親が亡くなったらどうしたらいい? “きょうだい児”たちが抱える不安と現実【話題作の著者に聞く】



「今日もなんとかいい子ができた」
12歳になった透子は、仕事を始めた母を支えるために、妹・桃乃の入浴や着替えを手伝っています。桃乃には重い知的障害があり、食事や入浴・トイレなど、生活の全てに介助が必要でした。いつも桃乃のことばかり気にかけている母に褒めてもらえることが、透子にとっては何よりの喜びだったのです。


中学では吹奏楽部で頑張り、名門高校に進学する夢を抱いていた透子。けれど母がすすめたのは、まったく別の高校でした。

理由は――「桃乃の通う支援学校の近くだから」。桃乃を迎えに行けないとき、代わりに行ってほしいから。そんな母の本音が透けて見えます。それでも透子は、「私のワガママでこれ以上ママの負担を増やしたくない」と、自分の希望を押し殺し、泣きながら希望校への進学を諦めます。けれど、心の奥にはどうしても消えないモヤモヤが残ってしまうのです。

「この家は、すべて桃乃を中心に回っている。」
「死ぬまで私が面倒を?」きょうだい児が直面する“親亡き後”の問題

――『妹なんか生まれてこなければよかったのに きょうだい児が自分を取り戻す物語』の作品の中で、特に思い入れのあるシーンを教えてください。
うみこさん:透子が桃乃に対して負の感情を爆発させるシーンです。「お前なんか産まれてこなければよかったのに」と優等生の透子が感情をむき出しにします。編集さんに最初の段階でこのシーンは描きたいと相談しました。実際にはリアルだと言いにくいし、思っていても絶対に言えないことですが、漫画だから出来る表現をしたいと思いました。

――きょうだい児の方々が現実問題として負担に感じているのはどういった点なのでしょうか。
うみこさん:取材を通して受けた印象ですが、学生時代には周囲からの見られ方やいじめ問題に悩んでいたり、障害のある兄弟姉妹からの暴力や性暴力にさらされていたり、ヤングケアラーの問題に直面する人もいます。
こうした悩みを抱えていた人たちが、成長し、進学や就職、実家を出るタイミングなどを機に別の問題で悩まされることも少なくありません。たとえば、障害のある兄弟姉妹が原因で婚約破棄となった人もいれば、子どもを持つかどうか悩む人もいます。

また、親が亡くなった後、障害のある兄弟姉妹の世話への不安で苦しむ方も少なくありません。当事者ではない人々は「親が亡くなったら、すぐに施設に入ればいい」と考えがちですが、現実はそう簡単ではありません。施設には限りがあり、何年も順番待ちで入居できない障害のある方もたくさんいます。
他にも、暴力などの他害行為がある場合は、入居の受け入れを断られてしまうことも。家庭内でみていくことが難しいケースほど、外部の手助けを得られにくい現状があるのです。

こうした状況の中で、将来的に障害のある兄弟姉妹の世話をしてほしいという親からのプレッシャーに、苦しんでいる当事者の方もいます。そのような人たちからすると、親が生きているうちに、「親亡き後」の問題を解決してほしいという思いがあるのですが、親自身は「自分が元気なうちは、自分で世話をしたい」という意思があったり、上記のように長年施設の入居待ちをしていたり、解決の兆しが見えず、不安を抱えたまま過ごしています。
きょうだい児が抱える問題は、個々の家族だけの問題ではなく、福祉の制度の問題も関わっていると思います。
――きょうだい児の方々への取材を通して、どんなことを感じましたか?

うみこさん:それぞれのご家庭の事情があると思いますが、一定の距離を保つことが大切なのかなと思いました。やはり家族なので、絶縁することはとても難しいと思うんです。もちろん、絶縁している方も中にはいらっしゃいますが、多くのきょうだい児の方にとってその決断は重すぎて、中々踏み切れないのではないかと思います。兄弟姉妹のことは嫌いだけど、両親とは良好な関係でいたいと思う方もいるのではないでしょうか。

ただ、一緒に暮らしていると、やはり家族なので、きょうだい児に少なからず負担がかかってくる。小さな負担がチリツモでいつのまにかすごくしんどい状態になってしまう。そうなる前に、離れて暮らすことができるなら、ひとつの解決策なのかなとも思います。当事者の方は、優しい方も多いので、「見放してしまった」と罪悪感を抱くかもしれませんが、自分の人生と心を一番に優先してほしいですね。
* * *
「家族だから助けたい。でも、苦しい」
――そんな“きょうだい児”たちの声に、心がぎゅっと締めつけられます。親亡き後のこと、これからの生き方。答えのない問いを抱えながらも、“きょうだい児”たちはそれぞれの人生を歩き続けています。
取材・文=宇都宮薫
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