東日本大震災を1歳の子どもと体験。在宅避難の経験を持つ防災士が提案する「本当に役立つ防災対策」 #知り続ける

災害への備えは、やらなければと思いながらも「何から手をつければいいかわからない」という方も少なくないかもしれません。東日本大震災の実体験を描いたコミックエッセイ『今日、地震がおきたら』の著者・アベナオミさんは、当時1歳の長男とともに電気・ガス・水道が止まった自宅で被災生活を送りました。
もし今日、地震がおきたら、どうすごせばいい?
避難所などの不便な生活の様子はTVなどでもたびたび報じられますが、意外に知らない「在宅避難」の様子。アベさんが経験した在宅避難生活をのぞいてみることで、リアルに「我が家に必要な防災」が見えてくるかもしれません。
まずはアベさんのエッセイで描かれた、在宅避難の日々の様子をご紹介していきます。
『今日、地震がおきたら』あらすじ
2026年3⽉11日、東⽇本⼤震災の当日。地震の激しい揺れが収まり、アベさんが1歳7か月の息子を連れ帰ったアパートで始まったのは、ライフラインが完全に止まった不自由な生活の幕開けでした。

足の踏み場もないほど物が散乱した室内。幸い、家族は全員無事でしたが、翌朝から一家を待ち受けていたのは過酷な「在宅避難」の現実でした。幼い息子にはぜんそくやアトピーの持病があり、不特定多数が集まる場所での生活は難しいと判断したのです。
地震翌日から続く断水で、もっとも家族を追い詰めたのは「トイレ」でした。

水が流れないため、「小は流さない」「大の時だけバケツの水で流す」というルールを設けますが、不衛生な環境の共有は強いストレスとなります。さらに震災直後に生理が重なるという困難がアベさんを襲います。

お皿を洗った汚水はトイレ用に再利用し、不足する生理用ナプキンは子どものオムツで代用する日々。一時的に復旧した水道で風呂に溜めた貴重な水も、すべてはトイレを維持するために注ぎ込まれました。

満足に水が使えない状況下での調理も、苦肉の策の連続でした。屋外に積もった雪を保冷剤代わりにし、電気の使えない暗闇の中、かろうじて生きていたプロパンガスを頼りにお鍋でお米を炊く日常。

物資が不足するなか、工夫を凝らして苦労して作った食事であっても、子どもが食べてくれないという現実に直面します。大人は「食べられるだけでありがたい」と自分を律せても、子どもの本能まではコントロールできない――そのもどかしさが、母であるアベさんの心に重くのしかかります。

「ただただ淡々と不便な日常」が続く在宅避難。その様子は、予想以上に過酷な生活でした。当時の詳細なメモをもとに描かれた本作は、その場にいた人にしか分からない「空気感」や「息苦しさ」を、私たちに痛烈に伝えてくれます。
この作品を描いたアベさんは、ご自分のお子さんをはじめ震災を知らない世代に、当時のリアルな⽣活を伝え、備えてもらいたい⼀⼼で本作を描き始めたそうです。
今日はそんなアベさんに、在宅避難の実体験から得た防災対策を伺いました。
日常生活の習慣の中ではじめる「一番かんたんな防災対策」
――著作を読んで、あらためて防災への備えの必要を感じました。ただ、私も当てはまるのですが、「防災リュックを作って満足してしまう」ケースは多い気がします。日頃から防災を意識して、日常生活の中で心がけたい行動や習慣は何がありますか?
アベナオミさん:一番かんたんで、とても有効なのが「トイレは行けるときに、我慢しない」習慣です。トイレに行っておきたいけど、まぁ次の目的地でもいいか!とつい先延ばしにしないこと。
行けるときに行っておけば、万が一災害に巻き込まれたときに次にトイレの心配をするまで数時間猶予が生まれます。トイレのことを心配せずに、避難行動を取ったり、状況を把握したりできることが増えるので、ぜひ心掛けてほしいです。


――震災を経て、アベさん自身が外出時に必ず持ち歩いている「これだけは外せない」アイテムは何がありますか?
アベナオミさん:モバイルバッテリー、のど飴、携帯トイレ(1回分)のセットです。とりあえずこの3つがあれば、なんとかなると思っています。遠出するときは携帯トイレと飴の量が少し増えます。
震災当時もスマホはありましたが、そのころよりもスマホの重要度は上がっていますよね。情報収集、灯りとしての機能、家族の安否確認にも必要なアイテムなので、充電切れにならないように注意しています。
「もしもの時」について話し合っておくべきこと
――家族で「もしもの時」について話し合っておくべきことについてアドバイスをおねがいします。夫婦間・親子間で決めること、準備しておくとよいことは何でしょうか?
アベナオミさん:我が家がそうでしたが、災害が発生してから避難するかどうか話し合う、では遅いんですよね。まずは「我が家の災害時の方向性」を決めておいてほしいです。
・在宅避難を想定しているから、自宅を集合場所にする。
・避難が必要な場所なら、第1〜第3くらいまで避難所をピックアップしておくこと。
災害時に怖いのは、居場所がわからないもの同士の行き違いが起きることです。まずは災害発生時は自分の命を守り、決めていた集合場所に行くようにしましょう。

