷えて便秘になっているなら、おへそを温めましょう。おへその真上にお灸をするのも効果的。使い捨てカイロを置くだけでもOKですよ。
著=櫻井大典、中神洋和/『自律神経もととのう 漢方ツボ押し大全』