SNSで大人気の『天国での暮らしはどうですか』著者・中山有香里さんが看護師を続けながら漫画を描く理由

現役の看護師でありながら、イラストレーターとしても活躍している中山有香里さん。彼女が描くコミック『天国での暮らしはどうですか』は、「もしも天国があるのなら、あの子はいまどんなふうに過ごしているんだろう…」という私たちの心の中の問いかけに、そっと寄り添ってくれる作品です。やさしいタッチで描かれる“天国の日常”は、愛する存在を見送った人の胸に温かな光を届けてくれます。
X(旧Twitter)に投稿されるたびに数万の「いいね!」が寄せられるほどの人気を誇る“天国シリーズ”が、このたび待望の書籍化! 今回は、中山さんがどのようにして看護師とイラストレーターという二つの道を歩むようになったのか、その背景をじっくりお聞きしました。




絵を諦めた先にあったのは…看護師として開いたもうひとつの扉
――現役の看護師でありながら、漫画やイラストも発表している中山さん。『ズルいくらいに1年目を乗り切る看護技術』(メディカ出版)など、看護師にまつわる本も数多く出されています。まずは、どうして看護師を目指したのか、そのきっかけから教えてください。
中山有香里さん:一番大きかったのは、幼いころから母が看護師として働く姿を見てきたことです。実は、姉も看護師なんですよ。そんな環境で育ちながら、私は小さいころから絵を描くことが大好きで、「いつか絵を仕事にできたら」と美術の道を考えていました。でも実際に描いていくうちに、自分よりもずっと上手な人に出会ってしまって…そこで自信をなくし、絵の道はあきらめてしまったんです。
ちょうど目標を見失っていたときに、母から「看護師を目指してみたら?」と声をかけてもらったことが、進路を決める大きなきっかけになりました。







――美術の道を断念して、看護師へ…。でも今は、現役の看護師を続けながら漫画やイラストを描かれていますよね。それはどんな経緯だったのでしょうか?
中山有香里さん:看護師として働きながら、自分用の勉強ノートやメモにイラストを描いていたんです。すると、それを見た周りの人から「すごくわかりやすい!」と喜ばれて。さらに、夢を叶える途中で亡くなってしまった友人がいて…「やっぱり自分は絵を描きたい」という気持ちが、心の奥でどんどん強くなっていったんです。そこで思い切って、医療系の出版社に「絵を描かせてください」と手紙を何十通も送りました。
――わぁ、ご自身から出版社に手紙を!その行動力に驚きです。
中山有香里さん:そうなんです(笑)。そのおかげで少しずつイラストのお仕事をいただけるようになりました。最初は絵だけを描いていたんですが、だんだん「漫画も描いてみようかな。お話を形にできるかわからないけれど、挑戦してみよう」と思うように。そしてSNSに投稿した作品が、『泣きたい夜の甘味処』につながったんです。



――『泣きたい夜の甘味処』といえば、第9回料理レシピ本大賞コミック賞を受賞された作品ですよね。疲れた心にそっと寄り添う世界観は、新刊『天国での暮らしはどうですか』にも通じているなと思います。それにしても、看護師と漫画家の両立はやっぱり大変では?普段の活動スタイルを教えてください。
中山有香里さん:今は作家としての活動が中心ですが、看護師の仕事も続けています。一人で部屋にこもって描き続けるより、外で人と話したり体を動かしたりする時間は、私にとってとても大切なんです。家にこもっていると、一日誰とも話さず動かさず…なんてこともありますから(笑)。ただ、やっぱり両立は大変ですよね。看護師の仕事中なんて、もうずっとマラソンしているような感覚で、つねに息切れしっぱなしです(笑)。
***
忙しい毎日のなかで、誰もがふと立ち止まって「心を癒す時間」が欲しくなるもの。看護師として人に寄り添い、イラストレーターとして心に光を灯す作品を届ける中山さんの言葉と絵は、まさにそんな時間をくれる存在なのかもしれません。
著者プロフィール
中山有香里(なかやまゆかり)…奈良県在住の看護師・イラストレーター。2022年に『泣きたい夜の甘味処』で、2023年に『疲れた人に夜食を届ける出前店』(共にKADOKAWA)で料理レシピ本大賞 in J apan コミック賞を受賞。著書に『ズルいくらいに1年目を乗り切る看護技術』シリーズ(メディカ出版)、『魔女のあとおし』(幻冬舎)、『がんばれなくてもなんとか作りたい1年のいたわりごはん日記』(ワン・パブリッシング)がある。
取材・文=宇都宮薫
Information
おすすめ読みもの(PR)
読みものランキング
読みものランキングをもっと見る
レシピランキング
レシピランキングをもっと見る
レタスクラブ最新号
レタスクラブ最新号詳細