学歴DVに給料の搾取。毒親から虐待を受ける人々の「夜逃げ」を描く話題作の最新刊【著者インタビュー】

 「夜逃げ屋日記4」より

モラハラ、DV、虐待、ストーカー被害…。さまざまなやむにやまれぬ状況から逃げ出す「夜逃げ」を手伝う特殊な引っ越し屋があります。それが「夜逃げ屋」。
漫画家の宮野シンイチさんは、ある時TVで採り上げられていたこの会社を知り、実際に働きながら取材させてもらうことにしました。そうして生まれた衝撃のコミックエッセイが『夜逃げ屋日記』です。

これまでも様々な状況から夜逃げする人々が描かれてきましたが、4月に発表された最新刊の4巻では、学歴DVを受ける5浪の青年や、無職の父に搾取される車椅子の女性が登場します。この最新刊について内容をご紹介し、著者の宮野さんにお話を伺っていきます。

【マンガ】「夜逃げ屋日記4」を読む

「夜逃げ屋日記」第4巻は…


 「夜逃げ屋日記4」より

 「夜逃げ屋日記4」より

4巻で描かれるのは、東大一家で学歴DVを受けてきたコウイチくん(仮名)のエピソード。彼は他の大学を受けるのを許されないまま東大受験に失敗し続け、現在5浪目。彼が助けを求めて夜逃げ屋に依頼したところ、それを知った母親は「邪魔だから出ていってほしい」と夜逃げ屋に依頼金を払って体よく追い出そうとします。難なく夜逃げは実行されましたが、親に見捨てられたコウイチくんは「どうして僕は生まれてきたんでしょうか」と涙を見せます…。

  「夜逃げ屋日記4」より

 「夜逃げ屋日記4」より

 「夜逃げ屋日記4」より

 「夜逃げ屋日記4」より

もうひとつのエピソードは、足が不自由で車椅子生活を送るホノカさん。母親を亡くしたホノカさんでしたが、無職の父親は彼女の障害年金や母親の遺産を使い込んで酒を飲み歩いています。障害年金の口座を止めて父親をATMに足止めしている間に夜逃げを実行しますが、その作業を終える間際に父親が帰宅。間一髪、車で逃げ出そうとするところで、父親から罵声を浴びせられたホノカさんは、負けずに父親に言い返して決別するのでした…。

 「夜逃げ屋日記4」より

 「夜逃げ屋日記4」より

そんな夜逃げを手伝ってきた宮野さん。この当時はまだ漫画家を目指していた頃でした。原作担当と作画担当としてコンビを組んでいた相方の「トドちゃん」とのコンビ解消の思い出や、その後会社員となった彼とのほろ苦くも懐かしい再会も描かれます。

そんな「夜逃げ屋日記4」を発表された宮野さんにお話を伺いました。


著者・宮野シンイチさんインタビュー


――4巻までに様々な依頼者が登場します。ここまで描いてきて、改めて一番印象に残っているエピソードと、その理由を教えて下さい。

宮野さん:
一つに絞るとなると難しいんですが、この4巻は、自分にとってすごく印象に残る巻になったなと思います。依頼人のコウイチくんと、コンビを組んでいたトドちゃんは自分にとってはとても大きな存在なので、その2人が揃って出ている一冊というのは、やっぱり少し特別ですね。

――思い入れのある一冊なのですね。ところで、「夜逃げ」は通常の引っ越しよりも精神的にも身体的にもハードなお仕事だと思うのですが、どんなところに気を配ってお仕事されていますか?

宮野さん:
先日、1時間以内に荷物を搬出する依頼をやったんですが、「とにかく1秒でも早く夜逃げを完了して、依頼者さんを安心させてあげたい」という、この一点だけはずっと変わらないです。

 「夜逃げ屋日記4」より

 「夜逃げ屋日記4」より

――実際の夜逃げについてマンガ化するにあたって、モデルとなる人物などが特定されないようフィクションを加えている部分もあるかと思いますが、どんなところに気をつけて描いていますか?

宮野さん:
自分は元々原作者志望で、絵に関しては描き始めてからまだ日が浅く、読者の皆さんが読みづらいと感じてしまうこともあると思うのですが、とにかく、依頼者さんの表情や感情はちゃんと伝えたいと思っています。

社長にも夜逃げの依頼の際には「依頼者の1番緊張している搬出時の顔と、加害者から離れて安心している搬入時、搬入後の顔をよく見るように」と言われているので、そこはとにかく気を付けて、時間がかかってもいいから、丁寧に描くようにしています。

 「夜逃げ屋日記4」より

――マンガにするにあたり依頼者の方にも許可をとっておられるようですが、中にはマンガに描くことを断られることもあるのでしょうか? 断られる場合はどんな理由が多いのでしょうか、差支えのない範囲で教えて下さい。

宮野さん:
社長から依頼者さんに許可をとっていただいているのですが、断られるような依頼の場合は、社長の段階でアウトの判定が出ます。アウトの判定になる場合はどんなものかと言いますと、ここに書けないようなことだからアウトになるとしか言えず…。申し訳ありません。ご想像にお任せします。

  「夜逃げ屋日記4」より

――では、マンガにすることにOKをくださる方は、宮野さんにどんな言葉をかけてくださるのでしょうか。

宮野さん:
直接会って漫画にする旨を伝えた際に、手を握ってくれて、「頑張ってね。私みたいな人を助けてあげてね」と言われた時は、胸が熱くなりました。

――それは嬉しいですね。それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします!

宮野さん:
いつも、夜逃げ屋日記を読んでくださってありがとうございます!
全く人気が出なかったら、第10話付近で漫画を描くことそのものをやめてしまおうと思っていたのですが、このたび読者の皆様のおかげで、第4巻を発売することができました!
ファンレターや、SNSでの漫画に対してのコメント、全部自分の力になってます!
皆様の応援に応えられるように、これからも精一杯、頑張って描いていきますので、これからも応援よろしくお願いします!次は5巻を出せるように頑張ります!

 「夜逃げ屋日記4」より



取材・文=レタスユキ

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