家事も仕事も背負い込んでしまう人が見直すべき2つのポイント

夕飯用意してくれるならいいよ

最近では、家事や育児に積極的な男性が増え、街中でもベビーカーを押したり、子どもと買い物をしたりする男性の姿を見かけることが多くなりました。
女性の社会進出も加速し、家庭と仕事の両立を目指す人が増えています。
しかし、その一方で、コミックエッセイ『“生きづまる”私たち』が描くように、多くの女性たちが今なお「負担」を感じ、「私ばっかり…」という葛藤を抱えているのも、見過ごせない現実です。

この作品について「とてもリアル」と語るのは、株式会社ビースタイル ホールディングスが運営する調査機関『しゅふJOB総研』研究顧問の川上敬太郎さん。

【マンガ】「”生きづまる”私たち ~ももかの我慢」を読む
ワークスタイル研究家・しゅふJOB総研の川上敬太郎氏

ワークスタイル研究家としても活躍し、プライベートでは、男女の双子を含む4児の父、そして兼業主夫でもある川上さんに、現代の家庭像や女性たちが抱える悩みについて、お話を伺いました。

共働き家庭で増えつつある「負担」の正体

——作品について「リアル」とおっしゃっていましたが、具体的にはどんな場面でそう感じましたか?

川上さん:よくある家庭の風景の中の「どこかおかしい」と感じつつも「主婦の私がやるしかない」という葛藤は、多くの家庭にあるのではないでしょうか。日常に溶け込んで見えにくくなっている“違和感”を、丁寧にすくい上げていると感じました。

「『”生きづまる”私たち』 ~ももかの我慢」より


——今は女性が働くことも当たり前になり、男性も家事や育児に参加するようになってきましたが、実際の家庭の中ではどうでしょうか?

川上さん:夫婦が共働きになると、家事に加えて仕事も「ふたり分」となるため、家庭を回すための全体の労力が大きくなります。この、気づかないうちに家庭の中に存在している「見えない負担」が、男性にとっても女性にとっても増えているのが現状です。

以前は夫が仕事、妻が家事を担う家庭が多く見られましたが、共働き家庭となったことで増えた負担を夫婦でどう分担するか、あるいは家庭全体で減らせるところはないかと見直していかない限り、「働きづらさ」や「家庭内のいざこざ」はなかなか解決できません。

——「良い妻・良い母・良い嫁」でいようとする気持ちは、今でも女性のなかに残っているのでしょうか?

川上さん:そうですね。「こうあるべき」という思い込みは、根深く残っている部分があると思います。例えば、『“生きづまる”私たち』の第3話「ももかの我慢」に、妻が「飲み会に行きたい」と言ったら、夫が「いいよ、夕飯を用意してくれるなら」と答える場面があるんです。

「『”生きづまる”私たち』 ~ももかの我慢」より

僕からすると、このシーンで妻は「その日はお弁当を買うとか、自分で何とかしてくれないかな?」と言い返してもいいはずだと思うんです。でも、この漫画の主人公のように、気持ちを飲み込んで「そうだよね」と引き受けてしまう……そんな状況は、現実でもよく見られるのではないかと思います。

「もうへとへと…」疲れ果てた女性を救うには?

——この、無意識で引き受けてしまう、という現実を変えるために、何が必要だと思いますか?

川上さん:家庭内での家事や育児の偏りを是正していくのはもちろん大事ですが、共働きが当たり前になった今の社会では、家庭の中だけで解決するには限界があると感じています。

家事も育児も、介護も、どれも特定の人に偏るのではなく、誰もが「自分のこと」として関わっていく社会を目指す必要があるのではないでしょうか。私はこのような状態を「一億総しゅふ化」と呼んでいます。そのために大事なのは、「職場の仕組みを見直すこと」と「家庭に対する当事者意識を育むこと」。この2つが車の両輪のように進んでいくことが大切だと考えています。たとえば、長時間労働を前提とした働き方や評価制度は、依然として多くの企業で残っているように見受けられます。1日8時間+月40時間の残業が当然とされる働き方では、家庭との両立は難しくなってしまうのが実情です。

今では、共働きの家庭も増え、男性も家庭のことに関わるようになってきています。そのなかで、男性が「疲れ」を感じはじめているという声も少しずつ聞かれるようになってきました。ただ、忘れてはならないのは、女性たちはこうした「働きすぎ」と「家庭の責任」の両方に、ずっと前から苦しんできたということです。

「『”生きづまる”私たち』 ~ももかの我慢」より



「生きづまり」を解消するために必要なこと

「『”生きづまる”私たち』 ~ももかの我慢」より

——やはり、働き方の選択肢がもっと広がっていく必要があるということでしょうか。

川上さん:はい。実際、短時間勤務の正社員やリモートワーク、単発の仕事や副業など、柔軟な働き方を選べる時代になってきています。企業としても、「フルタイム勤務」だけでなく「5時間勤務」なども含めて、さまざまな働き方をどう評価するかを見直すことが求められていると感じます。

職場常識の変化

仕事と家庭を両立することは、もはや女性だけの課題ではありません。本来、すべての働く人が考えるべきテーマです。

今なお多くの女性が「家のことすべて(家事・育児・介護など)」を“自分の仕事”と捉えがちなのに対し、男性側には「自分が主となってやる」という意識がまだ十分に浸透していないように思います。家事の全体像は、実際にやってみなければその大変さがわからないもの。だからこそ、男性も主体的に関わることで初めて「これは自分ごとだ」と感じられるようになるのではないでしょうか。

——男性が「自分ごとだ」に気づくには、どうすればよいでしょう?

川上さん:まずは、家族が協力して家事の全体像を洗い出し、“見える化”することが大切です。どんな作業を、どれだけの量こなしているのかを明確にすることで、ようやく「これって大変なんだな」と気づけるのだと思います。

これは、仕事にも似ています。成果の出るプロジェクトでは、全員が「これは自分の責任」と捉え、主体的に動いていますよね。家庭もそれと同じ。「主婦だから」「母親だから」と女性だけが背負うのではなく、家族全員が関わるべき領域です。

誰もが働き、誰もが家庭の役割を担う社会へ。この「生きづまり」を生む仕組みに対し、男性も女性と共に向き合い、協力し合える社会を築いていくことが、これからの課題だと思います。

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川上さんが語る「一億総しゅふ化」の社会とは、誰もが働き、誰もが家庭の役割を担うことが当たり前になる未来の姿です。家事や育児を“誰かの責任”にせず、社会全体で支え合う。そんな社会を築くために、私たちは今、どんな一歩を踏み出すことができるのか。
そのヒントは、もしかしたら『“生きづまる”私たち』の物語の中に、見つかるかもしれません。


文=山上由利子

<プロフィール>
しゅふJOB総研研究顧問/ワークスタイル研究家 川上敬太郎さん
1973年三重県津市生まれ。大手人材サービス企業管理職などを経て、2010年に株式会社ビースタイル(当時)入社。翌年、調査機関『しゅふJOB総研』を起ち上げ所長就任。独立後の現在も研究顧問として調査に携わる。プライベートでは、男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


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