それぞれの喪失にそっと寄り添うストーリー『天国での暮らしはどうですか』中山有香里さんインタビュー

「天国にいったあの子も、こうして過ごしているのかな?」不思議であたたかい物語
――中山さんの作品は、SNSでも大反響を呼んでいます。「天国シリーズ」の読者の方の反応で印象に残っているコメントなどがあれば教えてください。
中山有香里さん:天国シリーズには、たくさんのコメントをいただきます。「天国にいったあの子も、こうして過ごしているのかな?」「夢に出てきてくれたのは、夢枕チャレンジにやっと当たったんだ」「うちの子も、きっと天国でこう過ごしてるはず」など。
特に印象的だったのは、「知り合いがペットを亡くして、言葉がうまくかけられなかったので、この本を贈りました。それぞれのタイミングで、それぞれの解釈で、それぞれの喪失に寄り添ってくれますように」というコメントです。私自身も感情や思いを言葉にするのが苦手なので、まさにその気持ちと同じだなと。プレゼント用に選んでくださる方も多いと聞きますが、読んでくださった方の心に、ほんの少しでも寄り添えたら…と、送り主と同じ気持ちで祈っています。



――ふとした瞬間に亡くなった子のことを思い出す、なんとなく気配を感じる…など、ちょっと不思議なエピソードは、どうやって生まれたのでしょうか?
中山有香里さん:実は私自身、特別な不思議体験はほとんどないんです。唯一思い出すのは、父が町の掃除のときに石垣の高いところから落ちて足を少し怪我したときのこと。幸い、頭などは無事だったんです。愛犬とよく散歩していた場所だったので、父も母も「愛犬が守ってくれたのかも」とよく言っています。 実際どうだったかはわからないけれど、私もそう思いたいんですよね。愛犬がそばにいてくれる感覚、ふとしたときに存在を感じたい…そんな気持ちは、きっと残された人みんなが願っていること。私の物語も、「そこにいてほしい」という思いから想像が膨らんで生まれたのだと思います。
「夢に出てこないのは、くじ運が悪いあの子らしいね」と笑ってほしい


――天国シリーズには人間も登場しますが、犬や猫のエピソードが特に多く登場しますね。
中山有香里さん:はい。私は犬も猫も飼っていて、本当に大好きなんです。でも、言葉でお互いに意思疎通ができないぶん、「今、何を考えているのかな?」とか「もっとこうしてあげればよかったな…」と後悔することも多くて。そんな気持ちや、「天国ではどう暮らしているのかな?」という想像が、自然と漫画に表れています。



――特にお気に入りのエピソードはありますか?
中山有香里さん:お気に入りのエピソードは、「大福が夢枕チャレンジをする話」です。自分が異変に気づくのが遅くなったせいで大福を苦しめてしまったのでは…と悔やむ飼い主に会うため、猫の大福が毎日夢枕チャレンジに挑むお話です。実際に同じような理由で心を痛めている方もいらっしゃるので、少しでも心の整理の助けになれたら…と思って描きました。夢になかなか出てこないのは、くじ運が悪いあの子らしいね、と、いつかそんな風に思えますように。
――最後に、これから挑戦してみたいテーマや描いてみたいこと、読者へのメッセージをお願いします。
中山有香里さん:今のところ、新しいテーマは特に考えていません。この天国シリーズを描き続けて、1冊でも多く本にまとめられたらいいなと思っています。いろんな人や動物が、誰に何を思い残していったのか。その気持ちを、残された人たちに少しでも寄り添える形にしたいです。将来的には、食べ物や天国をテーマにした絵本にも挑戦したいなと思っています。
読者の皆さんには、本当に支えられています。以前は全然読んでもらえなかった時期もあったので、こんなにたくさん反応をいただけることに驚きと感謝でいっぱいです。これからも楽しんでもらえるように、1枚でも多く描き続けていきますので、どうぞよろしくお願いします。いつも、ありがとう〜!!!!
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ペットや人との日常の何気ない瞬間をやさしくすくい上げ、読者の心にそっと寄り添ってくれる『天国での暮らしはどうですか』。失ったものの大きさや、変わっていく家族の形を描きながらも、温かなユーモアと希望を忘れないその世界観は、多くの人に笑顔を届けています。
著者プロフィール
中山有香里(なかやまゆかり)…奈良県在住の看護師・イラストレーター。2022年に『泣きたい夜の甘味処』で、2023年に『疲れた人に夜食を届ける出前店』(共にKADOKAWA)で料理レシピ本大賞 in J apan コミック賞を受賞。著書に『ズルいくらいに1年目を乗り切る看護技術』シリーズ(メディカ出版)、『魔女のあとおし』(幻冬舎)、『がんばれなくてもなんとか作りたい1年のいたわりごはん日記』(ワン・パブリッシング)がある。
取材・文=宇都宮薫
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