――子どもがいる場合に特に気をつけることはありますか?
アベナオミさん:子どもに対しては、まず学校が配布している非常時のマニュアルをしっかり確認。どんな場合に引き渡しになるのかを把握しましょう。児童や生徒が学校から避難する際にどこの避難所に行くことになっているのかも、しっかり確認。登下校中に被災した場合は、学校か自宅、近い方に避難するようにルールを決めておくといいですね。
普段からこころがけておきたい「ローリングストック」
――食料や消耗品など「日常の延長でできるローリングストック」の方法を教えてください。可能であれば、アベさんの5人家族の場合を具体例として教えていただけますか?
アベナオミさん:我が家のルールは「新品の封が開いたらストックを買う」です。日用品、食品すべてこのルールで管理しています。例えば、オムツのパックを開けたら次を買っておく、これで家には約2パック分あります。1パック消費して、次のパックを開けてすぐに災害が発生しても1パック分は必ずある状態を作っています。日用品なら、洗剤、トイレットペーパー、ティッシュ、お尻拭き、生理用品、乾電池、化粧品。食品ならお米、乾麺、調味料、缶詰、瓶詰め、インスタントコーヒーなど、この方式でストックしています。
防災備蓄に必要なものは、家庭によって違います。自分の生活にないと困るものをピックアップしてストックがある状態を保っていきましょう!


――災害時、特に「これがあって助かった」と実感した防災グッズや備蓄品はありますか?
アベナオミさん:本当にあってよかった!と実感したのが「おしりふき」と「防臭袋」です。断水生活中、おしりふきは万能でした。もう水道の代わりです。手拭き、体拭き、台拭き、雑巾として我が家の衛生を守ってくれました。

当時、オムツ処理用の防臭袋を使っていたのも、本当に助けられました。災害時はごみ収集もストップするので、自宅でゴミを保管しなければなりません。
オムツはもちろんですが生ゴミなど、時間が経つと臭いが出るものをすべて防臭袋に入れてごみ収集の再会を待ちました。我が家は、臭いに悩むことは最小限に抑えられましたが、ママ友の中にはオムツと生ゴミの臭いで食事もままならなかった人もいらっしゃいます…。
防臭袋はいまも毎日生ゴミを処分するときに使用していますし、おしりふきも使っています。もしも今日地震がおきて、ごみ収集がストップしても我が家は大丈夫だと思います。

「用意しておけばよかった」と後悔したものは
――被災したときに「あれを用意しておけばよかった」と後悔されたものはありますか?
アベナオミさん:スマホ以外の情報収集ツールですね。具体的には、ラジオかワンセグテレビ。マンガでは実家から携帯ラジオを1つ借りていますが、震災後は自分たち用のラジオを購入しました。
どちらも車に搭載されていることが多いので、自家用車があるご家庭なら、ガソリンは半分になったら給油する習慣をつけてほしいです。

車を持たないご家庭であれば、携帯ラジオ、携帯ワンセグテレビのどちらかがあると心強いです。ラジオは使い方がわからない人も増えてきていると思うので、購入したら何度か使って試運転しておきましょう。
年に一度でいいから、「今日、地震がおきたら」と想像してみる
――大きな災害を経験していない世代や、震災の記憶が薄れつつある読者に向けて、いま一番伝えたいメッセージをお願いします。
アベナオミさん:「今日、地震がおきたら」と年に一度、3月11日だけでもいいのでイメージしてみてください。
「もしも今日、大地震があったら子どものお迎え行けるかな?」「家はどのくらい散らかるだろう?」「うちって防災グッズ用意していたっけ?」と少し考える時間を家族で共有して、「じゃあ、非常用トイレってどこで買う?」程度でOKです。1つだけでもいいので何か防災対策につながる行動のスイッチになれたらうれしいです。
みんなが備えれば、間接的な人命救助になるとアベは信じています。みんなで一緒に今後起きるかもしれない災害に備えていきましょう!
* * *
「防災対策は完璧にしておかなければ」と思うと、つい足がすくんでしまうかもしれません。しかし、アベさんのお話にあったように、「トイレは行けるときに行っておく」「オムツの封を開けたら次を買う」といった日常の延長線上にある小さな工夫こそが、いざという時の私たちを救う力になります。
もし今日、地震がおきたら。
その想像を、不安で終わらせるのではなく、大切な家族を守るための「行動」に変えてみませんか。非常用トイレを一箱買う、家族で集合場所を確認し合う。そんな小さな一歩が、あなたと大切な人の未来を守る確かな光になるはずです。
取材・文=山上由利子
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