40代夫の突然死『ある日突然オタクの夫が亡くなったら?』夫の逝去後に待ち受けていること

#くらし   

昨日まで元気だった夫の突然死…。考えたこともないかもしれませんが、実は誰の身にも「万一の事態」は起こりうることです。ある朝、隣の部屋で夫が静かに死んでいたという体験を描いた『ある日突然オタクの夫が亡くなったら?』が話題を集めています。作者のこさささこさんと、シニア生活文化研究所所長の小谷みどりさんに実体験をリアルに語っていただきました。

『ある日突然オタクの夫が亡くなったら?』の作者・こさささこさんと、シニア生活文化研究所所長・小谷みどりさんに話をお聞きしました



人が突然亡くなるのは、たいへんなこと


昨日まで元気だったのに…


マンガやアニメなどコンテンツ文化の研究者として大学で教べんをとり、家庭では2人の子どものよきお父さんだった、こささんの夫。その夫がある日突然亡くなるという衝撃を受けたとき、こささんが活用したのはツイッターでした。

「理由は子どもを守るためです。うちは夫がよく保育園の送り迎えをしていたので、突然来なくなると驚いて周囲もさまざまな憶測をしてしまう。事実がツイッターにまとまっていれば、子どもが聞かれることもないかなと思ったんです」

ただでさえたいへんな葬儀や各種手続きに加え、幼い子どもたちのケアと多忙を極めた日々。亡くなって3カ月は、思い出すのも苦しい時間でした。

「悲しいけれど、立ち止まっている暇がない。家族や周りの方に支えられて何とかここまできました。夫はおしゃべり好きな明るい人でしたが、もっといろんな話をしておけばよかったと思っています。お金やお墓のこともののことなど大事なことは何も話してなかった。彼が望むのはこれだろうかと、今も手探りしながら進んでいるところです」

死の直後の事情聴取


【警察にゴミ箱の中まで調べられてビックリ:こささん】

家の中を隅々まで捜索して「何を食べたか」「何時に寝たか」など聞くんです。何が起きたか分からず動揺していたんですが、だんだん自分が疑われていることが分かって。悲しいより何より驚きでいっぱいでした。

【死因不明で解剖に回されて… :小谷さん】

刑事2人が家に来て夫の遺体を警察署へ運んだのですが、検視でも死因が分からず解剖に回されることに。数カ月後に出た解剖結果は死因不詳。その文字を見て「私のせいではなかった」と、なぜかホッとしました。

困ったこと


【写真を撮る習慣がなく、遺影が見つからなかった:こささん】

夫の写真がほとんどなくて、困って知人に募集をかけたんです。どうにか遺影が用意できたものの、[ふさわしい写真が見つかるまでの道のりは予想外に険しかったですね。

【夫の交友関係が全然分からなかった:小谷さん】

親族以外、誰に夫の死を知らせるか迷いました。夫の携帯電話の連絡先を開いても、友人か仕事関係者なのか判断できず、自分が夫の交友関係をほとんど知らないことにがく然としました。

遺品整理


【ものが多すぎて途方に暮れました:こささん】

夫はいわゆるオタク。職場にも家にも普通じゃない量のものがあり、遺品整理はとてつもなくしんどかった。たぶん本人は時間がなくてできなかったと思うけど、生きてるうちにリストを作ってもらえばよかった。寄贈するにもリストが必要で、それがまたたいへんな作業なんです。

【思い出は心の中にあるので何も残してません:小谷さん】

結局、私物は全部夫の姉に送りました。大量のネクタイは親族に。一つ一つ見ていると、思い出にふけってしまって片づけられないし、使ってくれる人がいたらそれでいいかなと思います。

【画像を見る】こささんと小谷さんによるお葬式の話。どんな想いで葬儀を行なったのか


寂しいとき


【3分くらい悲しんで、3分で立ち直るんです:こささん】

おもしろい人だったので、ふっとおしゃべりが聞けないことに寂しさを感じたりします。3分くらい「うっ、寂しい」と思うけど、3分くらいで立ち直る。今はそんな段階です。

【朝ごはんのとき、ふと独り身を感じますね:小谷さん】

彼は出張が多くて多忙だったので、一緒に食卓を囲むのは朝食くらい。それが独りになってしまったとき、寂しいというか、いないんだな、という気持ちになりましたね。

こささんの体験談。「未亡人」への圧力を感じたことも


周囲との関係


【3カ月で人間関係が変わりますね:こささん】

3カ月ほど過ぎて冷静になると、人の本音が見えてきますね。夫と共通の知り合いもいましたが、交友関係はそれぞれ別のもの。私は私で、一からつくり直さなければいけないと分かりました。

【「未亡人」への偏見や圧力を知りました:小谷さん】

配偶者が死んで寂しいでしょ、楽しそうにしないほうがいいよ、みたいな雰囲気があって。夫が亡くなってから「私、悪いことした?」っていうくらい、あれこれいわれましたね。悲しんでいたほうが、みんな安心するんですよ。

小谷さんの気づき。子どものために伝えることや、考えることも増えたとのこと


日々の暮らし


【子どものため、万一に備えるようになりました:こささん】

私に何かあっても子どもが困らないように、大事な書類やカード、通帳、印鑑、お薬手帳などを分かりやすくまとめました。信用できる人にパソコンや携帯電話のパスワードを伝えたり、携帯電話の緊急通報機能を娘に教えたり。携帯電話にもあらゆるパスワードを登録し、万一に備えています。

【悲しいけど、人生楽しむぞって考えてます:小谷さん】

悲しい、つらいといい続けても自分はきょうもあしたも生きなくてはいけない。それなら前向きに、悲しいけど夫の分まで2倍楽しく生きようと思いますね、私は。人はいつ死ぬか分からないから、会いたい人がいれば後回しにしない。死から何を学ぶかということです。

葬儀や各種手続きがたいへん、と考えている人は多いでしょうが、それとともに怒涛のように押し寄せてくる事柄はたくさんあります。それらとどう向き合ったか、率直に語ってくれた2人の体験から、備えと心積もりを学んでおきましょう。



編集協力=佐藤由香

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教えてくれた人:こさささこさん
1977年生まれ。イラストレーター。結婚を機に山形県に移住し、2人の子どもの育児をしているさなか、2018年3月に夫が自宅で突然死。そのあとの状況を描いたマンガがネットで話題を呼び、書籍化に。『ある日突然オタクの夫が亡くなったら?』(小社刊)
▶Twitter:@kosasasako

教えてくれた人:小谷みどりさん
シニア生活文化研究所所長。第一生命経済研究所勤務を経て現職。死生学、生活設計論などを専門とし、自治体や大学などで講演。7年前に夫を突然死で亡くした経験から「没イチ会」を主宰。著書に『没イチ』(新潮社)など。


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