【港区女子】素朴な少女はなぜ「ギャラ飲み」にハマったのか?【著者に聞きました】

コミックエッセイ『人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ』は、「港区女子」として光と影の道を歩んだ主人公・美春の物語。若さを失うことへの焦りと自分の市場価値の変化を描いたセミフィクションです。
田舎町で生まれ育ち、都会のきらめきに憧れて上京した素朴な美春が抱いた「もっとお金がほしい」「キレイになりたい」という思い。自らの若さと美しさを武器にお金を稼ぐことを覚えた彼女は、一体どこへと向かっていくのでしょうか。
この衝撃作を手がけた漫画家・うみの韻花さんは、昨年発表した『14歳で整形した私』では自身の整形についても赤裸々に描いています。若さと美しさが持つ市場価値や意味について、真摯に向き合ってきたうみのさんは、「港区女子」を描く上で何にこだわったのでしょうか。作品についてお話を伺いました。
『人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ』あらすじ
主人公・美春が生まれ育ったのは広島の小さな田舎町。彼女は母と祖母との3人暮らしで、小・中・高校と周りは顔見知りばかりの環境で育ちました。


このままずっと平凡な毎日が続く、そう思っていた美春を変えたのは、ふと目にしたネットの記事でした。

カリスマインフルエンサーとして活躍する、都内の女子高に通う乃愛の存在を知り、自分も都会に出てみたい、と思ったのです。その後、美春は大学合格を機に、家族の反対を押し切って上京。
しかし、いざ大学に入学してみると、周りとの差に愕然としてしまいます。

同級生は皆、高そうなバッグを持ち、身なりにもお金を使っている様子。生活費のために居酒屋でバイトをし疲弊している自分とは違い、同級生は皆、欲しいものを買うためだけにバイトをしているようです。さらには、バイトをせずとも、親に買ってもらえるという子も…。
入学当初、偶然仲が良くなった桜子は、入学祝いに母親から買ってもらったという数十万円はするであろうバッグを持っているではありませんか。

周りの同級生たちがどれほど裕福な家庭で育ったかを知り、美春は大きな経済格差に直面して落ち込みます。

「もっとお金があれば」——彼女の中に、漠然とした不公平感が芽生え始めたのは、この頃でした。
その後、大学2年生になった美春は、桜子から大学のミスコンに出ることをすすめられます。

最初こそあまり気のりしなかった美春ですが、現状を変えるために出場を決意。努力のすえ、見事、準グランプリを勝ち取りました。
そしてグランプリは、美春が上京するきっかけを作ったインフルエンサー・乃愛だったのです!

授賞式後に会話を交わす2人。そこで美春は、乃愛が「ギャラ飲み」で小遣い稼ぎをしていること、それによってそれなりの金額を手にしていることを知ります。

乃愛のすすめもあり、軽い気持ちで「ギャラ飲み」に参加することを決めた美春。

初めての「ギャラ飲み」を終えた彼女が手にしたのは、4時間で2万円近い額でした。男性の前でニコニコと笑っているだけで、自分の1日のバイト代の3倍近いお金を稼げてしまうことに驚愕しつつ、喜びを隠せませんでした。

その後、美春はギャラ飲みにどんどんのめり込んでいきます。彼女は稼いだお金で高価な化粧品や高級バッグを買うようになり、次第に華麗な「港区女子」へと変貌を遂げていくのですが…。年齢を重ねて容貌に衰えが見え始めた時、彼女は一体どうなってしまうのでしょうか?
著者・うみの韻花さんインタビュー
――都心の有名大学に苦労して入学した美春が、周囲の華やかな学生の中で萎縮する描写がありました。美春の行動や葛藤を描く上で、こだわった点や力をいれた点はありますか?
うみのさん:美春の目線を疑似体験するため、実際に一人で都内の大学へ見学取材に行きました。大学に入った途端、きらびやかな学生たちに圧倒されましたね。
一般利用できる食堂で学食を食べたのですが、私以外は皆2人以上で食事をしていました。美春もきっと、こんな環境だからこそ打ち解けられず、孤独を感じていたのだろうな…という気持ちが痛いほど分かったので、この取材経験を作品に反映させようと思いました。

――美春の大学ではじめての友人・桜子は、生まれも育ちも東京のお嬢様です。桜子と美春、ほぼ正反対とも言えるキャラクター同士の関係性を描くうえで、気を付けたことはありますか?

うみのさん:桜子はとても友達思いで、優しく清らかな心の持ち主です。美春が桜子の言動に劣等感を抱く場面もありますが、桜子自身に悪気はなく、あくまで美春を心配していただけなので、物語の最初から最後まで「良い人」であるという設定を貫くように気をつけながら描きました。
――ミスコンへの出場で自分の容姿に自信を持った美春ですが、このミスコンで出会ったグランプリの天海乃愛から「ギャラ飲み」の仕事に誘われます。もうひとりの「港区女子」である乃愛についてはどんなキャラクターとして描きましたか? こだわった点などがあれば教えてください。
うみのさん:乃愛は、美春が上京するきっかけを与えた人物なので、圧倒的な美しさとカリスマ性を兼ね備えた存在として描きました。彼女は自信に満ちあふれ、貪欲で、コミュニケーション能力に長けています。そんな彼女の魅力の一つはセクシーさだと考えたため、人を惹きつける瞳と抜群のスタイルも合わせて表現することにこだわりました。

――美春は「港区女子」として洗練されていく一方で、次第に傲慢な人物になっていきます。美春の会話や心理描写で、特に工夫された点や心がけた点などがあれば教えてください。
うみのさん:美春の、他人に対する嫉妬や劣等感、そして傲慢さは、モノローグ(心の中の声)によって赤裸々に語るようにしました。ただ、美春が読者に嫌われすぎないように、汚い言葉や強い言葉は使わないようにしました。読者に共感してもらえるよう、物語の前半で美春が上京した頃の様子や生い立ちをしっかり描写し、その上で彼女が徐々に傲慢になっていく様子を描くように心がけました。
また、美春の目の光(ハイライト)の数を、「港区女子」になっていくにつれて徐々に減らしていくように描いたのもこだわりのポイントです。
* * *
この作品は、「ギャラ飲み」という特殊な世界を描いた物語であると同時に、「若さを失うこと」への葛藤を描いた普遍的なストーリーだと感じました。美春が経験する『絶望と幸せ』は、本当の幸せとは何かを考えるきっかけを与えてくれます。
取材・文=山上由利子
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