喧嘩したまま永遠のお別れになるなんて。『旦那が突然死にました。』せせらぎさんインタビュー

#くらし   
喧嘩したまま永遠のお別れになるなんて…

愛する夫の突然の死。心が引き裂かれるような痛み、悲しみ、当たり前の日常を失った絶望…。3歳と1歳の息子たちを抱えて、生き方を模索する日々がはじまります。
レタスクラブWEBの試し読み連載でも大きな反響を呼んだ実話コミック『旦那が突然死にました。』(エムディエヌコーポレーション)。著者のせせらぎさんに夫を亡くした当時の様子や今の心境についてお話を聞きました。

 【画像を見る】「旦那が突然死にました。」著者せせらぎさんインタビュー

突然、人生の底がスコンと抜けた


拗らせてしまった夫婦喧嘩。仲直りするはずの週末はこなかった


――旦那さんが亡くなった時の状況を改めてお聞かせください。

せせらぎ 亡くなる少し前、夫の実家に家族で帰省していたときにあることで喧嘩をしたんです。そして仲直りしないまま、帰宅後に子どもを連れて私の実家に帰りました。10年間一緒にいて初めての長い喧嘩でした。
しばらくして夫から「反省して過ごしています」というラインが送られてきて、「じゃあ週末に話し合おう」と言っていたのですが…。その週末が来る前に、夫は自宅でひとり亡くなってしまいました。
後に死因は『虚血性心筋症』だと判明したのですが、なんの兆候もなく元気に見えていたので、第一発見者である夫の会社の方から連絡を受けてもすぐには信じられませんでした。

 

 

 

 


――作品のいたるところから旦那さんが周りの人々にとても愛されていたことが伝わってきました。旦那さんはどんな人だったのでしょうか。また、せせらぎさんにとってどのような存在だったのでしょうか。

せせらぎ のらりくらりしていて約束も時間も守らない、電車も飛行機も乗り遅れるし、後輩の結婚式は寝過ごしちゃう。そんないい加減なヤツなのに、なぜか「あいつだったら仕方ない」って許されちゃうような人でした(笑)。いつも輪の中心で笑っていて、誰の話もすごく真剣に聞いてくれるような人なので、周囲からとても慕われていたと思います。
私にとっては、夫であり、恋人であり、友人であり、仕事の師匠でもあり…とにかくもう全てでしたね。

――『旦那が突然死にました。』はせせらぎさんのブログを書籍化したものですが、ブログを書いてみようと思ったのはなぜですか?

せせらぎ 友達に夫が亡くなった後の話をしていたときに、「ブログを書いてみたら?」と勧められたのがきっかけです。
今となってはブログをはじめて本当によかったと思っています。私の気持ちを伝える人が突然いなくなっちゃったから、ブログがその代わりになっているんです。日々の出来事も思いも悲しみも、文章にすることで整理できて気持ちが落ち着きます。それに日記と違ってブログは、読んでくれる人、寄り添ってくれる人もいる。ブログがあったからここまで生きてこれたのかもとすら思います。

辛いときは自分の気持ちをごまかさずに正面から受け止める


 

 


――旦那さんが亡くなられて3年以上経った今の心境はいかがですか?

せせらぎ 死別してからずっと、私は私の人生を楽しく幸せに生きていこうと思ってやってきましたが、なにか大変なことがあるたびに夫の死が顔を覗かせて、「夫が死んだから私はこんなに辛い思いをしてるんだ」と、負の感情に襲われていたんです。でもそれって結局自分の人生じゃなくて「夫のいなくなった人生」を生きているんですよね。前に進むためには、これから起こる大変なことも嫌なことも、全部自分の責任にしていかなくちゃいけないと3年経った今は思うようになりました。

――子育てについて、一人親になり大変だと感じるのはどういう時でしょうか? またしんどい時はどうやって対処していますか?

せせらぎ もともと家事育児はワンオペ状態だったので、やっていることはほとんど変わらないんですよ。でもいざという時に相談できる人がいないのはやっぱり辛いなって思います。親身になってサポートしてくれる友人もいるけど、いつでも頼るわけにはいかないし、結局自分の家のことは自分でなんとかするしかない。同じ親という目線でそのがんばりを見ていてくれる人がいないのは切ないですよね。
どうしてもしんどい時は、もう全部放り投げて外食しちゃうし、片付けも掃除も洗濯もお風呂もなーんにもしないで寝ちゃうのが一番です(笑)。

 


――今も落ち込んでしまうときがあると思いますが、そんなときはどうやって過ごされているのでしょうか?

せせらぎ 死別当初の感情の浮き沈みからしたらだいぶフラットになってきたけど、やっぱり沈んでしまうときはあります。
そんなとき、昔は無理やり辛いことを考えないようにしていたんですが、今は「辛い時はどっぷり辛いままでいよう」と思ってるんです。「あ、今辛いの来た!よしめっちゃ泣こう!」って。
辛さの回数を重ねるたびに強くなって、またひとつ幸せに近づいていくのだから、そのための大切な辛さなんだと思ってちゃんと受け止めていきたいです。

永遠に続く日々なんてない。明日死ぬなら今日をどう生きるのか


 


――旦那さんとの死別を経験された今のせせらぎさんが、それを経験する前のせせらぎさんに伝えることがあるとすれば、それはどんなことですか?

せせらぎ 夫のことは大好きだったけど、一緒にいると嫌なところが見えてイライラしたり、すれ違うことがいっぱいありました。でも、時間が限られているとわかっていたら、イライラしてる時間は人生の無駄だったなって思います。もっと好きなところだけ見ておけばよかった。そこだけを大事にすればよかった。もったいないことしたなって。時間がどれだけあるかわからないなら、全部を「好き」で埋めたほうが絶対にいい。
あと、喧嘩したままお別れになってしまったことはやっぱり今も心残りで、伝えられるときに自分の気持ちを伝えておけばよかったと思います。

――旦那さんが亡くなってからせせらぎさんの中で変わったことがあれば教えてください。

せせらぎ 家族ってなんだろうと思うようになりました。ずっと家族第一に生きてきて夫や子どもを通してしか社会と繋がっておらず、友人関係も希薄だったんです。でも、夫が亡くなってから親身になってくれる友人達がしょっちゅう家に来るようになり、大切だと思う人がたくさん増えました。子どもたちも年齢性別関係なく大勢の人に囲まれて育っています。だから今は、「大切な人は全員家族でよくない?」って言っています。

 


――最後にレタスクラブの読者へひとことお願いします。

せせらぎ 人生って1回きり。人はいつか必ず死ぬって誰もが知っているはずなのに、普通に生きている限りどこか遠い世界の話のように思っているんです。私自身がそうでした。でも、明日、隣の人がいなくなること、自分がいなくなることが絶対にないとは言い切れない。当たり前に続くと思っている日々は決して永遠じゃないんです。
だからたった一度の最後の人生を、明日死ぬとしたら今日どう生きるのか、どんな時間を過ごしていきたいのか、考えてみてほしいです。大切な人に大切だよと伝えて、好きなものをいっぱい集めて、かけがえのない人生を笑って愛して豊かに過ごしてほしいなって思います。

取材・文=宇都宮 薫

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