耳が聞こえないのに、海外一人旅・起業・子育ても⁉ 挑戦に満ちた著者の自己肯定感を育てた母の教育方針とは
登録者数12万人以上を誇るYouTubeチャンネル「デフサポちゃんねる」を運営する牧野友香子さんは、生まれつき耳が聞こえません。補聴器をつけても音が聞こえないため、口の形を見てコミュニケーションを取ります。他の人と比べて人生ハードモードではありますが、聞こえないことを理由に諦めたり辞めたりはしません。何事も進取果敢に取り組んできたんだそうです。
牧野さんは、中学校までろう学校ではなく、地元の学校へ。そして、神戸大学に進学し、在学中は3カ月間住み込みリゾートバイトや海外一人旅に挑戦。卒業後は、第一志望だったソニー株式会社に就職。その後、難病を抱えた娘を授かったことを機に、「株式会社デフサポ」を設立。現在は、アメリカのテキサス州に移住し、聞き取れない英語に奮闘する毎日!
耳が聞こえないのにもかかわらず、海外一人旅・起業・子育て等に挑戦する、チャレンジ精神や自己肯定感はどこからきているのでしょうか。それは、「聞こえないことをできない言い訳にさせない」お母さんの教育方針にありました。
※本記事は牧野友香子著の書籍『耳が聞こえなくたって 聴力0の世界で見つけた私らしい生き方』から一部抜粋・編集しました。
牧野家では、「聞こえないからできない」は通用しない!?
牧野さんがよくご両親から言われていたこと。それは、「聞こえを言い訳にはしない」ということ。
「聞こえないからできなくてもいい」
「聞こえないからあきらめてもいい」
これらの理由は、牧野家では一切通用しません。聞こえなくてできないことはやる必要はないけれど、そうじゃないことは基本的にやる環境でした。
音楽の授業でリコーダーを吹くことがあった際でも、「聞こえなくても吹くことはできるし、ピアノだって、聞こえなくても弾くことはできるでしょ?」と。また、リコーダーの宿題をやりたくなかった牧野さんが、聞こえないことを理由にサボろうとすると……。
「『ド』の鍵盤を押せば『ド』の音が出るのと同じで、リコーダーも『ド』の指をすれば『ド』が出るやろ」
と言われ、ぐうの音も出ず……。
牧野さんのご両親は、「聞こえないからこそ、聞こえに甘えずやることはちゃんとやる!」という教育方針でした。そのため、大人になった現在でも、
「聞こえないからしょうがない」とあきらめる前に、
「どうやれば、聞こえなくてもできるようになるんやろ?」
と考えるようになりました。
また、「聞こえないからできない」がない分、「聞こえないからやっちゃダメ」もあまりなく、やりたいことは自由にさせてもらっていました。
スイミングを習っていた時、水の中では補聴器を外すので、泳いでいる時はまったくの無音。コーチが何か言っていても全然聞こえなくて、口の形を読める時はよかったけど、毎回配慮してもらえるわけではないので、大変でした。ですが、スイミングの後にみんなでタコせんを食べる楽しさを経験しました。
耳が聞こえなくたって、自分なりに無理難題をクリアしていく牧野友香子さん。今日も今日とて、聴力0の世界で前に進み続けます。
文=茂木有芽
【著者プロフィール】
牧野友香子
1988年大阪生まれ。生まれつき重度の聴覚障害があり、読唇術で相手の言うことを理解する。幼稚園から高校まで一般校に通い神戸大学に進学。大学卒業後、一般採用でソニー株式会社に入社。難病を持つ第一子の出産をきっかけに株式会社デフサポを立ち上げ、全国の難聴の未就学児の教育支援や親のカウンセリング事業を行う。
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