5万人が「いいね」した優しいエピソード。『天国での暮らしはどうですか』中山有香里さんが描く天国と家族の物語

8月5日に発売された中山有香里さんの新作コミック『天国での暮らしはどうですか』。天国に旅立った大切な存在が、もしかしたらそっと私たちのそばで見守ってくれているかも…と思わず想像してしまう、心がほっこり温まる作品です。
今回は、Xで5万いいねを獲得した「ひかりと家族」のエピソードにスポットを当て、中山さんに制作の裏話や込めた思いをうかがいました。
「ひかりと家族」あらすじ
天国で「下界におりる申請」をしているのは、マルチーズのひかり。天国でぬくぬくと寝ている間に、あっという間に2年が経ってしまい、「早く帰らなきゃ」と飼い主のもとへ急ぎます。「だって、私は二人の子どもなんだから!」と意気込みながら。ところが家に帰ってみると、見慣れない小さな赤ちゃんが。そう、飼い主夫婦には、新しい家族が生まれていたのです。自分の居場所が変わってしまったことに寂しさを感じつつも、「あんたは妹っ!」と赤ちゃんに話しかけるひかり。その小さな目には、うっすらと涙が光っていて…。



モデルは親戚のわんちゃん!天真爛漫なひかりに込めた“家族のかたち”への思い
――「ひかりと家族」に登場する犬のひかりは、どのようにして生まれたキャラクターでしょうか?
中山有香里さん:私の親戚や知人にも、子どもがおらずペットをまるで子どものように可愛がっているご家庭があります。その親戚のわんちゃんは、お盆やお正月の集まりにはよく来ていて、本当に愛情深く育てられているのが伝わってきました。わんちゃん自身も人懐っこくて楽しそうで、どこか誇らしげな印象を私は子どもながらに感じていました。当時は、わんちゃんのほうが可愛い服を着ていて、ちょっと羨ましくて母に服を買ってほしいとねだったこともありました(笑)。
このエピソードのひかりちゃんも、そんな家族の一員として愛情たっぷりに育てられたわんちゃんです。天真爛漫で、家族の中で自分が大切にされていることを誇らしく思っている、私の親戚のわんちゃんがモデルになっています。



――自分が大切にされていることを誇らしげに思っているわんちゃんってたまらなく可愛いですよね。では、「ひかりと家族」のお話に込めた思いをお聞かせください。
中山有香里さん:そんな家族の一員のひかりちゃん。はやく天国から帰らなきゃと急ぎます。私は二人の子どもだから、・・・・子ども、だよね?と少し疑いながらも。だけど、そこには、寝ている赤ちゃんがいて。いろんな家族の形があって、時間とともにそのなかでも形は少しずつ変わっていく。でも、きっとずっと変わらないものもある──ということをテーマにこのエピソードを描きました。家族の形は変わっていくけれど、そのなかでこれだけは大事にしたいものってなんだろうと考えました。
SNSでも共感の嵐!家族の形が変わっても、変わることのない想い




――「ひかりと家族」はXで初出5万いいね、再掲でも4.2万いいねを獲得している大人気のエピソードですね。
中山有香里さん:はい。こんなにたくさんの反響をいただけるとは思っていなくて、とても驚いています。ひかりが家に帰ったとき、思い描いていた家族の形とは少し違っていて、自分の存在が上書きされてしまうのでは…と戸惑うんです。でも、ひかりは自分が亡くなる直前の家族の表情を思い出して、「今、幸せに過ごしているなら…」と少しずつ受け入れていきます。人間と動物は寿命が違います。「あんたは長生きしてね」と妹に声をかけるシーンは、変わっていく家族の形をひかりなりに受け入れた描写です。それでも、ずっと変わらないものもちゃんとあって──それは、この話の最終ページにちゃんとわかります。主人公のひかりの葛藤に、そしてパパとママの想いに共感してくださった方が多かったのではないかと思っています。
――SNSで特に多かったコメントはありますか?
中山有香里さん:コメントの中で多かったのは、「絶対に忘れるわけないよ!!未だにずっと、これからもずっと待ち受けは変えないよ」という言葉です。私も愛犬の写真をLINEのアイコンにずっと使い続けていて、まさにその気持ちだなと共感しました。
***
愛する存在を見送ったあとも、家族の形は少しずつ変わっていきます。でも、変わらず大切にしたい想いは、時間や環境が変わってもずっと心の中に残っているもの。『天国での暮らしはどうですか』は、そんな“変わらない優しさ”をそっと教えてくれる、読んだ人の心に寄り添う一冊です。
著者プロフィール
中山有香里(なかやまゆかり)…奈良県在住の看護師・イラストレーター。2022年に『泣きたい夜の甘味処』で、2023年に『疲れた人に夜食を届ける出前店』(共にKADOKAWA)で料理レシピ本大賞 in J apan コミック賞を受賞。著書に『ズルいくらいに1年目を乗り切る看護技術』シリーズ(メディカ出版)、『魔女のあとおし』(幻冬舎)、『がんばれなくてもなんとか作りたい1年のいたわりごはん日記』(ワン・パブリッシング)がある。
取材・文=宇都宮薫
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