東京の人口一極集中にブレーキが!? 住宅価格への影響はどうなる?

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早くから、人口の東京圏への一極集中是正の必要性が叫ばれていました。東京圏への人口流入は東京圏の発展につながるにしても、東京圏以外の地方の活力がそがれ、国土のバランスのとれた発展を阻害、ひいては日本全体の成長の妨げになりかねません。

例えば、国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、南関東(東京圏の1都3県)の人口は2020年の3635万2000人をピークに減少へと転じていますが、それでも2025年は3623万7000人と微減にとどまっています。


その先の予測をみると、東京圏はマイナス1.9%ですが、北海道はマイナス5.8%、東北はマイナス7%。東京圏の人口増加が止まっても、その他の減少率が高くなるとされており、一極集中状態は改善されず、さらに深刻化するとみられているのです。

それが、コロナ禍で大きく予測がはずれそうな事態が発生しています。東京圏への人口流入に歯止めがかかったのです。


総務省統計局の発表によると、2020年7月の東京圏への転入超過数がマイナス1459人になりました。それにしても、なぜ減少に転じたのでしょうか。最大の要因が新型コロナウイルス感染症拡大の影響にある点は間違いありませんが、東京圏の1都3県の動きをみると、都県によって動きが異なることが分かります。

実は、東京圏でも東京都だけに限ると、2020年5月には既に、転入超過数がマイナスに転じていたのです。月間1069人のマイナスですが、それでも他県がプラスだったので、全体として5月はプラスを維持しました。


東京都が5月にマイナスになった背景には、大学進学や就職、転勤などで本来なら転入してくるべき人たちの多くが、新型コロナウイルス感染症の拡大を懸念して一時的に引っ越しを見送ったために減少したとみられています。その一方で、転勤などで東京都から出ていく人はさほど変わらなかった、あるいはむしろ感染の少ないエリアに出ていこうとする動きが強まって増加、結果的にマイナスに至ったとみられます。そのような中で、注目すべきは大阪圏の転入超過数がプラスに転じている点です。コロナ禍の一時的なものだけではなく、2025年の大阪・関西万博やIR(統合型リゾート)計画なども影響しているのではないかとみられます。

関西の潜在的な成長力を評価して、大阪圏へのシフトを強める大手企業もみられるようになってきました。人材派遣大手のパソナグループが兵庫県・淡路島へ本社機能の一部を移転する計画を公表したのも記憶に新しいところです。

また、内閣府が2020年6月に実施した調査では、地方移住への関心について若い世代ほど関心が高くなっています。コロナ禍で在宅勤務が定着した結果、若い人たちを中心に地方への移住の動きが始まっているのも流れに拍車をかけそうです。


こうした地方移住への流れが定着してくれば、いずれはマンションなどの住宅価格に影響が出てくる可能性もあります。在宅勤務の定着で都心への時間や距離をさほど気にしない人たちが増え、都心の狭い物件より多少遠くても広い物件を選ぶようになっていくかもしれません。現状でも、マンションに比べて感染症対策がとりやすい戸建ての人気が高まりつつあるため、今後は、さらなる変化も想定されます。住まい選びにあたっては十分に留意しておきたい点といえるでしょう。

文=山下和之/住宅ジャーナリスト

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