本人の希望で始めたバレーボール。「やめたい」という娘にどう対応すればいい?【小川大介先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

2021年1月15日発売の新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。連載第66回目のお悩みはこちら。

【お悩み】

バレーボールをやめたいという小学3年生の娘に、どう対応していいか迷っています。娘は幼稚園の年長から、週2回の公文と週1回のスイミング、そして週4回バレーボールに通っています。どれも親が勧めたわけではなく、本人が「どうしてもやりたい!最後まで絶対投げ出さないでがんばるから」と言い張ったため始めました。ちなみにバレーボールはお友達から誘われたのがきっかけです。

今までは、低学年だったこともあり、バレーボールといってもボール遊びに少々毛が生えた程度の楽しいレベルでしたが、年が明けて6年生が引退すると、本格的な練習に変わりました。すると数日ほどして、ある朝突然「ママ、もう決めた。バレーボール今日でやめる」と言い出しました。理由を聞くと、「コートに立つと胸がグッと痛くなって苦しくなる。もうコートには立ちたくない」とのこと。落ち着いた口調でそう話す娘を、無理矢理連れていくのもどうかと思い、その日から練習をお休みしています。

先生やお友達、父兄の方など、誰かに何か嫌なことを言われたりされたりしたのか聞いても、「そんなのは何もない」と言います。ただ、4月生まれの娘は、3年生の中では一番背が高く、できそうに見られがちですが、実際は俊敏に動けるタイプではないため、指導の際に動けないことを指摘されることはあるようです。といっても罵倒されるわけではなく、「今のは取れるんじゃない?」、「もっと強引に喰いついていかないとダメだよ」というように、発破をかけられている感じ。実際に練習風景を見ていても、雰囲気そのものはすごくいいと思うのですが、本人としては、「がんばっているのに褒められない」という思いがあるのかもしれません。練習は確かに大変そうではありますが、それでも娘以外の子たちは「続けたい」と言っており、「やめたい」と言っているのは娘だけです。
本人は「練習は確かにキツイけど、それが理由ではない。スイミングをもっと増やしたいから」と言っていますが、実際にはスイミングをそこまでがんばっている様子は見受けられません。ヒマになった時間はYouTubeやゲーム、漫画などでダラダラと過ごしていることがほとんどです。

ちなみに娘は飽きっぽいというか、ものごとに執着する性格ではありません。例えば、「どうしてもこのおもちゃが欲しい!」と思うと、そのものが手に入るまでは何日もお願いしたり、お手伝いをがんばったりするのですが、手に入ってしまうとすぐ興味が薄れてしまいます。大事にするという約束はおろか、その存在自体を忘れてしまったかのように、部屋の隅にポイっと置いて顧みないこともしばしば。何か人と約束したり、「こうする」と決めたからには、最後まで貫くことも大事だと思うので、自分から「最後までがんばる」と言い出したバレーボールも、最後までやらせたい。でも「胸が苦しくなる」とまで言っているものを続けさせるのが正解なのか、判断に悩んでいます。(Qさん・48歳)

【小川先生の回答】


体の大きな子は意外とストレスを抱えやすい

おそらく、「自分のここには自信がある」という自信のモトとなるものがないお子さんのような気がします。自信というのは、一番は周りに褒められること、認められることによってついていくものです。

ところが、体の大きい子というのは、「できて当然」とあまり褒められなかったり、「あなたは大丈夫でしょう」と大事にされなかったりすることがよくあります。また、同学年の子にもお兄ちゃんお姉ちゃん役を求められるなど、意外と背負わされることが多かったりもします。「4月生まれだからできるだろう」「大きいから大丈夫だろう」と、大人のほうが勝手にハードルを上げてしまった結果、周りが思っている以上のストレスを本人は抱えていたような気がします。コートに立つと胸が痛くなるのも、周りからの要求や期待が多過ぎて、「うまくできるだろうか」という不安が強くなり、しんどくなっているのだと思います。

