「○○すればうつ病治るよ」そんなわけない! マンガでわかるうつ病のリアル(19)

#くらし   


うつ病患者に民間療法をすすめることの危険性を知ろう!


【画像】マンガでわかるうつ病のリアル


何度でも言う。「○○すればうつ病治るよ」…んなワケねぇだろ!

「○○すればうつ病治るよ!」…などと民間療法をすすめられることがあります。それも、主治医やカウンセラーからではなく、家族や友人知人やSNSのフォロワーさんなどの“医学の素人”から。

この“○○すれば”には色んなパターンがあります。筆者が実際に言われたモノだけでも「体を鍛えれば…」「悩むヒマがないくらい働けば…」「精神科の薬をやめれば…」「ナントカ先生の自費診療を受ければ…」など、本当にさまざまでした。

Twitterで「薬を何年飲んでも治らなかった私が△△メソッドを試したら30分でうつ改善を実感!本気でうつ治したい人はこちらから(今だけ無料)↓↓↓」みたいなプロフィールのアカウントからフォローされたときは笑ってスルーできましたが(もちろん悪質なので許せませんが)、身近な人から面と向かって謎の治療法をすすめられたときは本当に困りました。

よかれと思って、善意で治療法を提案してくるからこそ問題なんだ。

ここまでお読みいただいた方の中には「その人なりに力になろうとしているのでは?」「え?良さそうなのもあるじゃん」と思った人もいるかもしれません。

確かに、うつ病患者にこのように治療法をすすめてくる人たちは、悪意ではなく善意でやっているのかもしれません。その人なりに考えて、本当に良さそうと思ったものをすすめているのかもしれません。筆者もアレコレ言われたときに「こいつは悪意で言っている」という印象を受けたことは一度もありません。

ですが、だからこそ危険でもあります。全く悪意を感じない身近な人から「これを試してみたら?」とすすめられたとき「私のためを思って言っているわけだし…じゃあ、ちょっとだけ…」と考えるのは人として自然な流れではないでしょうか?

けど、その治療法の医学的根拠は? 安全性は? 主治医の治療方針との親和性は? 患者の体質やうつ病の状態やアレルギーなどとの相性は? 現在服用している薬との飲み合わせは? 悪化する可能性は? 悪化したときの対処法は? 何か起きたときの責任は?…

患者の命を、おまえが左右してしまうかもしれないんだぞ!

ここでちょっと思い出して欲しいのですが、あなたが今まで病気になり病院に行ったときに「何だこれは!? こんなに画期的ですぐに病気が治る治療法があるとは!」などと衝撃を受けた治療法ってありましたでしょうか?

恐らくそんなになかったと思います。

そう、フツーの治療なんて地味ですし、回復魔法みたいに一瞬で回復するわけではなく、ある程度の時間はかかるんです。

うつ病の人だって一瞬で治せるものなら治したいですし、薬なんか飲みたくないし通院もしたくありません。回復している実感も出来ないまま時間が過ぎれば「本当は薬なんか飲まない方がいいのでは?」なんて不信感も湧きますし、「自分は一生このままなんじゃ…」と不安にもなります。

そんな状況で身近な人から「○○すればうつ病治るよ!」と何かをすすめられれば、藁にもすがる思いで試したくなるのも当然でしょう。

ですが、髪の毛の伸びのように1日では実感のしようがない小さな小さな回復をせっかく積み重ねていたのに、それが壊れてしまったら…?

うつ病は残念ながら自死を選ぶ人がとても多い病気です(厚生労働省のサイト参照※)。筆者も何度も考えましたし実行もしました。ということは素人が安易にうつ病の治療に口を出すのは、どんな問題につながるか分からないことを考えれば「患者の命さえ左右するかもしれない」と表現してもけっして大げさではありません。

あなたの善意があなたの家族や友人や恋人を殺す…こんな不幸な結末はあなただって望んでいないはずです。そんなことになってしまわないためにも、安易に治療法をすすめる危険を考えましょう。

著=錦山まる/「マンガでわかるうつ病のリアル」(KADOKAWA)

【著者プロフィール】
錦山まる
2009年にプロ漫画家デビュー。月刊誌で連載を持ち単行本を出すも2013年に重度のうつ病と診断され、5年近く自宅療養の日々を送る。病気が回復するにつれ、同じようにうつ病に苦しむ方を1人でも楽にしたいと著書出版やSNSによる啓蒙活動に取り組む。著書に『「うつ」は甘え?ググれカス。』『きっと元気になれるから』他
Twitter:@nishikiyamamaru
錦山まる公認bot:@marurunzmemo
錦山まる公認YouTube:まるるんずチャンネル

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