柴門ふみさん「日々のときめきの延長に『母の恋』はある。そういう気持ちが起こったら生きがいにして楽しめばいいと思う」【恋する母たち】

#くらし 
シングルマザーの杏は夫の不倫相手の亭主・斉木と出会い…『恋する母たち』

名門私立校に息子を通わせている3人の女性、杏、まり、優子。いずれも問題や悩みを抱える彼女たちは、互いの心中を少しずつさらけ出し合い、やがてそれぞれの人生が交錯し始め…?
昨年ドラマ化もされて話題を呼んだ『恋する母たち』(ビッグコミックス・小学館サービス)。最終巻となる『恋する母たち(8)』が21年4月に発売されたばかりです。
著者であり「恋愛の教祖」と呼ばれる漫画家・柴門ふみさんに、作品に込めた思いを聞きました。

『恋する母たち』


シングルマザー杏の夫は、息子がまだ幼稚園児だった頃、外に女を作って駆け落ちしてしまいます。そのとき知り合ったのが夫の不倫相手の亭主・斉木巧でした。

こんな素敵なダンナ様がいても

あの人との別れ

突然の…

怒りと悲しみがあふれ出た



実際に与論島を取材して描いた、夫との再会シーン


ーー作中で特に印象に残っているシーンや気に入っているセリフがあれば教えて下さい。

柴門ふみ コミックス3巻の、杏が駆け落ちした夫・慎吾と再会するシーンです。与論島に実際に取材に行き、島の独特の空気を味わってきました。
「駆け落ちした夫が離れ島で記憶喪失になっている」という突拍子ない設定だけに、どれだけ読者をしらけさせずに話に引っ張ってゆけるか、苦心しました。

与論島で

あの人との再会

一瞬誰だかわからなかった

急にあふれた涙。何の涙?


柴門ふみ 同じく3巻、優子が杏に「責任の取れない優しさを振りまく男が一番の悪なの」というセリフも気に入っています。

根っこの部分は変わらない

今ここで思い切り吐いたら?

何も知らないでしょ、あたしのこと!

どんなに傷つけても平気なの?


母の恋は人生を楽しくする「ときめきの延長線」


ーー昨今風当たりの強い「不倫」ですが、柴門さんは不倫についてどのような考えをお持ちでしょうか?

柴門ふみ 夫婦のことは夫婦にしかわからないので、自分の夫が不貞したら私も怒りますが、隣の家のご主人が不倫をしても、その家に乗り込んで怒ったりはしませんね。
今はネット社会なので不倫たたきをする人が多いと感じます。でもそれはお隣の家に土足で乗り込んで怒鳴っている状態と同じだと思います。

ーー母親になった女性が恋をするのは悪いことでしょうか? また、ふいにそういう気持ちが湧き起こってきた時、どうしたらいいと思いますか?

柴門ふみ たとえば、お子さんのいらっしゃる女性がお気に入りのミュージシャンや俳優にドキドキしたりときめいたら、それもすべて「母の恋」だと思います。それを「悪」だと思いますか?
子供の担任が若い独身イケメンだったらちょっと嬉しい。そんな感情の延長線に「母」の恋はあります。ふいにそういう気持ちが起こったら、それを毎日の生きがいにすればいい。
その状況を楽しめばいいのです。
現実はほとんど、そのイケメン担任が教え子の母親と恋に落ちたりしません。それで、目が覚めます。
重症化リスクは5%以下くらいだと思いますので、ほとんどの「母」は悩む必要はありません。もし本当に恋に落ちてしまったら、これは一時の高い熱だからじっとして熱が冷めるのを待つのが良策だと思います。

恋がなきゃ生きていく意味がないの

既婚だろうが関係ない


運命の恋だと思っても、十中八九「気の迷い」


ーー女性週刊誌での連載は初めてですが、この漫画を描いて読者からはどんな反応がありましたか?

柴門ふみ 連載当初は「不倫を奨励するのか」といった抗議のお便りもあったみたいですが、連載が進むと、困難に立ち向かう3人の女性の生きざまを応援してくれる読者が増えたと、編集部から聞きました。

ーーレタスクラブの読者は『東京ラブストーリー』をはじめ柴門さんのマンガとともに青春時代を送った人も多いと思います。『東京ラブストーリー』の頃と今とでは柴門さんが描きたいものにどのような変化がありましたか?

柴門ふみ 『東京ラブストーリー』連載当時は、女性は恋愛していい男と結婚するのが人生一大行事という風潮でしたが、今は女性の選択肢が増え、恋愛や結婚・出産も個人のライフスタイルに合わせて優先順位が違ってきていると思います。
いつも、私の身近で起こる出来事や、私の身近の魅力的な人たちをモデルにしているので、おのずと時代に沿った内容に変化しているのだと思います。

家庭は絶対壊したくなかったの

ママのさびしさの理由がわかった

そんな生き方ママらしくない


ーー最後に、夫以外の男性への恋心に戸惑い悩む女性に、アドバイスやメッセージがあればお願いします。

柴門ふみ ふと芽生えた恋心を楽しむのは人間の業(ごう・本能)だと思います。が、恋心はいずれ冷めるのもまた事実。運命の恋だと思っても「すべてを失っていいの?」と一旦立ち止まって自問自答してみることが大切だと思います。
恋心に舞い上がって大切なことから目を背けていては、いつしっぺ返しがくるやもしれません。
その一方で、確信犯的に本能に因ってのみ生き、人生を燃えつくしたいのなら、それもアリかもしれませんね。
しかし中途半端に悩んでいるレベルなら……悪いことは言わないので止めておくのが賢明だと思います。

恋心は人生を豊かにしてくれるけど、そこから一歩先へ踏み出してしまえば大きな代償を伴うことも決して忘れてはいけない。そんなことを改めて思い出させてくれた今回のインタビュー。
秋からは、人生のどん底から立ち直ってゆく家族の話を新連載する予定だそうです。これからも柴門ふみさんの作品からますます目が離せません。

取材・文=宇都宮 薫

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