「自分に価値がない」と思っている人は、人も物も大事にしない

「がんばっても褒められない」という思いは、バレーボールに限らず、日常生活にもあったのではないでしょうか?物を大事にしないとか、人との約束を大事にしないというのは、実は「自分は大事にされていない」と感じている証でもあります。「大事にされている」「自分に価値がある」という思いのある人は、「人にも価値がある」と思えるため、大事にするのです。しかし、「自分なんてどうでもいい」と思っている人は、人との関係もどうでもよくなります。物に対しても、本当にそのものに価値を見出して「欲しい!」と言っているのではなく、自分の存在を確認するための何か形や証が欲しいと思っているだけ。そのため、そのものを手に入れるまでは執着しますが、実際に手に入れたら、もうどうでもよくなってしまうのです。

自分に自信がないから、達成感なく過ごせるものにハマる

そういう子は、自分をたいしたことないと思っているため、目的意識を持つことができません。だからYouTubeやゲームなど、時間を忘れてダラダラと何の達成感もなく過ごせるものにハマりやすいのです。YouTubeやゲームを延々とやる子って、実は楽しそうにやってる子は意外と少ないもの。すごく熱中してやって、終わった後に「今日はこんなの見たよ!」と楽しそうに話してくれるような見方であれば、ある意味健康的です。でも、娘さんのようにダラダラとただ時間だけが過ぎ去っていくような見方というのは、自分の身の置き場を求めているだけ。本当にやりたくてやっているわけではありません。

習い事をたくさんやりたがったのも、私には居場所探しをしているように見えます。公文やって、水泳やって、バレーボールやって、正直なところ十分過ぎるほど詰まってますよね。それを全てこなすだけでも、十分がんばっていたと思います。もちろん本人が希望したからなんでしょうが、「本当にやりたいのかな」ってもう一歩感じ取ってあげてもよかったのかもしれませんね。

本人の中で起きている感情に、寄り添い受け止める

バレーも、確かに遊びの時は楽しかったし、居心地は良かったのでしょう。でもレベルが上がるにつれ、周りの期待もどんどん膨らみ、精神的にもしんどくなっていったのだと思います。「やめる」という発言に至るまでは、すごく悩んだと思いますよ。「パパやママはどう思うかな」、「先生にあきれられるかな」、「お友達とはどうなっちゃうかな」とか、そんなことをぐるぐる考えてからようやく言ったからこそ、落ち着いて言えたのでしょう。

お母さんからしたら、「ある朝突然言い出した」ように思えたかもしれませんが、本人の中では「一生懸命がんばってるのに認めてもらえない」とか「自分自身に確固たる自信がもてない」とか、「安心できる居場所が見つからない」とか、いろんな思いを抱えていたのだと思います。そういう本人の中に起きていることに、今までは大人たちが気づききれていなかっただけです。

ですからまずは、本人が見えているものや感じているところに、大人のほうが下りていき、話を聞いてあげてほしいですね。「バレー行かないって決めるまで、結構勇気いったよね」というところまで戻って、「どんなこと考えて言ってくれたんだっけ?」と、そこからやり直してみましょう。また、どういうところを褒めて欲しいか、どんなふうに言って欲しいかなど、率直に本人に聞いてみるのもいいと思います。娘さんはちゃんと話してくれる子だと思うし、「自分を受け止めてもらえてる」と感じ取れたら、YouTubeやゲームに身を置く必要もなくなってくると思いますよ。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。

文=酒詰明子

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『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』

大手進学塾や個別指導塾での経験から、子ども一人ひとりの持ち味を見抜き、強みを生かして短期間で能力を伸ばす独自ノウハウを確立。教育家・小川大介氏が、自分軸を伸ばす子育てのコツを公開した話題の一冊。


■小川先生のTwitter:@Kosodate_Ogawa
■小川先生が主任相談員を務めるサイト:中学受験情報局『かしこい塾の使い方』

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