躍動的に渦を巻く姿が人気のイワシ。群れが回る方向は決まっているって本当?/すごすぎる海の生物の図鑑(4)
人間から見ると不思議がいっぱいな水の生き物たち。大きな海の秘密、教えます!
多様でユニークな生態が面白い、水の中を生きる生物。思わずびっくりしてしまうような生存戦略の数々は、非常に興味深く、子どもはもちろん大人の知的好奇心も満たしてくれるはずです。
水の世界のトリビアをぜひお楽しみください!
※本記事は鈴木香里武著の書籍『水の世界のひみつがわかる! すごすぎる海の生物の図鑑』から一部抜粋・編集しました。
イワシの群れが回る方向は決まっている
水族館の大水槽を泳ぐイワシの群れは、躍動的に渦を巻く動きが人気です。あの渦巻き、実は多くが右回りなんです。人間に右利きの人が多いのと同じように、イワシの世界でも右利きが主流なのです。
物理に詳しい人なら、南半球では反対向きなのではないかと思うかもしれません。ただ、現在わかっている限りでは、イワシに右利きが多い理由は、コリオリの力ではなく体の構造にあるようです。多くの場合、イワシは体を曲げるための筋肉が右に偏っているため、自然と右へ曲がりやすい体となり、時計回りの群れが生まれるのだそう。右利きのイワシを網焼きにすると右側に反ることからも、筋肉の付き方と回転の方向が関係していることがうかがえます。
外から見ると生き物は左右対称というイメージがありますが、中身を覗いてみると、人間だって内臓は左右で非対称ですよね。そう考えると、種類によって、個体によって、得意な方向があるのは自然なことだなと感じます。
海のいけすに養畜されているマイワシの約7割が右回りという観察結果があり、一度方向が決まるとずっとその方向に回っていく。昼夜問わず泳ぐが、夜は昼と比較してスピードはゆっくり。
コリオリの力
コリオリの力の向きは北半球では物体の運動方向の直角右向きに働き、物体は右向きに進行。南半球では直角左向き&左曲がりに。
コリオリの力が働いていると、ボールを投げた時の進行方向(青色の矢印)が意図した方向(オレンジの矢印)より右にそれたように見える。
豆知識
統率のとれたイワシの群れにリーダーはいません。危険を最初に察知したイワシが方向を変え、それを隣のイワシが真似して……という連鎖で全体の動きが揃います。側線が発達しているからこそ成し得る、まるで超高速伝言ゲーム。
【著者プロフィール】
鈴木 香里武(すずき かりぶ)
幼少期から魚に親しみ、専門家との交流や様々な体験を通して魚の知識を蓄える。学習院大学大学院で観賞魚の癒し効果を研究した後、現在は北里大学大学院にて稚魚の生活史を研究。海好きコミュニティ「海あそび塾」の塾長を務め、岸壁幼魚採集家として漁港に現れる稚・幼魚を観察する。メディア・イベント出演、執筆、資料提供等の発信活動をする傍ら、水族館のイベント・展示企画等、魚の見せ方に関するプロデュースも行う。2022年7月、静岡県に幼魚水族館をオープン、館長を務める。著書に『海でギリギリ生き残ったらこうなりました。進化のふしぎがいっぱい!海のいきもの図鑑』、『海でギリギリあきらめない生きざま。知恵と工夫で生き残れ!海のいきもの図鑑』(KADOKAWA)など多数。
著=鈴木香里武/『水の世界のひみつがわかる! すごすぎる海の生物の図鑑』
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